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第一話 【鬼と妖と人間と】

清は肩で息をしながら、目の前の人ではない青年を見上げる。


青年は、燃えるような赤髪を無造作に揺らしていた。

真紅の瞳は猫のように細く、黒曜石のような二本の角が夕闇に冴えた光を宿す。

背が高い。見上げなければその顔立ちが見えないほどだ。


「お、お前………なんなんだ…………」


清は息を整えながら言葉を探す。興奮のせいなのか、声がかすれていた。


「俺様がいなかったら、今ごろあの蜘蛛野郎に食われてたぜ?」


青年は笑う。その笑みは豪快で、妙に人懐っこい。

鋭い牙が白く覗くが、不思議と怖くはなかった。


清は無意識に姿勢を正した。

短く刈った黒髪に雨の雫が落ち、切れ長の黒い瞳が目の前の青年をまっすぐ捉える。


「助けてくれたのは……まあ、礼は言う。俺は視鉈 清(みえだきよし)。……お前は何者なんだ?」


「俺様?俺様は鬼だ、見てくれでわからねぇかい?」


「お、鬼……本当にいるのか………」


自身を鬼といった青年は胸を張る。


「俺様は鬼頭之 虎太郎(きづのこたろう)幽世(かくりよ)で一番粋で男前な鬼って覚えておきな!」


「へんなやつだな……自分でそれを言うのか。」


清は思わず呆れた声を漏らした。

清自身もよく周りからキリッとした顔立ちだとよく言われるが、自覚はない。

だからこそ、この堂々とした態度に軽く気圧される。


虎太郎は、清の反応にますます笑みを深める。


「でだ、清って言ったか? お前、人間にしては妙に落ち着いてんな。普通なら泣くか、腰抜かすか、失神だぞ?」


「俺はそんなにヤワじゃない。」


清は眉をひそめる。


「……まあ、昔から“変なの”が見えたりはしてたが、襲われたのは初めてだ。」


「それはそうだろ。ここは“彼岸(ひがん)”だからな」


虎太郎は周囲に漂う薄紫の靄を指さす。


現し世(うつしよ)幽世(かくりよ)の境目にある、人と妖が交わり合う場所だ。賑やかで面白い場所だが、危険な場所でもある。」


彼岸(ひがん)…………現し世(うつしよ)……?なんだそれは?」


「なんでぇ、お前そんな事も知らんのか?」


「生憎俺は見える人間だがそういうのに積極的絡みにいくようなやつではなくてな、というかお前みたいな鬼とやらに詳しいのは寺か神社の関係者ぐらいだろな。」


「そういうもんか、まぁ軽くだが教えてやるよ。」


そう言い得意げな顔で語り出す。


「まず現し世(うつしよ)とは、お前ら生きた人間つまり生者(せいじゃ)が暮らす世界のことで次に幽世(かくりよ)は俺様みたいな(あやかし)や死者が住む世界の事だな。」


「なる程……興味深いな」


「で、最後にここ彼岸(ひがん)についてだがここはなんて言えばいいかな、簡単に言えばあっちの岸とこっちの岸を繋ぐ橋とでも思っておけばいい。現し世や幽世の文化やモノがごちゃ混ぜになって愉快な場所だな!」


ガハハッと虎太郎は笑った。


「愉快……か……」

 

清は小さくため息をつく。

剣道部主将として整えられた精神は、こういう状況でも崩れなかったが、理解を追いつかせるには時間が必要だ。


そんな風に悶々と考える清の顔を虎太郎は覗き込むように、ぐっと身をかがめる。

先程まで遠くにあった真紅の瞳が間近に迫り、清は反射的に身を引いた。


「うわっ、な、なんだよ」


「いや、俺様程ではないがいい面してると思ってな。」

 

虎太郎はにかっと笑う。


「これも何かの縁だろう、それに俺様の感が告げているこれから面白い事になるぞと、という訳で清お前これからは俺様の友達になれ!」 


「はぁ!? なんでそうなるんだよ……!」


驚く清の声に、虎太郎は楽しそうに肩を揺らして笑った。


縁とは奇妙なものだと誰が言ったか。

世にもをかしな奇縁はこうして始まったのだ。



最後までご拝読頂きありがとうございます。

初めてのオリジナル作品ですのでちょと辿々しいですが温かい目で見てください。

今後ともよろしくお願い致します。

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