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放蕩息子、名宰相になる  作者: リベロ・マラパルテ
第一章:放蕩息子の里帰り
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第一話:放蕩息子、今までの人生を振り返る

ほぼ1年ぶりですが、又初めて見ました、これから、どんどん投稿していきますので見ていってください

「それでは、助手になるということでいいのですね?」

先生は念を押すように俺に言った、あまり乗り気ではないようだ。

「はい、やっぱりおれはパターラが、この大学が好きです、許していただけるのなら、この大学で教授として勤めたいです、無論、俺にその才があるのならですが。」

俺は改めてその決意を先生に伝えた。

「…いえ、君なら教授としてもやっていけるでしょう。しかし単に教授や学者になることだけを、大学は求めているわけではありません、むしろ、その学びを世のため、人のために尽くされてこそ、その価値があると私は考えています。」

やっぱり、そうなるような、先生も俺の考えは分かっているんだろうけど…

「伯爵家に戻り、領民のために働くことも良い選択だと思います。君の歴史や政治に対する造詣は素晴らしい、学内でとどめるのはもったいない。」

「申し訳ありませんが、俺がいなくとも、実家は大丈夫です、父は有能ですし、その跡を継ぐ兄も同じくらい優秀です。兄は幼いとはいえ、男の子がいます、問題ないでしょう。」

まぁ、本音はあの親父がいる実家に帰りたくないだけなんだけど。

「そうですか、前々からの話の通り、意思は堅いようですね。分かりました。大学に助手として君を雇うように手続きを行います。あまり給料はでないので、その点は承知してください。」

「ありがとうございます。それで構いません。今日はこれで失礼します。」

おれはそういって、先生の部屋をあとにした。

「はぁ、俺も卒業か…」

あらためて自分の人生を振り返ってみる。俺の名前はクラウス・マーゼン、このエウロパ大陸にある神聖帝国のマーゼン伯爵家の生まれだ。といってもそれを継ぐのは、俺の兄貴だし、弟や妹達も、それをうまく支えてくれるだろう。

俺は幼いころから昔ながらの信仰とそれのよって固定した考えしかみとめないような、貴族社会に嫌気がさしていた。まぁ、その代表例が親父なんだけどな、やれ貴族なら、剣のみ覚えておけばいいだの、教育は家庭教師と教会のみで十分だの、ほざきやがって。

そして俺の周りの人間も同じような考えで、そのくせ、威張れるものいったら何百年も前の先祖の功績だけで、何の考えも持たない馬鹿貴族ども(まぁ、俺もその一人なんだろうけど…)、そう言った連中に嫌気がさしていた中、このパターラ大学に留学する話がでたのは、天からの恵みだった。

どうにか親父を叔父上や兄上、母上が説得してくれて、入ることが出来た。

パターラに入ってから、今日までは、まるで天国にいるかのような気分だった。自分と同じ学問に興味を持ち、学び、高めあう仲間がいるなんて、今まで味わったことのない経験だった。

「あのまま、マーゼン領にいても不貞腐れた部屋住みになっているところだったな。」

パターラでは学問だけでなく、庶民の暮らしを直接、同じ目線で見ることが出来た、なにせ帝国では、会う人は、その階級によってほとんど決まる。自由市民や庶民と会うことなんてほとんどなかった。

