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1話




 新しいゲームを始めようかな。


 そう思ったのは先週の金曜日のこと。

 私はその日、カーテンの隙間から登下校中の高校生たちを眺めていた。


 学校に行かなくなってから1年…いやもうすぐ2年か。

 私は現在高校3年生。普通の高校生なら受験シーズンである。

 え?受験勉強しなくていいのかって?

 …もし受験して、受かったとしても、大学の授業に出れる気がしないし。私にも色々事情があるのだ。事情というか…巻き込まれたトラブル?が色々あるのだよ。


 いや、さすがに中卒はやばいかなって思ってるんだよ?

 でもなぁ…どうせ受験しても授業出ないなら、勉強頑張っても意味ないじゃん?あと、お金もったいない。

 あ、ちなみに親は何も言わない。うちの親、お金持ちだから…。



 そんな私の毎日はとても暇なものである。

 だって、特にやることないし。

 午前中は一応勉強して、午後は夜までゲーム。

 最近は基本的にFPSをやってます。

 あ、FPSっていうのは、一人称視点で銃を持って戦う感じのゲームジャンルのことね。

 で、私は3年前に発売された、現在人気のゲームランキングぶっちぎり一位の『GUN KING』をやり込んでいる。

 

 さて、『GUN KING』とは。

 20XX年に発売された、フルダイブ型のバトルロイヤルシューティングゲームだ。

 フルダイブ型のゲーム自体は元々幾つかあったんだけど、シューティングゲームでは初。

 実際に銃を撃つというゲームだから、犯罪を誘発する可能性が高かったって、どの企業も開発を躊躇ってたんだよね。

 このゲームも発表当時、かなり批判が殺到したと聞いている。

 で、発売停止まで追い詰められたらしいんだけど、そこでゲーム会社は考えた。

 銃で撃たれたときに痛みを与えるようにしたら、撃たれる側の痛みがわかって犯罪が減るのではないか、と。

 …いや、考え自体は悪くないとおもーーー悪くないことはないか。それでも犯罪をする人はするし。

 でもさ、実際に撃たれるよりは痛くないとはいえ、かすり傷を負ったときの痛みくらいはあるんだよね。

 そんなゲームをやる人はなかなかいないと思う。

 結局、このゲームに集まったのは狂人ばっかり、しかも少数だったんだけど。

 それはまずいと思ったゲーム会社は、新たな試みを始めた。

 それが大会である。


 この大会に参加するために、比較的まともな人がゲームを始めた。その数、以前と比べて約十倍。元々1000人くらいしかやってなかったからね。

 で、このゲームは悪い意味で有名だったから、大会の配信を見ようとした人も多く、生配信には確か二百万人くらい集まってたかな…?ちなみに私も生配信を見た口だ。

 大会?凄かったよ。

 プレイヤーたちはVR空間で撃ち合ってるわけだから、観客はいろんな角度から試合を見れるんだよね。

 あと、一応このゲームにはランキングがあって、上位プレイヤーの戦術、鮮やかなキルは見ててとても面白かった。あ、キルっていうのは相手を倒すことね。

 その魅力に取り憑かれて、私もこのゲームを始めたってわけ。

 現在、このゲームをやってる人は大体百万人。

 え?少ない?

 確かに、人気のゲームとかはプレイヤー人口一億人を超えるのもあるらしい。


 でも、このゲームの真価はそこじゃない。

 このゲームの特徴といえば、スポンサーと同接数の多さだ。

 大きな大会以外にも、企業プレゼンツの小さな大会もときどき開催される。その大会でも、1番少なくて同接数二百万人とかかな?

 で、現在は1番規模の大きい公式大会の同接数、なんと一億人弱。

 地球は、今も人口が増え続けて、現在世界人口は百億人を超えている。

 単純計算で、百人に一人はこの大会を見ていることになるのだ。

 そして、ランク上位の人たちが宣伝したものは流行ることが多いし、めちゃくちゃ売れるらしいから、結果的にスポンサーが数万社まで増えることとなったのである。



 まぁ、『GUN KING』についての説明ははそんな感じかな。

 私は大会の配信を見たのをきっかけにこのゲームを始めた。

 このゲームをやりたいって言った時の親からの反発はすごかったなぁ。

 まぁ、当時は結構ゲームの治安が悪かったからね。死体撃ちとか不意打ちとか煽りとかは当たり前のように皆してたし。あ、私はそんなことしたことないからね。本当だよ?これでもプレイヤー1お行儀がいいって言われてるんだから。

 結局、いくつかのルールを決めて、それを守るならゲームを続けていいって言われた。例えば、汚い言葉遣いをしない、午前中は勉強する、大会に出る際は親にちゃんと伝える、顔は出さない、とかね。このゲーム、現実の顔がそのまんま反映されるから。


