4.5話
1週間ほど前。
そこは、『和の街』にある『華山』の邸宅。
「華山さーん、お邪魔しまーす」
そういって門を開け放ったのは、プレイヤー名『ロキ』。そして呆れたように双子の兄を見るプレイヤー名『ルキ』。
「何用だ」
二人にそう答えたのは、プレイヤー『華山』、ではなくーーー
「いつも思うけど、何の為にこれ置いてんの?」
「本当に邪魔…」
ーーー禍々しいオーラを纏った大きな鎧であった。
2人に貶されたからか、心なしかしょんぼりしているように…見えなくもない。
「それはもちろんかっこいいからだ!」
そう言って屋敷から出てきたのは、今度こそ屋敷の主人である『華山』。
鎧を貶されて少し拗ねている。
「で、何の用だ?」
「ランちゃんがこのゲーム始めてくれたっぽいよ」
「誠か!」
それを聞いた『華山』は、目を輝かせた。
ランちゃん、というのはプレイヤー名『ランダム』の愛称である。基本的に親しい人たちは彼女のことをそう呼んでいる。だって、『ランダム』って長くて言いにくいから。
「こうしてはいられない!闘技大会を開こう!」
闘技大会はいろんな人が企画するが、『華山』によって企画されることが1番多い。
だが、動機はだいたい気分が良いから、イライラしているので八つ当たり相手が欲しかったから、など散々なものである。
「『GUN KING』では、弟子の方が強いからなぁ…」
そう、多くのプレイヤーが知っていることだが、『華山』と『ランダム』は師弟関係にある。
『華山』は『GUNKING』では刀を持って戦うプレイヤーだ。
実のところ、『GUNKING』には、銃以外で戦うプレイヤーはほぼいない。
なぜなら、射程が圧倒的に違うからだ。刀はかなり接近しないと当たらないが、銃は種類によっては1キロ先まで狙撃できるものもある。
そんな中、和風な物が好きな『華山』は、なんと、銃弾を切る。
もちろんそんな芸当は現実ではできないが、ゲームの世界では色々な条件が重なったことによりそれが可能になった。
それを見ていた『ランダム』は『華山』に教えを請う。
最初はどうせ無理だろうと言う気持ちで教えていた。『華山』には他にも教え子がいたが、皆銃弾を切れるようになる前にやめてしまった。
しかし、『華山』が教えたことを『ランダム』はするすると習得していき、わずか数ヶ月でその技術を物にした。
そして、『ランダム』は『華山』とは違い銃も扱うことができるので、ランキング2位の地位にいるのだ。
実は、『ランダム』にはそんな素振りは見せないが、弟子の方がランキング上位であることをかなり気にしている。
だからこそ……
「このゲームこそ、弟子にいいところを見せるのだ!
よし、早速闘技大会の準備をしてくる。
お前達も参加しろよ!」
「……行っちゃった」
「えー、参加したくないんだけど…」
その場には、呆れている『ロキ』と参加するのを渋る『ルキ』が残された。