22話
前にワープした時は森の中だったけど、今回は直接初めの街に来ることができた。
街の中に入ったら、その街にワープできるようになるのかな?
今いる場所は、この前町に来た時に通った門の前。
ここから出たら森がある。
森から出て少し歩くと、草むらからいくつかの視線を感じる。
それだけではなく、ガサガサと音までする。
やっぱり、初心者が通る場所だからモンスターを発見しやすくなってるのかな?
それにしてもこれは露骨すぎるけど。
モンスターか動物かは分からないが、律儀に草むらから出てくるのを待つ必要はないので、鎌をインベントリから取り出して、強襲する。
首…だと思われる場所を一閃。
生き物ーーーウサギは白い光になって消えていった。
『モンスター『ラビットウサギ(レベル3)を倒しました』
『アイテム『ウサギ肉』がドロップしました』
『600ゴールドがドロップしました』
……ラビットウサギ?
それって『ウサギウサギ』って言ってるのと同じでは…?
いや、言及しないでおこう。このゲームの開発者のネーミングセンスは期待しちゃダメなんだったわ。
ていうか、600ゴールドしかドロップしないんだね……ショボい……。
これでどれくらいの食料が買えるかな……?
一回町に戻ってみるか。
歩いて初めの街に戻る。
ワープは使わないよ?MPがもったいないからね。
ん?何か騒がしい。
門を抜けたところで、人々のざわめきが聞こえてきた。
え、めっちゃプレイヤーがいるんだけど。
あの人混みの中を通らなきゃいけないの…?
というか、そもそもあそこで何が起きてるの?
気になるけど、誰かにわざわざ聞くのは……面倒くさいし、いいや。
あ、路地裏を通ればどっかの通りに出るんじゃない?
うん、それが1番いい。
路地裏って意外と暗いんだな…。
1人でひたすら歩く。
人の気配はないけど、後ろからはまだ人の声が聞こえる。
なんかイベントでもやってたのかな?
あとで掲示板でも覗くか。
それにしても、このゲームって意外と作り込まれてるんだなぁ…。
何と言うか、路地裏がリアルなんだよね。
ゴミとかがたくさん捨てられているんだけど、そのゴミはほぼ同じものがない。
しかも、ちゃんと壁のシミとか汚れとかもあるし。
まぁ、『GUN KING』のステージの建物もかなり作り込まれてたし、同じ会社が作ってるから妥当か。
あ、前方が明るくなってきた。
どこの道に出るのかな?
突然、視線を感じた。
!?
どこからの視線!?
分からない。
何と言うか、全方位から見られてる感じがする。
首は動かさずに視線だけ動かして周りを確認するが、誰もいない。
気配は全くしない。
何だこれ、気持ち悪い……!
そして、後ろから嫌な気配が近づいてくるのを感じた。
それは、濃厚な死の気配。
あれに捕まったら、絶対死ぬ…!って目視しなくても感じるくらいには冷たい気配だ。
前方の光に向かって走る。
じっとしていたら追いつかれてしまうから。
体感的に、かなり走った。
どう考えてもおかしい。だって、路地裏がこんなに長いわけがない。
でも、もうすぐゴールだ。光がかなり近い。
急げ急げ!だんだん後ろの何かとの距離が近づいてる!
振り返る暇さえないから後ろから来てるのが何なのか、分かんないんだけどね!
あとちょっとだ!
……というところで、左腕を掴まれる。
「離して!」
『………』
電流が走ったような痛みを感じる。
まぁ、『GUN KING』をかなりプレイして、痛みに慣れた私だから、動きを止めるほどじゃない。
思いっきり腕を引っ張ると、ブチブチッと嫌な音が聞こえた。
気持ち悪いな!
もしかして、人間じゃない?
引きちぎった(?)勢いで、光の中に倒れ込む。
顔を上げると、そこは人通りのある普通の道だった。
に、逃げれた?
後ろを振り向くと……そこにはただの路地裏。
ただ、地面に、紫色の腕のようなものが落ちている。
き、気持ち悪い……!
これ置いて帰って大丈夫なの?
いや、ポイ捨てみたいで嫌だし、何かのアイテムかもしれないから持って帰るか。
紫色の腕からは、謎のオーラが発されていて、直接触るのに躊躇する。
とりあえず突いてーーー?
なんか、私の左腕が変色してるんだけど?
もともと普通の肌色だった腕が、肘あたりまで真っ黒に染まっている。




