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放蕩息子、名宰相になる  作者: リベロ・マラパルテ
第一章:放蕩息子の里帰り
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第八話:放蕩息子、兄を思い出す

「あんたを主として相応しいと認められる証を出しな、それを見せるまで、マーゼン伯爵家に戻る気は無いぜ」


結局、ユルゲンを説得することはできず、帰ることになった、ちなみにイルーゼは、何故か酔っぱらって荒くれどもと絡んでいた、人が真剣な話している最中に何やってんだ?あの女は?絡んでいたやつらに話を聞くと

「ずっと、赤い顔をして突っ立ているから気まずくて、一杯飲ませたら、ああなった。」とのことらしい。

いや….たかが一杯であんなに泣いたり笑ったり、するのかあいつ、泣き上戸に笑い上戸だったんだな。


「…それでね、ハインツお兄様はね、凄いの、たくさんのね、騎士をね、ドカーン、バキーンって倒すの。」

なんか、幼児みたいな言葉使いになってないか、さっさと帰らせるか。

「おいイルーゼ帰るぞ、話は終わりだ、店主、こいつの飲み代だ、足りるか?」

俺はひとまず店主に支払いをしようとした。


「いや、うちの客のおごりだから、いらねぇよ、それより早く帰ってくれ、客がみんな、あの嬢ちゃんの相手して、酒が売れねぇからよ。」

「本当にすまんかった。」


俺は店主に詫びを入れて、イルーゼを引き連れて帰った。


「ねぇー、クラウス、眠たいよ、おんぶしてよ。」

…………こいつ、酔いがさめたら、記憶を消すために、俺を刺したりしないだろうな。

「肩は貸してやるから歩け、それに俺はお前の主だからな、なんで主が護衛の介抱をしないといけないんだよ。」


このまま、歩かせて倒れてもしょうがないから、イルーゼを支えながら、馬を停めてたところまで歩いて、どうにか馬に載せて、城に戻った。その最中イルーゼはあの酒場でも言った兄上の自慢話を繰り返していた。というのもイルーゼの初恋は兄上だったからだ。


実際兄上は母上に美しい顔立ちと分け隔てなく優しく接する様から、多くの人に愛されていた。そしてイルーゼは、ノイトバルク城に住んでいて、同じ年ごろの俺と遊んでいたことから、頻繁に会う機会があった。そのため(ハインツ兄さま、ハインツ兄さま)と兄上にくっつくようなった。


そのため更に、兄上といる時間を増やすために剣を習い始めた。

当然カミラやエアハルトから猛反対されたが、意思が固く、兄上がけがをさせない様に教えるからと、どうにかと許しを得て、俺と共に習い始めた。しかしイルーゼは思いのほか、剣の才能があり、ずっと前から習っていた、俺よりもたちまち上手くなり、エアハルトやベルント達がそれならと徹底的に鍛えた。

ちなみに俺はますます剣を鍛えることが嫌になり、部屋に引きこもるようになった。

その結果イルーゼは、メイドになるのではなく、剣士として、マーゼン伯爵家に仕えることになった。最もやってることは剣士というより、文官や侍女に近いが、痒い所に手が届く仕事ぶりなので助かってる。


こいつとは、赤ん坊の時からの付き合いだが、どうにも仲が合わん、これは男や女の性別以上の根源的な違いなんだろうな。それでも兄上の下では仲良くしていたのだから、兄上の人徳はすごかったんだなと、兄上を思い出す。そんなこと思っていたら、イルーゼの奴から顔面に拳を入れられた、片手で手綱をつかみながら器用な奴。


「今、すごい失礼なこと考えてただろ、クラウス。」

…………悲しいことに、仲は悪いが、赤ん坊からの付き合いのせいか、考えていることをしばしば読まれる、そして大概当たっているので、反論できない。ずっとべネトにいたので、こいつとの付き合い方を忘れていた。


