メロンパンが食べたい
(メロンパンを食べに行きたい。)
ふと頭の中によぎった。その言葉が脳内で反芻される。街中で行われているイベントで流れていた曲が何度も頭の中で繰り返されるような。
(そんな感じ。)
完全にメロンパンの口になってしまった。眠い目をこすってベットの上にあるスマートフォンを見てみると、すでに13時を告げている。
(噓だ。)
と思って立てかけてある時計を見ると、それが本当だよと言わんばかりに13時を示す短針、12のマークを指す長針、私の心の臓を刺す秒針の音。私は何をこれまで刺してきただろう。家族、友人、いろんなものからの軋轢からようやく解放された県外大学1年生。スマホの通知は空っぽ。何て綺麗で寂しいのか。時々自分が分からなくなる。ほらまた分からなくなった。待って。お願い。私までいなくならないで。
「そうだ。」
メロンパン食べよう。
言霊というものは確かに存在しているらしい。実際私はいま歩いている。外を。ぐちゃぐちゃの息が混ざった駅前。溜息だったり、誰かを待っているときのはずんだ息だったり。いろんな息。それが怖くて学校に行けなくなった高校2年生の冬。狂気じみた担任の目。
「期待されるのは良いことでしょう?」
吐き気がする。壁に金髪の美女のさびれたポスター。
(あなたはなぜこんなに人の目にさらされても平気なの?)
相対的な幸せを感じ心がギュっとして呼吸が速くなる。自分が反れたときはいつもこれだ。
(誰か。)
言いかけたところでイヤホンで耳を塞いでエレベーターへ駆け込んだ。
(私あの時から少しでも変われた?)
ぐじゃぐじゃになった脳内。閉ざした聴覚。そこに救いの手を差し伸べるようにパンの匂いがふわっと香ってきた。甘い匂いというよりも暖かい匂い。誰かが私に語りかけている。幸せだった小学校時代を思い出す。あの頃は何も考えなくても、その日を生きていければ十分だった。今は幸せじゃないの?今は何か考えなきゃいけないの?今は何を考えているの?分からない。結局自分のことは何にも分からない。
そんな毎日の繰り返し。
「お待たせしました。」
その声で我に返る。
「あっ。ありがとうございます。」
急いで外に出る。さっき買ったパンを口に運ぶ。小学生の私に感動をくれたメロンパンの見た目は、人工甘味料や着色料という言葉を連想させ、口に運んだ時に感情とは反比例するように、
「甘い。」
と声が出た。
読んでいただきありがとうございます。初めて短編のようなものを書きました。学生時代のなんとも言えない、この結論の出ない感じを思い出しながら書きました。アドバイス等あればじゃんじゃん下さい。




