機械仕掛けの設計図

鉄と蒸気が息づく大帝国──煙突から噴き上がる黒煙は空を染め、歯車が無数に嚙み合う街並みは煌びやかな真鍮の装飾に彩られている。蒸気機関が轟き渡るこの世界では、技術は権力の象徴であり、選ばれし者たちの独占物であった。

帝国の歴史を変えた蒸気計算機「SO-1」を生み出した父を持つ、若き天才エリック=オリヴァーは、父の傑作である蒸気駆動計算機「SO-1」を超えるべく、決意を胸に抱く。

エリックの瞳は、歯車の隙間から差し込む新たな光――電気の煌めきを見据えていた。彼が創り出したのは、電気の力を巧みに操り、小型で軽量、かつ廉価な電気駆動計算機「E-11」。真鍮製の外装は父の豪奢な技術への敬意を秘めつつも、誰もが手に取れる未来の象徴だった。

この機械は単なる発明品に非ず。帝国の厳重な階級制度に風穴を開け、技術を特権階級の手から解放する革命の火種であった。だが、その光を既得権益の闇が呑み込まんとする。新興の電気技術の台頭を危険視し、密かにその芽を摘もうと暗躍する。

煤煙と油の香る工場で、疲弊した労働者たちの間に微かな希望が灯る。やがて技術の奔流は帝国全土へと広がり、蒸気の帝国は電気の嵐に飲み込まれようとしていた。

これは、蒸気が支配する歯車の世界で、父を超え、黎明の電気を掲げて挑まんとする若き革新者の物語。重厚な機械音が響き渡る蒸気都市の闇と光の狭間で、ひとりの男の意志が新たな時代の扉を叩く──

鋼鉄の心と真鍮の夢を抱いて。