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放蕩息子、名宰相になる  作者: リベロ・マラパルテ
第一章:放蕩息子の里帰り
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第三話:放蕩息子、状況を確認する。

設定上、矛盾が生じるので、クラウスの父親たちが死んだ場所を南部に変更しました。

「クラウス様がお帰りになられたぞーー」

迎えに来た執事の言葉を聞き、城に入ると使用人や兵隊たちがせわしなく動いている。

馬や馬車に乗る途中、街道や市場を少し見ることが出来た。

確かに人が全くいないわけじゃないし、市場も開いている。ただ人の行き来は俺がパターラに行く前と比べて、明らかに減っているし、市場も巡回する兵士が多くて、まともに商売が出来ているとは思えない。

明らかに伯爵領、いや途中で見た公爵領も含めて、まるで戦をしているみたいだ。


「クラウス様、イルーゼ、よくぞ無事にお帰りになられました。」

イルーゼの母親で俺や兄貴たち兄妹の乳母であるカミラが出迎えてくれた。

「至急、母上と叔父上に会いたい、2人はどこにいる?」

「旦那様の執務室です、急いで向かってください」


家に帰って、休む暇もないのかよ、まぁ俺としてもそっちの方がありがたいが、

とにかく今の領地の状況を知らないと、何をしなければいいのかもわからない。

「分かった、イルーゼ行くぞ」

「言われなくても、行きますよ、隊長様も来てください」

「分かりました」

え、なんで隊長もくるんだ?まぁいい、そんなの気にしている場合じゃない

俺たちは急いでカミラの先導で親父の執務室に入った。


「クラウス、イルーゼよく帰ってきたわ」

母上はそういって、俺とイルーゼを抱きしめた。

「母上、今、そんな状況じゃないだろ。」

「そうです、奥様、クラウス様に説明しないと」

俺とイルーゼは赤くなって母上の手を払いのけた。

「そうね、ただあなた達が無事に帰ってきて嬉しかったの、ごめんね」

母上はそういうと涙をぬぐい、伯爵夫人としての貫禄を見せた。

「どこから話せばいいかしら、そうねまずはアルブレヒトとハインツについてね」

母上はそういうと親父と兄上がどうやって死んだかについて話した。


「先月のことだったわ、2人とも珍しく仕事が終わった後、ミンへに用事があると言って、馬車に乗っていったの、最近は盗賊が街道に出ているというのもあって、護衛を付けてね」

どうやら最近、伯爵領周辺で動いている盗賊団がいたらしい。最初は行商の品が盗まれるくらいだったが、段々被害が増えていって、貴族も被害にあうことがあったらしい。

「被害にあった貴族たちは特に武装もしていなかったから、護衛がついてれば大丈夫だと思っていたの、それに2人とも、剣の腕はすごかったから」


確かに親父も兄貴もマーゼンの人間らしく、帝国でも指折りの腕前だった。とてもじゃないがそこらの盗賊ごときに負けるとは思えない。

「たまたま、近くの行商が盗賊に襲われていたみたいで、2人とも助けにいったの、それで盗賊たちを追い払えたんだけど…」

盗賊たちを捕まえようと深追いした親父が、盗囲まれしまい、四方から切り付けられ倒れた、それをどうにか救い出した兄上も戦いの最中に放たれた矢が急所に当たって倒れたらしい。

