第五鎚 ごぶりん・すれいやーと呼び寄せた影
夕方にもう一本投稿します
翌々日。さっさと朝食を済ませた私は『EIL』の世界に来ていた。
翌々日、といったのは、実は昨日は世話の焼ける弟の部活の公式戦があったために、応援に行っていたからゲームができなかったのだ。弟は別に悪くないのだけれど、不満がないわけではない。…それはそれとして、応援は楽しかったです。
弟は野球部でね。夏休みに入ってから大会が始まって、今年こそは全国優勝だ!なんて言って頑張ってるんです。あの子は私と違ってけったいな身体能力を持ってるさから、しっかり応援しないと、なんて思ってる。
それはそれとして、いつの間にか私よりも圧倒的に背が高くなったせいであいつの妹と間違われるのは、全くもって許せない。
それに何も1日空いたのは別に悪いことばかりではないのだ。竜化のスキルのリキャストが終わってたからね。…でも、軽い気持ちで発動するとまた暴走するかもだから気をつけないと…
今日は『EIL』にログインした後は、街に出る前に回復アイテムを買い込んだ。HPポーションやMPポーションなんかだね。ついでに『夕焼けの残り香』に行ったらお弁当が売っていたから、STRが上がるものをフィニーちゃんに三つほど売ってもらったのだ。朝から笑顔でお弁当を売っていた様は、さながら天使のようだった。
その後はとりあえず特別な予定もないので、ボスに挑むためのレベリングでもするかなー、と街の外に歩いていった。とはいえレベリングといっても、昨日の時点で既にアインの街周辺のモンスターは敵じゃなくなっていたから、今私がいるのはその一個先のフィールドである森の中だ。
そこでいざ、ボス撃破のためにレベリングだ!なんて、思っていたのだけれども。
私は今現在、結構退屈していた。
〈ゴブリン〉Lv.6
200/200
〈ゴブリン〉Lv.7
230/230
〈ゴブリン魔術師〉Lv.4
140/140
「ゲギャァ!」
「ほいっと」
「グギャギャ!」
「おらっと」
「ゲギャギャ…《****》!」
「おっと…くらえ!」
「「「グギャァァァ!?」」」
敵のレベルが上がったのは、いい。複数同時に出てきて、しかも前衛と後衛のバランスが取れる敵も出てくるようにもなった。
最初の方は楽しかったのだ。成長した自分の力を振るうのは爽快だし、戦闘以外にも、森の中では色々な物が採れたりしたから。例えば薬草だとか、例えば木の実だとか、例えば大きな蛇の抜け殻だとか。…蛇の抜け殻は、興味本位で触ったらアイテムとしてゲットできてしまったものだ。あとでギルドに見せていくらになるか調べてもらおう。
とはいえ、そんな新鮮な楽しさも結構すぐになくなってしまった。…いかんせん、敵が脆すぎたのだ。
アイクとの戦闘訓練と胸にぶら下げている会員証が相当効いている。昨日はあれだけぎこちなかった動きも、濃密な戦闘訓練のせいで最適化されて、今では流れるように両のメイスを操って敵を粉砕していけている。これならば、もうボスモンスターに挑んでもいいのではないか?なんて思うくらいには。
なんといっても、あれからレベリングをしてレベルが1上がった今の私のSTRパワーは、アクセサリーの効果込みで50の大台に乗ったのだから。
ボスの推奨レベルは5人パーティで平均レベル10以上ってことらしいが、要するにレベル10程度のステータスがあれば十分攻撃は通るということで。私のSTRの値は多分その『攻撃が通るライン』を優に超えているだろうし。後はDEXとかAGIとかVITとかの話になるけど、それに関してはどうやら私にはさほど重要な問題ではないらしい。
DEXは攻撃の正確さとか生産系スキルの成功率に関するものだけど、まあこれは…うん、打撃武器だしあんまり気にならない。硬い装甲の敵が出てきたら弱点をつくんじゃなくて、硬さ以上の力パワーで無理矢理抜けばいいだけの話だ。
AGIについては、先読みして相手の機先を制し、動きの無駄を削って動作の終わりと動作の始めを繋げれば、『速さ』とは少し違うけれど隙をつかれたり差し込まれたりなんかは防げる。肝は相手の動きを読み切ることだ。
VITは…まぁ、当たる前に当てればいいし。攻撃が当たりそうなら、その攻撃に合わせて私も攻撃をぶち込んで仕舞えば相殺、あるいは逆に押し切ることができる(脳筋思考)。
以上より、STRパワーこそ正義である。証明完了。数学で見かけるどの証明問題よりも簡単で自明な証明だったね…(自惚れ)
昨日までは「夜のグラスウルフにリベンジする!」なんて燃えていたけど、今なら多分余裕で勝ててしまうだろうし…はぁ、悲しいなぁ。
もっと強敵はいないのだろうかと考えてみて、このあたりでいちばんの強敵といったらやはりエリアボスなんだろうけど、実はこいつ、今すぐ挑むなんてことはできない。
というのも、ここのエリアボスは徘徊型のボスなんだそうだ。願えば出てくるというものでもなく…というか、願っている時ほど出てこない。いわゆるネット用語での『物欲センサー』?的なのが働いているんだろうか。最近のゲームはそんなことまで再現できるのか、すごいなあ…
……冗談は置いておいて、本当に暇である。…いっそのこと、ボスモンスターを探しながらこの辺り一帯のモンスター全てを倒し尽くすつもりで駆け回ってみようか…あれ、割といい案じゃないだろうか。
…よし、それでは行こうか、虐殺の旅へ!!!
