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第十二鎚 welcome to スキルセンター



 …目を開けると、小綺麗なカーテンの隙間から差す微かな陽光が部屋の隅に置かれた上品な花瓶を照らしているのが目に入った。


 体を起こして、今さっきまで起こっていた少し不思議なことについて思いを馳せる。


 ゲームの中で夢をみる、というのも変な話だけれど、なかなかいいものだった。なぜこのタイミングでプレイヤー全員がこの夢を見ることになるのか、そしてこの夢を見せているのが誰なのか、この夢を私たちに見せてどうしたいのか……まぁ、色々と気になるところはあるけれども。


 この世界の一大宗教たる『白神教』の創始者……いや、夢の内容を見る限り彼女が進んで作ったわけではないのだろうけど、それでも教祖とも言える彼女がなぜこうも慕われているのか、分かった気がする。

 なんてったって、夢で、しかも音声のない映像として彼女を眺めていただけの私が好印象を抱いてしまうほどだし。

 そんな彼女が、生前は世界中を旅して色々な人を救っていたというのだから、それはもうすごい支持だったのだろう。内閣とか作ったら支持率99%とかになりそう…


 でもやっぱり、気になる点はいくつかあった。

 一つ目は、彼女が途中で白神教の運営を積極的にするようになったこと。それに伴って各地に何かよくわからない石造りの建物?のようなものも作っていたようだし。

 二つ目は、やっぱり最後のシーン。彼女は、何を思ってかこの世界の行く末を私たちプレイヤーに託したように思えた。一体何を託そうとしたのか?単にこの世界をより一層発展させてくれるように、との願いかもしれないが……いや、これはないか。少々無粋な推察になるが、それならば私たちプレイヤーにあんな意味深な夢を見せる必要はないのだから。


 となると、やはり何かしらの世界についての解明や攻略……あるいは、何か(・・)への対処や反抗。


 そもそもなぜ、私たちはこの世界に来たのだろう?


 アイクたち住人の口ぶりからするに、呼んだのはおそらく主神たち。

 呼ぶように依頼したのは、白の神か、はたまた聖女か?

 なぜ私たちでなければいけなかったのか。住人や主神たちでは対処が不可能だったためか?


 ……シルヴィエさんが漏らした、『大いなる災い』という単語も気になるし…

 …まさか、黒の神の叛逆?…いや、彼も白神と共にこの世界を治めているはずだ。そんなことはないと思いたいけど…でも、黒の神が黒幕だとしたら、白神教が創設当初は黒の神にそこまで敵対的ではなかったのに、今に近づくにつれて敵対的になった理由もわからなくもない。



「んー…情報が足りないかなぁ…」


 そういうものはいくら考えても結論に辿り着く前に堂々巡りになる。

 早とちりして間違った結論を出すのも良くないしね……


 よし、そういうことなら今日は、気を取り直して本来予定していたところに行こう。私がずっと楽しみにしていた、この街から使えるようになるとある施設。


 …そう、その名も……『スキル創造・統合センター』!





  ◆  ◆  ◆





 スキル創造・統合センター。用途は、名前の通り。


 プレイヤーたちが自分好みにスキルを創造、統合、あるいは分解するための施設。

 あとついでにスキル書みたいなのも売ってるところ。


 統合・分解に必要なポイントは、くっつけるスキルの数×1ポイントで、創造にかかるスキルポイントは原則5ポイント+スキルの強さに応じたポイント数…そう!あんなに大量に手に入ったスキルポイントはここでスキルを作ったりするために必要だったのです!


 スキル創造・統廃合センター…長いのでスキルセンターって呼ぶけど、これこそ『EIL』の醍醐味の一つだ。なんと言っても、自分で自分だけのスキルを創造することができるのだから。

 ちなみに、基本どんなスキルでも創造できるらしいんだけど、あまりに強力なスキル…例えば、『指パッチンで太陽をこの星にぶつけるスキル』とか作ると、スキルとしては獲得できるが必要なMPがよくわからないくらい膨大な桁数になって結局発動できず終いになったり、そもそも取得に必要なスキルポイントが多すぎて取れないなんてことが起こる。


