プロローグ:放蕩息子、父と兄の死を知る
「すまん、もう一回言ってくれ、俺も年で耳が悪くなったようだ」
そう言っておれは目の前にいる眼鏡をかけた白髪の老人が放った言葉を確認しようとした。
「アルブレヒト様と、ハインツ様がお亡くなりになられました。」老人はそう言って、数秒前に言ったことを寸分違わず、俺に告げた。
「悪いのは耳ではなく、頭の方ですね、クラウス様」そういったのは老人の隣にいる赤髪の女だった。
そんな忠誠心のかけらもない言葉は幸か不幸か、俺の耳には届かず、おれは老人の言ったことを頭の中で反芻していた。
親父と兄貴が死んだ…あの傲慢で自分の言ったことは一切曲げない親父が…そしてそんな親父と俺の仲を取り持ってくれて、俺を大学に行かせてくれた兄貴が…
「てか、ちょっと待て、親父だけならまだわかる、なんで兄貴も死んでんだ」
いきなり親父と兄貴の死を知らされて気分が動転していたが、よくよく考えたら、異常な報せだ。
親父は健康に気を使わないといけない年のくせに、
不摂生な所もあったから、心の臓の不具合とか、血の巡りが悪くなったとか、ありえなくはない、
しかし兄貴は若いし、病気知らずの肉体だ、
そんな兄貴が親父と同じタイミングで死ぬなんてありえないだろ。
「まさか…殺されたのか?二人とも」
俺の問いかけに老人と女は頷いた。
「執務を終えてお二人とも同じ馬車に乗っていたところを賊に襲われました。」
「お二方とも、護衛と共に果敢に賊と戦いましたが、アルブレヒト様は賊の矢を胸に刺されて、即死、ハインツ様は賊に切り付けられた傷が原因で、襲撃後の2日後にお亡くなりになられました。」
老人と女は詳細に2人の死因を語った。賊にやられた!うちの領土でか?、色々と突っ込みたいところはあったが、老人は更に、俺を驚かさせることを告げた。
「つきましては、クラウス様に当主になっていただきたく…」
「ちょっと待てぇ!!なんでそれで俺が当主になるんだ。」俺は老人の襟首を掴んで突っ込んだ。
老人はおれの突っ込みにノーリアクションで、その理由を告げた。
「ハインツ様は襲撃から亡くなられるまでの際に我々に幾つかの遺言を残しました、その一つにクラウスを当主にせよと。」
まじか…兄貴は何を考えて、そんな遺言を残したんだ、
「てか、兄貴にはアルがいるし、叔父上達もいるだろ、そんな中俺がなる理由無いだろ。」
「アル様は当主としては幼すぎますし、アルブレヒト様の弟様方も養子に行かれたり、本家に残っていらっしゃる方々もクラウス様の当主就任に賛成しております。」
絶対、面倒だから俺に押し付けたろ叔父上達、ふざけんな!
「頼む、少し考えさせてくれ、頭が混乱してまともな判断が出来ない」
俺は、すこしでも情報を整理して、時間を稼ごうとしたが、そんな努力はあっけなく踏みにじられた。
「申し訳ありませんが、一刻の猶予もありません、至急、ノイトバルク城に帰らなければなりません。」老人は、無常にも俺の願いを退けた。
「ご心配なく、城に戻るまでにはクラウス様の頭でも整理できることばっかですから問題ありません」
そして女からも、俺の言い訳を封じる言葉が放たれた…
ああクソが、一体どうしてこうなった。
時は数刻前に遡る…
初めまして、この度なろう小説を書いてみることにしたリベロ・マラパルテといいます、初めてで、慣れないところも多いと思いますが、気になったところがあれば、高評価、コメントをお願いします。