そして俺はそういう人たちとただ会うだけでなく、直接働くこともあったのが…

「痛った、誰だ。」

人がもの思いにふけっている間に頭をたたいた無粋な野郎の顔を見てみると

「よぉ、クラウス、何ボケっとしてるんだよ。」

「ジョバンニか、先生の所から帰ってきていただけだ。」

こいつは、ジョバンニ、このパターラを治める、べネト共和国の商家の跡継ぎだ。

大学に入ってから同じ先生の下で学んできた同期の中で、こいつとは一番馬が合う仲だ。

こいつの実家の手伝いを何度かしたことがあって、そのときにもらった金で、一時期仕送りが無いのを乗り越えたことのある恩人でもあったりする

「先生の所?ということは、決めたのか」

「ああ、助手として大学で働くことにしたよ。やっぱり、俺は大学が、パターラが好きだ」

「そうか…まぁ、お前自身が選んだのなら、それはいいことだ、頑張れよ」

ジョバンニは、俺の内心を察してか、思いやりのある言葉を言った。

「ありがとう、しかし、寒いな、もう夕方か」

「そりゃあそうだ、12月だったら、尚更だ、聖誕祭も近いし、そうだお前を誘おうと思って、来たんだった。」

ジョバンニはそういうと、俺に大学に来た目的を伝えた。

「今日、親父が内地に戻ってきたんだ、それでお祝いの食事をしようと思ってな、良かったら、お前も来てくれ、母さんも、クラーラも喜ぶ」

「クラウディオさんが!!、もちろん、ぜひ行かせてくれ」

ジョバンニの父クラウディオさんは、べネト共和国の貴族で交易商人でもある、家の人はこれでも、貴族の中では慎ましい方だとは言っているけど、べネトの外から来た、俺みたいなやつにはこの国有数の金持ちといっても信じるくらいだ。少し小太りな体と横に広いひげが愛嬌のある所で、この人の前には有り金全て差し出しても買ってしまうと思う。

「しかし、まだ船が出てるかな」

大分、日が沈んできているし、果たしてべネト本島まで夜までに行けるだろうか。

「お前、ここにきて何年になるんだよ、ここはべネト共和国だぞ、どこかに行くのに、困るなんてことを政府が許すわけないだろ、そんな怠慢を働いたら罰金ものだ」

この国の汚職に対する厳格さと商売のために充実した交通網の存在を思い出したところで、俺とジョバンニは乗合馬車に乗って海岸まで行き、そこから船でべネトまでめでたく行くことが出来た。

「いやぁ、しかしとうとうクラウス君とジョバンニが卒業か」

クラウディオさんは、まるで遠い日のことを思い出すかのように、目を細める。

「跡継ぎであるにも関わらず、家業の手伝いもせず、大学に行って遊び惚けるようなやつだったが、クラウス君のおかげで、べネトの商人として最低限はやっていけるようになった、これもクラウス君のおかげだ、心から感謝するよ。」

「最低限は余計だ、親父」

ジョバンニの反論に苦笑いしながら、俺も返す。

「いえ、俺の方こそ家族の様に接していただいて、本当にありがとうございました、遠い、帝国の土地から、来た中で暖かく接して頂いた、マストロ家の皆さんは家族のようなものです。」

「うれしいわぁ、そんなこと言ってくれて」

クラウディオさんの奥さんのサビーナさんも本心から喜んでいるみたいだ、目から涙が出ている。

「クラウスお兄様、あとジョバンニ兄さまも、卒業おめでとう!!。」

ジョバンニの妹のクラーラちゃんもうれしそうに祝ってくれる、マーゼンに残してきた弟妹達を思い出して、いつもマストロ家に行くときは遊んでいた。

「サビーナさん、クラーラちゃんもありがとうございます。」

「ところで、卒業後は実家に帰るのかね」

一通り、卒業を祝う言葉がみんなから出たあと、クラウディオさんは俺の進路を訪ねた。

「いいえ、大学の助手になる予定です。実家には帰りません。」

そういうと、クラウディオさんは悲しげな表情になった。

「いやいや、こういう機会だ、故郷に戻り、家族に元気な顔を見せるのは大事なことだと思うよ、私だって、どんなにできの悪い息子であっても、3年も会っていないと、顔を見たくなるものだ、意地を張らずに帰ってあげなさい。」そう言ってクラウディオさんはジョバンニに顔を向けた。

「3年と言わず、毎日顔を出してやろうか、クソ親父」

「ああ、是非そうしてくれ、お前には商人の根本を叩き込まなければなるまい、大学時代は学業に専念させるため、抑えてきたが、卒業したため、もうそんな、配慮をする必要はない、遊びに使った金以上に働いてもらうぞ、わしの下でな」

「ゲッ、マジかよ」

ジョバンニが墓穴を掘った光景を見ながら、俺はマーゼン領のことを考えていた。果たして親父は俺がマーゼン領に帰った時、どんな反応をするのだろうか、親父に対する恨みは消えて、その疑問だけが残りながら、俺はマストロ家の客室で眠りについた。








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