そんな頭の悪そうな選択をした私がとんでもないものを呼び出すまで、あと大体一時間くらい。
◆ ◆ ◆
「ちょっとダイキ!進みすぎよ!今の私たちのレベルじゃ無理だわ!」
「んなことねぇって。さっきのゴブリンどもだって俺の華麗なる一撃でぶっ殺したじゃねえか!なあテイル!」
「何度も攻撃を受けつつの無策の特攻に見えたけど…まあ、結果オーライだったし、僕はいいと思うよ」
「アンタはいっつもアテになんないのよ!」
「はぁ…大丈夫ですかね…」
大丈夫じゃないのはいつものことだけど。
私たちは、夏休みに入ってから一緒に『EIL』のゲームを始めた四人組です。
いっつも押しの強い、おバカなところもある…というかおバカでしかないダイキくんと、ツンツンしててダイキくんと言い争いになることが多いクララちゃん。学校の成績が良くてグループのまとめ役の、銀縁メガネのよく似合うテイルくんと、不肖わたくしこと、リリィの四人です。幼稚園から高校一年生の今に至るまで、学校もクラスもずぅっと同じな筋金入りの幼馴染。
一度くらい別れたっていいはずなのに、住んでいるところが都会と田舎の真ん中の中途半端なところで、学校はいっぱいあるくせに子供の数が少なかったから、小学校も中学校もクラスが一つしかなくて、そのせいでいつも一緒。というか高校に入ってクラスも三つに増えたのにまた四人一緒だったので、もう何かの呪いの類でしょう。
そんな腐れ縁は続きに続いてもう既に高校一年生の夏。私たちはまたダイキくんの提案のもと、新しいことを始めることになったのです。それがこの『EIL』。最初はあまり期待していなかったのですが、このゲーム、彼が選んだにしてはとても楽しいものでした。
最初の方は私も慣れない『げえむ』とやらに戸惑っていたのですが、意外にゲームに詳しかったテイルくんが丁寧に教えてくれて、私も早くな馴染むことができて、楽しくやっていたのです。
しかし、そんな時間も束の間、いつも通りダイキくんが調子に乗り始めて、もっと先に行ってみようと言い出しまして、今はいつも戦っていたところより先の森の中に入っています。
出てくるモンスターはとても強力で、私も回復魔法や支援魔法を精一杯かけ続けているけれど、回復アイテムに頼らなければいけない状況が続いていて、なかなか大変です。
そして何より心配なのは、ダイキくんが調子に乗り始めると必ず何か大変なことが起こるということです。
いつもクララちゃんが強い口調で諌めようとするのですが、調子に乗って楽観的になった彼は歯止めが効きません。テイルくんはいっつも最後にはGOサインを出すので、クララちゃんの言う通りアテになりませんし…というか彼、いっつもダイキくんが調子に乗って失敗するのを面白がってるんですよね。私たちも被害を被ることがあるのに、それでも笑って楽しんでます。…あれですね、腹黒くそメガネってやつです。
クララちゃんも口調の割に押しが弱いんですよね…まあ、彼女がダイキくんを思っているのは薄々わかるのですが。…クララちゃん自身が気付いているかはともかくとして。…ほら、今だってダイキくんの横顔チラチラ眺めながら歩いたりしてますし。思春期に入りやがってから特に顕著なんですよね…見ているとイライラするので潔くくっついて欲しいのですが。
テイルもそう思いますよね?という意思を込めて彼に視線を向けてみる。
「…(ニコッ)」
…なるほど、面白いからこのままでいい、ですか。ったく、そのキザったらしい銀縁メガネを叩き割ってやりましょうか。
…とまあ、こんなふうにアイコンタクトで意思疎通ができる…というか、できるようになってしまうほどに長く続いているのが、私たちの腐れ縁です。
性格も趣味も全く違うのに、なぜか気が合ってここまで共に歩んできた…ゆ、友人たち。私も彼らのことは憎からず思っていますが。
「テイルとリリィって仲良いよな。雰囲気も似てるし(ボソボソ」