「何回も言うけど、俺はお前の主だからな、俺が寛容なだけで、他の家なら、殺されても文句は言えないからな。」

「おまえくらいならぁ、ぼこぼこにできるからもんだいないやい。」

「やむを得ん、エアハルトに頼むか」

「ずるいぞ、おじいさまにいうなんて、あるじとしてのきがいはないのか。」

イルーゼは声はでかいものの、威勢は大人しくなった。

都合のいい時だけ主といいやがって、しかしこいつもエアハルトは怖いんだな。


「さて、馬鹿なこと言ってないで、早く城に戻るぞ。」

あまり夜道に長居はしたくない、馬に鞭を入れようとしたその時、

「クラウスが、思っているよりハインツ兄さまは完璧な方ではなかったよ。」

後ろを振りえるとイルーゼは、悲しげな目で俺を見ていた。


「あ?、どういう意味だよ」

「しらなーい、じぶんでかんがえるんだな」


そういうとイルーゼは俺から顔を背けて、城に帰るまで何もしゃべらなかった。


「クラウス様、おかえりなさいませ…………何故イルーゼは赤くなっているのですか」

「俺のせいではない、勝手にこうなった」

「はぁ、仕方ありませんな、明日は食事抜きで素振り千回ですな。」


俺は気持ちよく寝ながらカミラに連れていかれるイルーゼを見て、明日のこいつがどんなにきつい思いをするのか考え、哀れに思った。ざまぁ


「クリスタ義姉さんは、まだ起きているか」

「は、先ほどアルフォンス様を寝かしつけて今は奥様の部屋で奥様と話されています。」


「着替えが終わったら向かうと伝えてくれ」

「承知しました」


着替えを済ませて、母上の部屋の前まで来た。「…あの子は、昔から頑張りすぎるところがあってね」

「…そこが、あの人の美徳でもありましたね」


扉の向こうから母上とクリスタ義姉さんが喋る声が聞こえる、楽しく話しているみたいだ

「ただいま、もどりました」

「あら、クラウス、お帰りなさい」

「大変だったみたいね」


母上と話したのが気晴らしになったのか、今日のクリスタ義姉さんの顔色はいい。

俺が城に戻った当初は、兄上の死が受け入れられず、寝込んでしまっていたことを考えると、立ち直ってくれて、何よりだ。


「ところで、二人で何を話していたんですか?」


「ハインツの幼いころの話をしていたのよ、クリスタさんが聞きたいって」

「私があの人と初めて会ったのは、あの人が15歳の時だったので、知りたかったのよ」

兄上の幼いころか、兄上は幼いころからベルントやエアハルトととも、まともに戦えるような腕前で、親父もとことん褒めまくっていたな、そのころの俺はって?さすがに兄上ほどはいかなくとも、年相応にはやれてたさ、それなのに親父は「どうして、ハインツみたいにできないんだ」と俺をボコボコにするわ、周りからも出来のいい兄と悪い弟と比べれ、終いにはイルーゼの奴に追い抜かされて、俺は二度と剣を振らなくなった。


「クラウス君?なんかすごい苦々しい顔をしているけど、大丈夫?」

「クラウスにしてみたら、あまりいい時代ではなかったのよ、アルブレヒトは自分が出来るから、子供でできるって考えてるところがあってね。」

「母上、言わなくてもいいよ。」


自分の黒歴史をクリスタ義姉さんに知ってほしくないしな。


「けど、ハインツにとっても思い出しくないことはあったでしょうね。」

「は?何言ってんだよ、あのころから親父やエアハルト達にとことん褒められまくってて、まんざらじゃない顔をしてたぞ。」


そういうと母上は、ため息をついた。


「あなたにはそう見えてもしょうがないわね、けどハインツは決して完璧な人間だったわけじゃないのよ、あなたがべネトに行ってから、あの子がどれほど悩んでいたか。」

「兄上が?なんで俺がいないから悩んでいたんだよ」

「確かにハインツは、剣はアルブレヒト譲りの才能を持っていたけど、それがハインツを苦しめていたのよ、あなたの助けがあってハインツはやっていけてたのよ」


俺が?兄上を助けてた?むしろ兄上が俺を助けていたんじゃ、母上はいったい何を言ってるんだ。


「確かにあなたは、昔から自分を低く見る悪い癖があったから、信じられないだろうけど。ハインツはあなたのおかげで自分は当主の跡継ぎとしてやっていけると常に言っていたのよ、ねぇクリスタさん」

「そうですわね、お義母様、ハインツ様は私との会話では、常にクラウス君のことばっかりでしたわ」

「正直、あんまり信じられないんだが、兄上が俺をそんなに頼りにしていたなんて」


「そうね、少し昔話をしましょうか、ハインツが幼いころの話をそして、あなたがべネトに行ってからの話を」


そう言うと、母上は遠い昔の日々を思い出しながら、語りだした。






















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