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プロローグ 【出会いは突然に】

陰陽はそれすなわち理である。

 女は陰、男は陽、日は陽、月は陰、

 万物の生成と消滅、全ては対となっている。

 だがこの陰陽に属さぬモノがこの世にはいる。

 陰に属しながら陽の気を運んだり、紛れたり、    陽に属しながら陰の気を吐き出したり、

 紛れたり、それら全てはみなこう呼ばれる。



        『あやかし』



 これはそんな『あやかし』の世界に生まれた青年と人間の世界に生まれた青年が繰り広げる奇っ怪譚。



    



       『をかしやあやかし』



     まだ見ぬ不思議な世界を貴女に


夕暮れの町に、わずかに霧雨が漂っていた。


蛍雪学園(けいせつがくえん)の門をくぐった視鉈 清(みえだ きよし)は、いつもの帰り道を辿ろうとして足を止める。

 

先の通りで人だかりができ、騒がしい声が混ざっていた。

事故らしい──仕方なく、彼は遠回りの細道へと歩みを向ける。


その道は、何度か通ったことがあるはずだった。

けれど今日は妙にひんやりとして、背筋に薄い膜のような気配が張り付く。

清は眉を寄せた。子供の頃から時折“見えてしまった”あの感覚に似ている。


やがて、木々の隙間に古びた鳥居が現れた。


「……こんな所に神社なんてあったか?」


気まぐれに境内へ足を踏み入れた、その瞬間だった。


景色が、音もなく切り替わったように感じた。

境内の先にあったはずの石段は消え、代わりに薄紫の靄が漂う見知らぬ世界が広がっている。


「……何処だ、ここ…………」


清は余りにも非現実的な現象に苦く笑いながら、人影を探して歩き出す。


暫く歩いていると背後からカサリ──と不気味な音が迫った。


振り返れば、そこには巨大な蜘蛛のような怪物がいた。

鋭い脚が地面を叩くたび、ぬるり、と黒い影が広がる。


「は、はあ!? ちょっと待て、武器なんか──!」


 逃げ出すしかない。

狭い路地のような空間を必死に駆け抜けた瞬間、怪物の振り上げた脚が迫った。


もう駄目と悟り目を瞑る、するとガジャンッと大きな音が響いた。


目を開けると怪物は、斜めに裂かれて地に伏していた。

 

地に伏した怪物の後ろに立っていたのは──存在感のある大きな金棒を持った真紅の瞳に赤髪の、清と同年代ほどの青年。


「危ねぇなあ、人間。ここは現し世じゃないんだぜ?」


青年はにいっと笑い、その口元から鋭い牙が覗いた。


「ここは“彼岸(ひがん)”だぞ?そんなんじゃあすぐに喰われちまう。」


清は息を整えながら、呆然と青年の頭に生えた角を見つめていた。


 ──この出会いが、二人の奇妙な“親友”としての日々を開くとは、まだ知らないままに。



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