「そうよね。リリィの方はともかく、テイルは憎からず思っているようだし。…見ているとイライラするし、早く付き合ってくれないかしら(ボソボソ」
む、何か前の方で二人が小声で話し合っていやがりますね。…まあどうせ大したことではないでしょうし、気にするだけ無駄でしょう。
なんてことを話しながらいると、前方の茂みがまたもやガサガサ言い出しました。
「っと、来るよ」
「おーっし、また俺の剣の錆にしてくれるぜ!」
「ダイキくんはテイルくんが敵をしっかり引きつけてからなら突っ込んでいいですよ」
「あら、意外と条件が優しいのね」
「それ以上言っても多分頭に入らねえでしょうし」
「お前俺のこと馬鹿にしすぎじゃね!?」
現れたのは、6体のゴブリン。普通のゴブリン3体に、メイジが2体とアサシンが一体ですか…
…全く、さっきの4体でもきつかったというのに…支援のしがいがありますね!
「静謐なる水の神の名の下に、彼らの行く末を守りたまえ…『アクア・バイタリティエンチャント』!」
「ヘイト取るね…『アイアンウィル』!」
「ふん…苛烈なる火の神の名の下に、敵を穿ち、我らが道を妨げるものを滅ぼしたまえ!『バーニング・ジャベリン』!」
「おっしゃ行くぜぇ!『スピンスラッシュ』!」
水の加護がパーティーメンバーに行き届いて、彼らの体を優しく包むとともに、ステータスを見てVITがしっかり上昇しているのを確認する。テイル君が手に持ったロングソードで大盾を打ち鳴らして敵の注意を引き、クララちゃんが先手を取って炎の槍を敵のど真ん中に打ち込んで、爆炎が上がる。その爆炎が晴れたあたりでダイキ君が突っ込んで、敵に切り掛かる。
私は全体の状況を見て、後方からしっかり支援する役目だ。突っ込みすぎたダイキ君のHPが無くなりそうになったら回復魔法を、テイル君の支援魔法が途切れそうになったら追加の魔法発動を、クララちゃんのMPが切れそうになったらポーションを渡して回復を促す。時にはこちらを先の処理しようと食い込んできたゴブリンを錫杖で迎撃し、時間稼ぎ。
そんな風に常に全体を見ていた私だからこそ、その異変に気付いたのだ。
ゴブリンも4体片付いて、こちらも結構な被害が出ているけれどなんとか倒せそうだとなった頃。遠くの方から、何か地響きのような音と共に、ナニかの、咆哮が聞こえた気がした。
「……?」
「どうしたの、リリィ?」
「いや、何か聞こえたような気がしまして…」
「後にしなさい。今は戦闘中よ」
「そうですね…いや、やっぱり何か来ます!」
次の瞬間、私たちが相対していたゴブリンたちが、吹き飛ばされて遠くの地面に転がって、ポリゴンの粒子になって消え去った。
「グゥゥゥゥ…」
攻撃の出所は、木々の中。
何かとてつもなく大きな影が、こちらへ向かって歩いてきていた。…まさか、ボスモンスター?…いや、ここのボスモンスターは確かに徘徊型でいつ出くわすかわからないけど、ここ『賢者の森』のボスモンスターは確か大きな蛇のはず。こんな、5mほどの高さもありそうな……巨大な人型では、決してない。
「うわぁ!?なんだコイツ!?」
「…まずいですね、逃げたほうがいいかもしれません」
「肌は緑色だから…まさかゴブリンなの!?」
「…まさか、ここら一帯のお仕置きモンスターか?…でも、僕たちはまだゴブリンをそれほど倒していないはず…!」
「ゴァァアァァ!!」
咆哮に、体がビリビリと震える。
…無理だ、勝てない。直接ぶつけられる殺気は現実世界では感じられないほど恐ろしいものだし、大型のゴブリンが手に持っている大きな棍棒は撫でるだけでちっぽけな人間など叩き潰せてしまえそうなほど大きくて。腰には悪趣味な装飾が施されていて、何かの骨で作られた冠のようなものが頭の上に載っている。
吠えたきり、大きなゴブリンは、血走った目でじっとこちらを見据えて動かない。私も油断せずに相手のことをじっと眺めていると、そのモンスターの頭の上に大きな文字が出てきた。
〈ゴブリン将軍〉 Lv.??
