11話
「……ふぅ」
周りに他のモンスターがいないか気配を探ってから、私は息を吐いた。
倒せたなぁ…。
とりあえず、一安心。
それにしても、あのモンスターレベル108なの?
それにしては弱すぎる気がする……レベル1の私が挑んで勝てるものなの?
まぁ終わったことだしもういいけど。
それより、考えないといけないことが。
今のEPは残り13。かなりやばいです。
戦闘したことによってさらに速く減ったっぽい。
でもね、この森には全然植物がないんだわ。
じゃあどうするかって言うと……私はインベントリを開いてそこからアイテムを取り出す。
『シャインウルフの肉』
……これを食べる、か?
いやいやいや、これ生だよ?
食べたら死ぬよ?
いや、でもゲームの中だし、ひょっとしたら大丈夫かも……。
とりあえずアイテムの説明を読んでみよう。
『アイテム名:シャインウルフの肉
効果:EP+70、毒(小)
即死率:5%』
あかんやつやん…。
なに、即死率って。食べたら死ぬってことだよね?
あ、そういえばシャインウルフ倒した時に、スキル『致死』を手に入れたような気がする。
もしかして、シャインウルフは『致死』を持っていた?
それならあの弱さも納得。
STRにかなりステータスポイントを振っていたのかもしれないね。
というか、一発攻撃が当たってたら死んでいたのかも……。いや、受け流す時に鎌にはシャインウルフの爪が触れていたんだけど…武器だったから『致死』は効かなかったのかな?
それは置いといて。
これ、食べる?
でも食べないとEPが…。
あ、ちょうど今1減って残り12になった。
EP70回復するのはかなり魅力的。
うん、悩んでいる暇はないですね。
どうせ、餓え死にするか、食べて毒で死ぬか即死するかの3択だ。
それだったらまだ可能性が高い方を選ぼう。
はい、生肉食べます。
生肉を顔に近づける。
量は、多分500グラムくらい?完全に1人で食べる量じゃない。
でもゲーム空間の中ではお腹がいっぱいになることはないからこの量でも食べ切れるだろう。
うっ…食べるって決めたとはいえ、これを食べるのは勇気がいるね…。
でも……生きるためには致し方なし!
思いっきり生肉にかぶりつく。
瞬間、口の中に広がる生臭さと鉄の味。
まっっっっずい!!!
生肉だし当たり前だけど!
しかも、急に体がだるくなった。
あ、これ毒かな…。
ステータスを見ると、『状態:毒(小)』の文字が。
毒状態になるのってこんな感覚なんだ…。
10分ほどかけて生肉を完食。めっちゃ急いで食べたからね…。
というか今思いついたけど、火魔法でもスキルポイントで手に入れてこの肉焼けば良かったな!
まぁ、森に火が燃え移ったら嫌だし、たぶん思いついていたとしてもやらなかっただろうけどな!
はぁ。本当にしんどかった。
あ、なんか『毒耐性(Level1)』って言うのを手に入れたよ。
しんどい思いをした甲斐があった、のか?
HPはだいぶ削られたけどね。
しかし、どうしたもんかなー。
なんと、レベルが上がってもMPが回復しないのだ。
しかも、レベルアップした時に『MP自動回復』っていうスキルを手に入れたのに。
うん、これでは結局火魔法を取ったとしても使えなかったね。スキルポイントが無駄になるところだった。取らなくて良かった。
原因として考えられるのは、MPを常に使っているってことだ。
でも、自動で発動しているスキルは無いっぽいし……。
それか、土地特有の特性とか?
他のゲームでMPが回復しないステージを見たことがある。
もしかしてそれなのか……?
検証したいところだけど、流石に一回農地に戻りたいかなー。
だってもう集中力切れたし。
ステータスが上がったとはいえ、あのオオカミより強いモンスターに遭遇したら絶対に死ぬ。
というか、MP切れでしばらく最初の街にワープできないわ……。
さっさと回復して欲しいところ。
一方その頃。
闘技大会の準備をしていた『華山』だったが、ふと思い出したように、後ろでだらけている双子に問いかけた。
「ところで、ランは今どこにいるのだ?
というか、職業は何にしたのだ?」
「……」
「……」
沈黙する双子。
そして、呆れるような目で『華山』を見た。
「な、なんだ?」
「いや、「なんだ?」じゃないでしょ…」
「ランちゃん、まだこのゲームを始めてない……いや、始めたとして今日からだと思いますよ」
「………え?」
「いつもランちゃんが言ってるでしょ?
『人の話はちゃんと聞いて』って」
「この人も学ばないなぁ……」
双子に散々なことを言われたものの、正論で言い返せない『華山』であった。