 基本これで作られるスキルは通常スキルよりも強力なものが多いらしいんだけど、色々考えて作らないと貴重なスキルポイントをドブに捨てることになる、というわけだね。


 そうならない範囲でなるべく強力で見栄えの良いようなスキルを作る、というのが大抵の人たちの考えなんだろうけど…私が作ろうとしてるのは残念ながらそういった派手なものでもなんでもないんだよね…まあ、何を作るかはお楽しみということで。


 今の私のレベルは、ゴブジェネさんに出会った時の15レベルから少し上がって19レベル。ツヴァイの街へ来る道中少し戦闘はしたし、一応エリアボスも倒してたから、これくらいにまで上がっている。

 そんな訳で、現在所持しているスキルポイントは17ポイントだから、スキルの創造が何回か…具体的には2回くらいかな?できるわけなんだけど…それをするつもりはない。

 作る予定なのは一個のスキルだけだ。


 残りのスキルポイントは、もっと別のことに使おうと思ってるんだよね。






 ということで、私は今、スキルセンター…ではなく、ツヴァイの街のギルドに来ています。

 え?脈絡がない?いーから見てなさいよ。


「おねーさん、ギルドの修練場貸してくださいな!」

「かしこまりました。一時間で500Gになります」

「はーい!あと、武器をいくつか借りたいんですけどいいですか?」

「では、こちらのリストから選択してください。一つにつき200G、破損した場合には追加で4000Gいただきます」

「わかりました。じゃあこの大斧と大剣とハルバードで」


 そう告げて、お金を支払ってから修練場に向かった。

 頼んでおいた武器たちはすでに修練場の壁に立てかけてあった。なんとも用意の早いことで。


 まずは、大斧を手に持って振ってみる。…うん、動きがだいぶぎこちないね。スキルがないとこんなもんか。

 まぁとりあえず、これをしばらくの間振り回していよう。ちょうどそこに訓練用の人形もあることだし。ちなみに、この訓練用の人形は壊れてもなぜか短時間で復活する。これもギルド側の何かしらの魔法だろうか。随分と都合がいい魔法もあったものだね。


「っと、そろそろ…お、きたきた」


 そうして生えてきたスキル…『大斧術 Lv.1』を取得した。


 おんなじようにして、大剣とかハルバードとかをブンブン振ってみる。

 そうすれば、それぞれ『大剣術 Lv.1』と『斧槍術 Lv.1』がちゃんと生えてきた。これも取得して…ついでに、すでに持っている『鎚術 Lv.1』を再度取得して仕舞えば準備は完了である。

 余談だが、『EIL』では一度取得したスキルを再度取ることができる。私のステータス欄には今『鎚術 Lv.6』があるから、本当ならスキルレベル1の同じスキルを再度取るのは本来意味がないのだが、今回はちょっと別な目的があるから…ね?



 次に向かうは、待ちに待ったスキルセンター。

 入り口から少し並んでから、ようやっと受付にたどり着くことができた。


「一部屋お願いしまーす」

「かしこまりました。1000Gになります」

「はーい」


 ギルドでやったのと似たようなやり取りをして、向かったのは一つの小さな部屋。

 四方5メートルほどのその部屋に置かれているのは台座に置かれた宝玉と、これまた小さな椅子一つ。なんとも風情のない…というか、半分ネカフェみたいな感じのするところだけれど、一応ここがプレイヤーたちがスキルをいじるための部屋である。


 とりあえず宝玉に手を当ててみれば、目の前にスキルを弄るためのウィンドウが現れた。

 ふむふむ。色々項目があるけど…


「まずは、スキル統合っと」


 タップしてみると、独特な効果音と共に新しいウィンドウが展開した。


《統合するスキルを選択してください(最大5個)》


 ふむふむ。聞いていた通りの感じだね。…ということで、そこの統合するスキルに入れるのは、さっきギルドで取ったばかりの四つのスキル…『大斧術』『大剣術』『斧槍術』『鎚術』の四つだ。