?????/?????
残出現時間 00:28:44
…はぁ、そうですか。
「全員退避しますよ!」
「おうよ!」
「仕方ない…」
「逃げ…キャッ!?」
「クララ!?」
パーティー内で一番足AGIの遅いクララが、ゴブリンジェネラルの振り切った大きな棍棒の風圧によろめき、転んだ。それにダイキが振り返り、足を止めてしまう。
「おい、クララ、大丈夫か!?」
「…私のことはいいから…」
「お前を置いていけるわけねえだろうが!」
「……ダイキ………」
おいこらてめえらこんなところで夫婦漫才なんてやってんじゃねえですよ。
…しかし、クララを置いていくことはできない。彼女には色々と恩があるものだし…私の毒舌を気にせずに接してくれること、とか。…まあ、友人だし。見捨てるのは寝覚めが悪い!
「チッ、仕方ねえですから戦いますよ!」
「…リリィって結構ツンデレだよね…ある意味クララより」
「あ゙!?寝ぼけたこと言ってねえでタンクのあなたが矢面に立つんですよ!ホラ!」
「はいはい」
これは全員死んだなと、確信して。
全く、これもダイキくんが調子に乗ったせいで起こったいつものとばっちりだ。そんな風に悪態をつきながらも、少し楽しいなんて思っている自分がいるのも自覚して、少し苦笑して、せめてもの抵抗にと魔法を唱えようと錫杖を掲げた。
口を開いて祝詞を紡ごうとしたところで…視界の端に、紫電を纏った銀色の何かが見えた。
「アーツ…『爆雷ハンマー』!!!」
◆ ◆ ◆
「よっと」
「グギッ…」
「よーし…あ、レベル上がった」
断末魔一つ残して消え去ったゴブリンのドロップアイテムを拾いながら、もうかれこれ一時間くらいはこうしてゴブリンを倒しまくっているな、なんて考える。
それなのに未だにエリアボスは出てこないから、本当にいるのかすら疑わしくなってきた。
というかそういえば、私ここのボスモンスターがどんなモンスターなのか全く知らないや。ネットでちょこっと調べた徘徊型っていう情報しかない。…ボスなら多分わかりやすい見た目してるだろうし、もし今日見つからなかったら一旦ログアウトして詳しい情報を調べてこよう。
そんな感じで、私は今、休憩がてらフィニーちゃんから貰ったお弁当を膝の上に広げて、箸を持ってぱくついていた。昨日と同じウルフステーキ。アルミラージの肉の照り焼きとかもあったんだけれど、STRが上がるのはウルフステーキだけだったから結局これを買ったのだ。
お弁当はなんだか魔法的な処置が施されているらしく、買ってから時間が経った今でも暖かくて美味しいままだった。
ちなみに一時間ゴブリンを追いかけ回した結果、レベルは10まで上がった。結構レベルが上がるペースが早いな…まあレベルに見合わないSTRでぶっ叩いてるだけなんだけども。
ステータスポイントを振り分けて、ざっとこんな感じになった。ついでに余りまくってたスキルポイントで良さそうなスキルも取ってみたりしたから、だいぶ様変わりしている。
PN:Nina
Lv.10
《ステータス》STP:0
HP 178/190
MP 58/190
STM 78/100
STR 51(+4)(+16(+4))
DEX 18
AGI 13
TEC 13
INT 10
VIT 10(+4)
LUC 10
《スキル》 SKP:3
鎚術 Lv.4
逆境 Lv.2
攻撃力補正. Lv.3
闘気 Lv.5
重武器片手持ち Lv.4
採集 Lv.1
脚技 Lv.1
投擲 Lv.1
連撃強化 Lv.2
雷魔法 Lv.1
圧倒的STR偏重…
暇だったからゴブリンの倒し方も色々工夫したりしたものだ。
2本のメイスでぶっ叩くのはもちろん、蹴っ飛ばしてみたり、攻撃が途切れさせないように叩き続けたり、メイスぶん投げたり。いやはやしかし、闘気スキルは万能だね。ほとんどどんなことにも使える。MPの消費がきついってのはあるけども。
