第十五話 午後までぶらぶらお買い物
朝。リノは宿泊している《こもれび亭》の小さな部屋で目を覚ました。
昨夜、体を拭いて早く寝たおかげで、疲れもずいぶん取れている。
装備を整え、髪を軽くまとめ直してから、階段を降りて一階の食堂へ向かった。
食堂には、すでにパンが焼けた匂いと、スープの香りが少し漂っている。
この世界の料理は全体的に味が薄かったり、香りが弱かったりと"微妙"なのが特徴だが、空腹のリノにはそれでもありがたい。
席に座ると、宿の女性スタッフが朝食を運んでくれた。
・黒パン
・野菜スープ
・ベーコンの薄切り
スプーンを口に運ぶと、やはり味はぼんやりしている。
(やっぱりこの世界の料理って、なんか物足りない……)
料理は微妙だったが、腹は満たせた。
その足で受付に向かい、今日も泊まりたいことを伝える。
「もう一泊お願いします」
「はい。銀貨2枚になります」
リノは銀貨2枚を渡し、宿を出る。
朝食後は、時間もあるので街へ散歩に出る。
アイゼルトの街は、石畳が真っ直ぐ続き、木造の屋台が並ぶどこか"海外の中世"のような雰囲気だ。
他種族はやはり少なく、見かけるのはほとんど人族ばかり。
街角の活気や行き交う馬車に、リノは自然と微笑んだ。
(……せっかくだし、これからの冒険に使うものを揃えておこう)
そう思ったリノは、通りの奥に見える雑貨屋らしき店に立ち寄る。
店内には、野営用品やロープ、鍋、布類など、冒険者向けの基本的な品がぎっしりと並んでいる。
「いらっしゃい。旅の準備かい?」
「はい。必要なものを揃えたくて」
丁寧に答えながら、必要なものを一つずつ確認していく。
〇野営セット(初心者向け)……銀貨18枚
内容:・小型テント(一人用・耐水) ・ロープ10m
・寝袋(中厚・春〜秋向け) ・折り畳みシャベル
・携帯ランタン(魔石式) ・防獣鈴(低ランクの魔物除け)
--森や野営の多い世界では必需品。セット品のため、単品購入よりかなり安いらしい。
〇調理器具セット……銀貨12枚
内容:・小型鉄鍋 ・片手フライパン ・木製まな板
・小型包丁+鞘 ・小瓶(空)×3 ・木製食器1セット
・小型ポット ・布巾×2
--こちらもセット品のため、かなり安いそうだ。
リノは自分で料理を作りたいと思っているため、調理器具は必須だった。
〇生活必需品
内容:・布タオル(中)……銅貨20枚 ・巾着袋(布)……銅貨15枚 ・薄手の毛布……銀貨1枚
・木製の水汲み桶……銅貨25枚
--旅での水浴びには必要だ。
〇応急処置セット
内容:・簡易包帯(5m巻)……銅貨25枚 ・消毒薬(ハーブ浸剤)×5……銀貨2枚
--怪我をしてもすぐに治療できる簡易セット。特に森に入ることが増える冒険者には重要だ。
〇筆記用具セット
内容:・白紙の本(100P)……金貨1枚 ・インク……銀貨3枚 ・つけペン……銀貨1枚
リノが買い物を済ませ店主の前でカバンに手を入れたまま、しばし固まる。
「……あれ?どうやって計算するんだっけ……」
店主はクスリと笑い、机の下から木板を取りだした。
「坊主、金勘定ができねぇと損するぞ。教えてやる」
リノはこくりと頷き、木板を見る。
「まず、鉄貨10枚で銅貨1枚。そして銅貨10枚で銀貨1枚。その次は銀貨10枚で金貨1枚だ。ここまでいいか?」
「はい!」
「でだ、金貨10枚で大金貨1枚。大金貨10枚で白金貨1枚だ。これは商人や貴族が使ったりする」
「なるほど……」
つまり、鉄貨が10円、銅貨が100円、銀貨が1000円、金貨が1万円、大金貨が10万円で、白金貨が100万円ってことか。
「じゃあ、今日の買い物を足すぞ」
店主は指で机を軽く叩きながら数えていく。
「全部合わせて……金貨5枚、銀貨5枚、銅貨5枚だ。払えるか?」
「はい。これで大丈夫ですか?」
「あいよ。ちょうどだな」
「計算、難しいね……!」
店主は笑って、リノの頭をパシンとはたく。
「冒険者になるんだろ?足元見られないようにしな!」
「がんばる!」
せっせと買い物を済ませ、カバンの中のアイテムボックスにしまいながら店を後にした。
買い物を終えた頃には、太陽はもう頭上に近かった。
軽く汗を拭いながら、カバンの中から森蜜果を取り出した。冒険者ギルドに向かいながら食事をする。
(午後一時から新人訓練……遅れないように行かないと)
いよいよ冒険者ギルドでの新人訓練だ。
ただいまのリノの所持金……銀貨1枚、銅貨48枚、鉄貨幣157枚