 選択欄にドラッグしてみれば、統合可能という文字と共に、統合結果の予測が表示された。


《『大斧術』+『大剣術』+『斧槍術』+『鎚術』=『総合重武器術』 必要スキルポイント:4》


 うん、間違いない。

 決定ボタンを押せば、私の胸元から四つの光る球が出ていって、その場で回転しながら合わさって…一際大きな光球になって再び私の胸に吸い込まれていった。


 ステータス欄を見れば、予定通り『総合重武器術 Lv.1』の文字があった。

 このスキル、重武器系の基本操作スキル四つを合わせることで取得できる、重武器全般の扱いに補正がかかるスキルなのだ。

 当然取得には合計で8ポイントのスキルポイントがかかったけど、これでも私が将来的に扱いたい全ての重武器の基本操作スキルを取るよりも安上がりなのだ。

 もちろん、スキル自体のレベル上昇の速度は遅いし、補正率も少し低めだ。しかし、このスキルさえあれば使用している重武器のアーツがこのスキルのレベル分まで使えるというのだから、十分すぎる。


 しかもこのスキルのいいところは、他の重武器基本操作スキル…例えば今私のステータス欄にある『鎚術 Lv.6』と効果が重複して得られるという点にある。

 つまりは、今よりもハンマーやメイス系の重武器の扱いに補正がかかり、しかもそれらを扱っていればこの『総合重武器術』にも経験値が入るので、必然他の重武器を扱うときにある程度扱える状態でスタートする、なんて一石二鳥の状態にあるわけで…



 話が長くなってしまったけれど、つまりは将来的にいろんな重武器がある程度のレベルで扱えるようになって、かつ私のハンマーの扱いがちょっと向上するって話だ。うん。



 ……難しい話は置いておいて、さっさとスキルの創造に入ろう!!



 と言っても、作るスキルはこれまた地味めなものなんだけども。


 ウィンドウのスキル創造のボタンをタップしてみれば、新しくウィンドウが出てきて…

 そこには簡潔に、こう書かれていた。



《創りたいスキルをイメージしてください》



 …あ、そうですか。

 イメージ、大事なんですね…がんばります。



 ぐぬぬぬぬ…





 それからしばらくは、イメージして、出てきたスキルの性能と私自身の想像との間で齟齬があるからやり直したり、修正したりして…結構な時間をかけて、私はやっとこさ目的のスキルを編み出した。



《重心操作 Lv.1》取得必要SKP:8

 自身の身体と装備品全体の重心の位置をMPを消費してある程度自在に変更できる



 そうそう、こんな感じのスキル。

 火力アップ系統のスキルは既存のもので結構足りてるし、これ以上増やそうとするよりも今ある一つ一つをしっかり育てたほうがいいと判断して、火力アップ以外の毛色のスキルを取ろうと熟考した結果、思いついたスキルだ。


 選択肢としては、相手への妨害系のスキルか、自分の動作の補助のスキルかっていう選択肢だったんだけど、結局『自分の重心位置を操る』なんていう動作補助系の地味なスキルに落ち着いてしまった。


 しかし、地味だからといって、弱いわけでは決してないということは言わせてもらいたい。


 というのも、私が扱うのが重武器だからだ。

 この先重武器を扱い続けるとするならば、いずれ私の体重よりも重い武器を振り回すことが予想されるわけで…その中で、私の動きが私主体ではなく重すぎる武器主体になる可能性があるのだ。

 このスキルは、それを抑制することもできるし…はたまた、逆にその重心のズレを極端にさせて攻撃の威力を上昇させることができたり、あるいは緊急の回避機動、不規則で予測のしずらい動きをしたりすることができるようになるだろう。


 派手さは決してないが、私が回避に攻撃に防御に使える万能スキル……になる予定だ。


 取得に必要なスキルポイントも8だし、これならとってもいいと思える。

 ということで、早速ポチった。



 すると、宝玉から何か光線のようなものが出て視界を埋め尽くし……次に目を開けてみると、部屋はすっかり元通りになっていた。…自分で創造したスキルを取るときは、こんな演出が起きるんだ。


 とってみたはいいけど、結構博打だったかなぁ…いや、ポジティブに考えよう。イメージはなるたけ鮮明になるようにしたから、とても使いやすいものになってるはずだ………!!(願望)





 そんなわけで、私のスキルセンターでの用事は終わった。


 時間もちょうどいい感じだし、露店で軽く軽食でも買ってから、スキルを慣らすために街の外にでも繰り出してみようかな、なんて考えて、受付の人にお礼を言ってからスキルセンターを出た。