雷魔法は、いつの間にか取得可能スキル欄に生えてきていたから取ってみたものだ。なんで生えてたのかは…うん、多分だけど竜化で暴走した時に雷ビリビリ纏ってたことが原因かもしれない。あれは完全に雷神様の力と雷龍の特性のおかげだけど、取れるのなら取ってしまおうと思ってのことだ。で、使ってみた感じだけれども、まあ…殴ったほうが早いかなぁ。MPは闘気のスキルで結構消費するし、雷魔法でMPを消費しすぎるのもアレだから、使うのならばどうしても届かない敵への遠距離攻撃か、インファイト中の牽制とか…
ちなみに魔法系のスキルに関しては、信仰している主神の属性が一番威力とコスパがいいが、別に他の属性の魔法も使えないことはない、という感じの設定らしい。私に取っては雷魔法が一番使いやすいってことだね。
後のスキルは…脚技とか投擲は戦闘の時の補助にいいかなと思って取ったのもだ。投擲の威力と飛距離はSTR依存なんだけど、コントロールとか威力の微調整とかはDEXやTEC依存だから、当たるかは遠距離だと半々みたいな感じだ。武器がでかいから結構当たるけど。
脚技はいい感じだと思う。両手が塞がっていても牽制とかに使えるし、選択肢が増えたことによって攻撃と攻撃の間隔がさらに短くなった。すごく自由に戦えるようになって楽しかった。
連撃強化は単純なメイスでの戦闘能力の強化だねー。効果としては、発動した後最初の攻撃を起点として、次の攻撃までに3秒以上間隔を開けないで攻撃すると、ダメージが1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、って言う風になっていくスキルで、最大で加算分は5回まで、リキャストは2分ってところです。
というか、これだけスキルをとってもまだ余っているスキルポイントは一体どこで使うんだろうか…っと、
「……悲鳴…と咆哮?」
方向は、私から見て東の方向。
ボスモンスターでも出たのだろうか。なら一度見てみたくもあるし、もし襲われてるであろう人たちが危ないのだったら助けなくては。…あと、暇だったから行ってみたい。HPもMPも座って休んでいたから回復し切っていることだし。もし相手が強敵ならば竜化で最高火力を叩き込める。
ということで、お弁当を急いで掻き込み、それほど早いわけでもない足で悲鳴の方向へと駆けてみる。
「…お?……おおお?」
でかい。
緑色の肌の巨体、腰につけた腰布にはたくさんの頭蓋骨がアクセサリーのようにぶら下げられていて…なんというか、ゴブリン共の親玉みたいな雰囲気だ。
右手に持つは巨大な棍棒。…なるほど、いい趣味してるじゃない。
ボスなのかはわからないが、プレイヤーだろう四人組がそれから逃げていて、うちの一人が転んでいた。彼らの雰囲気からしてどうやらエリアボスではなさそうである。
とにかくまあ、助太刀だ。初撃に全てを込めるために、持ちうるスキルを全て発動してしまおう。…それが一番気持ちいい!
「よし…《竜化》!」
ドクンと心臓が一際大きく鼓動して、全身が熱くなり、胸の辺りにある暖かさが増して、力が流れ込んでくる。同時にメキメキという音と共に体が作り替えられていく。それは決して不快な感覚でもなく、むしろ心地いものだ。鱗が半身を覆い、角が長く伸びて、背中から青色の翼が生えてくる。銀髪も同調するように長く伸びていって、体が一回り大きくなった。
私が思う竜化のいいところの一つは、STRパワー他いろいろなステータスが軒並み上がるだけじゃなくて、体が一回り大きくなって身長が伸びることだ。…一時的なものだけどね。
体が音を立てて作り替えられていくのと同時に、視界端のHPバーとMPバーがゴリゴリ削られていって……暴走の瀬戸際なのか、意識が若干朦朧としてくる。…でも、ここで意識を失うわけにはいかないのでね…っ!