 長々と説明したが、結局言いたいのは、多少の痛みはあるけど『GUN KING』は楽しいよってことだ。ゲームシステム自体はちゃんとしてるからね。

 でも最近、絡んでる人たちが他のゲームをめっちゃおすすめしてくるんだよねー。

 ちょっとその時のことを思い出してみようか。






 ーー「最近勝率どうよ?」

 「……ぼちぼち?」

 「そうかーー……っておい、ログ見たけど今日全勝してんじゃねぇかふざけんな」

 「嫌味言いに来たの?」

 「ちげぇよ、お前にゲームを勧めに来たんだよ」


 プレイヤー名『ロキ』は、そう言って私に向かって何かを投げる。あれは…丸まった紙だ。なに?ゴミを投げられたの?ロキは適当なところがあるので、ゴミを捨てに行くのがめんどくさくて、私に押し付けてきたのかもしれない。

 取らないわけにも行かないので、キャッチしてゴミ箱にーー


 「ちょっと待て、ゴミじゃないからな?

 ゲームのチラシだって言ってんじゃねぇか」

 「言われてない…」


 捨てるのを止められたので、しょうがなくクシャクシャになった紙を開く。

 そこには…えーと、『adventure King 』?


 「何このゲーム?」

 「『GUN KING』出してる会社が新しいゲームを開発したんだよ。

 ちなみにジャンルはRPG。もちろんフルダイブ型だ」


 へー、この会社って他のゲーム出してたんだ。

 『GUN KING』以外はあんまり有名じゃないからなぁ。


 「ちなみにお前以外のランカーは全員やってるぞ、なんなら9人でクランも作ってる」

 「えっ」


 クランっていうのは、なんだろ…言い表すなら、ゲーム内でいろんなイベントやる為とか、モンスターを倒すために集まった集団?みたいなイメージがある。人数はゲームによるけど、100人くらい入ってるところもあるらしいね。

 それを私以外で作ってる?……仲間外れにされているってこと!?

 悲しい。いじめだ。

 そんな気持ちが顔に出ていたのか、いや、仮面かぶってるから雰囲気から察したのか、ロキは慌てて弁明し始める。


 「わざとじゃないからな!?」

 「…うん、そうだよね、うん」

 「信じてねぇな…」


 ロキが言うには、別々にそのゲームをやってたらしいんだけど、ついこの間ゲーム内で偶然出会ったらしい。私以外が。

 よって、ただ一人ゲームをやっていない私を誘おうってことになったらしい。


 「…黙っとくと、後でバレた時にすげぇ面倒臭いからなー」

 「…今、何か言った?」

 「いや別にー」



 「というか、このチラシ何?

 くちゃくちゃになってるんだけど。

 ゲーム内アイテムでこんなものあったっけ?」


 そう、ここはバーチャル空間。

 本来ここにアイテムは食料以外持ち込めない。


 「いや、さっきあそこから掻っ払ってきた」

 そう言ってロキが指差した先を見ると、そこはお知らせなどの紙が貼られてある掲示板だった。

 …つまり、運営さんが貼った紙を剥がして持ってきたってこと?


 「運営さーん、ここに悪いことした人がいまーす」

 「バカ、やめろ声がデカいんーーー」


 言っている途中でロキが目の前から消えた。

 このゲームで悪いことばっかりしてると、それを見ていた運営が通称『お仕置き部屋』にその人を連れ去るのだ。

 ちなみに何をされるのかは知らない。私は連れて行かれたことないし。知りたいとも思わない。


 まぁ2、3回悪いことやったくらいじゃ連れて行かれないんだけどね。ロキの場合、普段の行動が悪すぎて運営からの監視対象になっているのである。つまり自業自得。


 とりあえずロキの冥福を祈っとくか。







 ーーーということがあったわけだ。


 まさか私以外が他のゲームに集まってるとは。

 みんな、FPSしかやってないと思ってたからビックリした。

 確かに最近『GUN KING』で会う頻度が減ったなーとは思ってたけど。


 やはり、新しいゲームを始めるのって勇気いるなー。フルダイブ型以外だったらそんなに抵抗はないんだけど。

 顔が変えられないのがなー。同じ高校の人には絶対に会いたくないからな。


 悩んだ末、やっぱり始めることにした。

 やはり、私以外のランカーがやってるならやるしかないでしょ。仲間外れは嫌だもん。



 あぁ、意図的に説明を後回しにしてたけど、『GUN KING』においてランカーとは、ランキング一桁の人達のことを指す。

 つまり何が言いたいかというと。


 実は私、なんと『GUN KING』プレイヤーランキング第2位なのだ。

 どうだ、すごいでしょ。

 


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