しかし、親父らしいといえば親父らしいが、なんでそんな無茶をしやがる、

自分の立場をわかっていたのか。


「あの人は目の前の民が困っていたら、どんなことがあっても助け出す、そんな人よ」

「俺の心を読むなよ、母上」

しかし、護衛は何をやっていたんだ、当主とその跡継ぎを死なせるなんて

「ご無沙汰しております…クラウス様」

「ああ、クルトか、久しぶりだな」


俺の目の前にいる白いひげを蓄えた老人はクルトといい、じい様の代からマーゼン家に仕えている。

「本当に…本当に申し訳ございません、アルブレヒト様とハインツ様を死なせてしまって」


そういうとクルトは、俺の前に跪いて頭を垂れた。どうやらクルトが護衛の隊長だったらしい。

大分震えている、相当親父と兄上を死なせたのが、こたえたらしい。幼いころから俺や兄上の剣の師匠でもあった、そのクルトがここまで落ち込んでいるのは、見たことがない。


「たかが、盗賊だと油断していました…あんなことになるなんて。」

しかし、こんな状況じゃ、まともな話は聞けそうにないな

「とにかく、休んでくれ、クルト、落ち着いてから話をしよう。」

「申し訳ございません…申し訳ございません」

「クルト様、ひとまずこちらへ。」


イルーゼに手を取られながら、クルトは退室した、そういや叔父上とベルントの奴が見えないな

「母上、叔父上とベルントはどこに?」

「私ならここにいるよ、クラウス。」

そういうと司教の格好をした男が俺の前に出た、よく顔を見るとコルネリウス叔父上だった。

「叔父上、この場で司教の仮装は非常識だと思いますが。」

ときどき、いたずら好きで突拍子もないことをするのがこの人の趣味だが、いくら何でも限度がある

「いや、仮装じゃない、私は本当に司教になったんだ。」

「いや、そんなみえすいた嘘を言うんじゃなくて。」

「本当よ、コルネリウスさんはミンへの司教になったのよ。」


「は?どういうことだ?」

聖職者嫌いの叔父上が聖職者になっているだけでも驚きなのに、

その上司教だ?なんの冗談だ

「半年ほど前に兄上からいい職があると言われてね、てっきりどこぞの大学の教授職かと思って言われるがままに書類にサインしていたらこうなっていた。」

「いやいや、おかしい、おかしい、司祭になるならまだわかりますが、司教になるってどういうことですか。」

「去年、先代の司教が亡くなられたんだ、その時は司教候補として長年争ってきた2人の司祭のどっちかがなるはずだったんだが…」

どうやら両方とも、教会の金を横領するわ、信者の女性に手を付けるわで聖職者としてあるまじき振る舞いが目立ったらしく、汚職嫌いの枢機卿によって辺境の修道院に左遷されたらしい。帝国でこんな話を聞くとは…まだディータリアよりはましだと思っていたが


「そのあと、その枢機卿が公爵様に後任の司教を推薦してほしいと言ったらしくてね、それで聖職者嫌いでも独身で、公爵家と繋がりのある私が選ばれたというわけさ。」

「……マジか」

「私が当主代理になれないのは、これが理由だ、後見人にはなれるが、貴族領の領主にはなれないからね」

確かに、聖職者になった貴族は貴族領の領主としての役割を持つ当主にもその代理にはなれない

「今は、この状況だからマーゼン領にいれるが、長期間ミンへを離れるわけにはいかない、だから頼む、クラウス、ハインツの遺言を受け入れて、伯爵家を継いでくれ、養子に行った弟たちもそれを望んでいる。」

確かに伯爵家に残っていて、成人している男は俺しかいない、やるしかないか

「分かった、但し当主にはならない、まだ、赤子とはいえ、アルは兄貴の子供だ、伯爵家を継ぐ権利がある。アルが成人するまでは当主代理として伯爵領を統治するよ。」

「そのまま当主になっても、クリスタも賛同するとは思うが、まぁいいだろう。」


そういえば義姉さんとアルの顔を見てないな、後で会うか

「ところで叔父上、ベルントは何処に?領内の状況について聞きたいのですが。」

「今、兄上達が襲われた南部の方に私兵と共に行かせているよ、そこに盗賊団が出没したと知らせがあったのでね」

「すぐに向かいます、誰か、馬を出してくれ」

急いで向かわないと思い、俺は足早に厩に向かおうとした

「待て待て、念のため、鎧は付けておけ、今、お前に死なれては困る。」

「おっと、そうでした。ひとまずベルント達の所へ向かいます。おい、隊長、あんたも来てくれ」

「承知しました。総員南部へ向かうぞ」

「は!!」

こうして、俺は公爵家の騎士団と共に親父たちが無くなった土地へ向かうことになった。




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