なんとか耐え切って、竜化の代償を払い終わった頃、私の姿は半人半龍のそれになっていた。
竜化のせいでHPはミリしか残っていないけれど、MPはポーションで回復できる。MPを全て回復して…その分を、闘気を練ることに使う。残りのMPは大体二割くらい。
「よーっし…」
地面を蹴って、走り出す。
竜化で高くなったAGIのスキルで持って、あっという間に巨大ゴブリンの側面に回り込んだ。
相手の意識は完全に彼の目の前の四人組に向けられていて、こちらのことなど露ほども気にしていないようだった。
助走をつけて、巨大ゴブリンに向けて大きく踏み込んで、翼をはためかせつつ跳躍した。
ギリギリと2本のメイスを限界まで振り絞り、力を貯める。
「《神雷纏い》、《重撃》…アーツ…《爆雷ハンマー》!!」
私の最大限まで強化されたSTRパワーで振るわれたメイスが、意識をこちらに向けていなかった巨大ゴブリンの側頭部に勢いよく叩き込まれていく。
ドゴォンという、雷が落ちたと錯覚するかのような音と共に、《CRITICAL!》の文字がちらりと見えて。直後に閃光が迸り、巨大ゴブリンは嘘みたいに吹き飛ばされていった。
・tips
ゴブリン将軍にぶち込んだ時のSTRの値
51×1.06×(1.2×1.06)×(4×1.06)×(1.3×1.06)×(1.1×1.06)=468.46....≒469
(左から順に、素のSTR値、逆境、竜化、会員証、お弁当の効果です)
…え、そんな行く?
竜化したらオワタ式になるとはいえ強すぎでは。
・高一四人組
PN:Daiki 本名:浅村 大輝
Lv.6
Race:人間
Job:戦士(片手剣使い)
Faith:命と試練の神
HP 150/150
MP 150/150
STM 100/100
STR 22
DEX 18
AGI 15
TEC 10
INT 10
VIT 15
LUC 15
作者「典型的陽キャ阿呆キャラ。意外と学校の成績が良かったりするため、マジで謎(byリリィ)。ちなみにもうゲーム内で命神覚醒(人間種族の竜化みたいなやつ)ができる。才能マン。自分のことしか考えていないように見えて、実は他人のことをよくみているタイプ。でも自分に向けられている恋愛感情には気づかない。爆発しろ(ドーン」
PN:Clara 本名:倉良 美来
Lv.6
Race:エルフ
Job:黒魔術師
Faith:火と創造の神
HP 150/150
MP 150/150
STM 100/100
STR 10
DEX 15
AGI 10
TEC 15
INT 25
VIT 10
LUC 20
作者「典型的ツンデレ幼馴染キャラ。ツンツンしているように見えて、実は思いやりのあるタイプ。ダイキくんのことが好きらしい(リリィ分析)。てめえら爆発s(((殴」
PN:Tale 本名:柏尾 達也
Lv.6
Race:獣人(豹)
Job:重戦士(大剣使い)
Faith:大地と豊穣の神
HP 150/150
MP 150/150
STM 100/100
STR 20
DEX 15
AGI 12
TEC 15
INT 10
VIT 23
LUC 10
作者「典型的糸目腹黒クソメガネキャラ。銀縁メガネは作者はかっこいいと思うよ()。腹に一物抱えているように見えて、その実腹に一物抱えてる生粋の腹黒クソメガネ。でもリリィのことが気になってるらしい。…え?なになに?あの蔑んだ目がいい?…ドMがよぉ(わかる)」
PN:Lily 本名:山村 梨鈴
Lv.6
Race:魔族
Job:白魔術師
Faith:水と審判の神
HP 150/150
MP 150/150
STM 100/100
STR 10
DEX 20
AGI 15
TEC 15
INT 20
VIT 10
LUC 15
作者「典型的毒舌敬語貧乳キャラ。作者は最初この子をただの引っ込み思案敬語キャラにしようと思ったがつまんなかったのでやめた。毒舌、敬語、ひんぬー。三つ揃えば全てに打ち勝つことのできる最強の矛になるだろう(抵抗がないから)。ゲーム内では『魔族』を選択した。魔族っぽい角とちっちゃな尻尾がとってもキュート。ちなみに誰のことも気になっていないらしい。頑張れクソメガネ。…俺は…言わせてもらうぜ……貧乳は!ステータs……アァー!!(断末魔)」
四人組のステータスに関しては適当です