第十一話 街への到着~冒険者ギルドへ向かうまで
昼の日差しに照らされて、灰色の石壁と巨大な門がゆっくり姿を現した。
荷台に揺られ、リノは木箱の横で目を細める。
「……あれが街の門!大きいなぁ」
オルソンの荷馬車は、門へ向かう旅人と商隊の列に加わり、ゆっくり進む。
三日間森をさまよっていたリノには、これほど"人の生活をしている気配"が濃い場所は久しぶりで、胸がふわりと高鳴った。
オルソンが前を向いたまま声をかける。
「お、見えてきたな。初めて見るだろう?アイゼルトの門はこの国境沿いじゃ一番デカいんだ」
「すごい……本当にお城みたいです」
荷台から見える街の外観に、思わず息をのむ。
門の真下まで来ると、門兵が槍を構えて荷馬車を止めた。
「止まれ。身分証の提示を」
オルソンは慣れた手つきでギルドカードを見せる。
そして後ろを振り向き、荷台にいるリノへ問いかけた。
「身分証は持ってるか?」
「いえ……持ってないんです」
「わかった……にぃちゃん!この子はロワナ村からの同行者でね。カードは今からギルドで作らせる予定だ」
門兵の視線がリノに刺さる。男装しているとはいえ、子供が一人旅という点は不自然だ。
「おい少年、身分証はないんだな?」
「はい。街で作ります」
リノはしっかり礼儀正しく返す。門兵は少し怪しみながらも、
「通行には銀貨1枚だ。払えるか?」
荷台から降りて、リノはカバンを探る。
銀貨を手渡すと、門兵は「よし」と頷いた。
「子供の一人旅は危険だ。気をつけて行け」
その声色にはまだ警戒が残っていたが、丁寧に頭を下げたリノを見て、わずかに表情が和らいだ。
「……礼儀はしっかりしているな。通れ」
リノを乗せて荷馬車が動き出す。
石造りの巨大な門をくぐった瞬間--光が広がり、世界が一気に開けた。
「……わぁ……!」
荷台の中から見える街並みは、アニメや外国の昔の街のようだった。
石畳が整然と敷き詰められたメイン通り。
カラフルな屋根瓦の家々。
窓辺に花を飾った建物が連なり、パン屋の店先から焼きたての香りが風に乗る。
鍛冶屋からは金属を鍛えるカンカンという音が響いてくる。
(本当に……異世界の街だ……!!)
目の奥が熱くなるほどの感動が胸を満たす。
しかし、ふと周囲に目を凝らすと、あることに気づいた。
--この街、他種族がほとんどいない。
見渡しても、人族ばかりだ。
アニメで見た耳の長いエルフや、背の低いドワーフは見当たらず、獣人もわずかに一人。二人。
人族中心の街のようだ。
オルソンの荷馬車は街の広場近くで止まり、リノに手を差し伸べた。
「ほら、降りな。ここで別れだ」
リノが荷台から降りると、オルソンは地図を広げながら言う。
「さて、これから必要なのはギルドの場所だろ?」
「はい……教えていただけますか?」
「もちろんよ。例えば商人なら二つのギルドを使うことになる」
オルソンは指を二本立てる。
「ひとつは商人ギルドだ。流通や商売のための手続きができる。んで、もうひとつが冒険者ギルド。商人の場合は、素材の買い付けや護衛の依頼を出したりするな」
「冒険者ギルド……!!」
リノの胸が高鳴る。
「お前さんの場合は、冒険者ギルドが先だろう。素材の交換もできるし、カードも作れる。場所は中央通りをまっすぐ行けばデカい看板が見えてくる」
丁寧に地図まで書いてくれる。
最後にオルソンは、リノに柔らかい笑顔を向ける。
「困ったらまた声をかけな。アイゼルトは初めての街だろ?」
「……はい。いろいろ、本当にありがとうございました」
深く頭を下げると、オルソンは手を振って荷馬車を走らせた。
リノは胸の前で拳をぎゅっと握る。
(よし……まずは冒険者ギルドへ行こう)
大きな街の喧騒の中へ、リノは一歩踏み出した。