 少し暗いところに長くいたから、純白の街並みと太陽の輝かしい光が目を焼いた。




 スキルセンターを出た私は、街の外を目指して大通りを歩いていた。

 ちなみに、スキルセンターはツヴァイの街の門から少し離れた少々不便な位置にある。

 そのため、街の外に出るには結構歩かなければいけないんだけれど…


「んー、こっちの路地とか通った方が早いのかな…?」


 時短をしたいという純粋な思いと、少しの好奇心。あとはちょっとした冒険心なんかで、私は門の方向に近そうな裏路地に足を踏み入れた。…踏み入れて、しまった。



 それが、私を取り巻くことになる激動の始まりだとは知らずに。



「あれは…?」



 視界の隅を、なんだか黒色のモヤがよぎった気がして。

 つられて追いかけてみれば、入り組んだところに入ってきてしまった。



「…?気のせいだったのかな…」



 純白の街の裏側の景色は、やっぱり真っ白が多かったけど、所々に汚れが溜まっているようだった。でも、先ほど見かけてようなモヤはどこにもなくて。

 流石になんだか薄寒いものを感じ始めて引き返そうとして……直感が、その引き返そうとする私の足を強引に止めた。

 ふむ……もう少し、進んでみようか。



 入り組んだ路地を歩き回ってみて——そして、見つけた。


「——っ!?」



 地面に倒れ伏した、小さな少女の姿を。


 目を凝らしてみれば、うっすらと黒いモヤのようなものを纏っているようにも見えて。

 どう見ても危ない状態のその少女へ、私は慌てて駆け寄ったのだった。

・ステータス


PN:Nina

Lv.19

Race:龍人/人間

Job:戦士(鈍器使い)

Faith:雷と契約の神

27000G


《ステータス》STP:0

HP 280/280

MP 280/280

STM 100/100

STR(筋力) 75(+5)(+24(+6))(+20(+2))

DEX(器用) 25(+5)

AGI(敏捷) 17(+5)

TEC (技量) 18(+5)

INT(知力) 15

VIT(耐久) 15(+5)(+4)

LUC(幸運) 10


*()内の数字はスキル或いは装備による強化分

*()内の()はその強化に掛かる強化分(主に筋力値補正のスキル)


《スキル》 SKP:0

鎚術 Lv.7

逆境 Lv.3

筋力値補正. Lv.3

闘気 Lv.8

重武器片手持ち Lv.7

採集 Lv.3

脚技 Lv.3

投擲 Lv.2

連撃強化 Lv.3

雷魔法 Lv.3

料理 Lv.2

総合重武器術 Lv.1


《特殊スキル》

雷神の加護

迅雷化


《創造スキル》

重心操作 Lv.1


《固有スキル》

竜化 Lv.3(unlocked:雷龍)


《アーツ》

・重撃

・三連撃

・大回転

・インパクト・リフレクション

・パイルバンカー

・鎧崩し

・リモート・インパクト

・豪脚

・震脚

・縮地


《魔法》

・サンダー

・エレクトロバレット

・スタンザップ


《奥義》

打ち砕く雷鎚(ミョルニル)


《装備》

頭:なし

胴:始まりの胸当て(VIT+2)

腰:始まりのスカート(VIT+1)

足:始まりのブーツ(VIT+1)

右手:連星鎚 マグニ(ATK:30)

左手:連星鎚 スルーズ(ATK:30)

アクセサリー1:真・重武器愛好会会員証

アクセサリー2:なし

アクセサリー3:なし

アクセサリー4:なし

アクセサリー5:なし




・初代聖女ちゃんと白神様の関係

 暇をもてあましてた白神が適当な人間を選んで暇つぶしに話しかけてみたのが最初。しかし、話しかけたのがやばーカリスマとやべー予知夢を見るやべー女だったのが運の尽き。

 そんなこんなで、関わってから少ししてから予知夢を見た聖女ちゃんに『大いなる災い』についての情報を聞かされて、聖女ちゃんが死んでから少しして本当に現れたそれに対して今は精一杯応戦中。ちなみに最終的には大いなる災いニキに世界が滅ぼされることまで予知した聖女ちゃんが、白神さまにこの世界でそれらに対抗できる力を創るよう、また、外の世界からそれに対抗できる人材を呼ぶように白神様に持ちかけていた。

 聖女ちゃんポンコツに見えて実はやる女。だてに聖女なんてやってない。



・黒いもや

 なんだろね。

 ただの汚れ?教会の腐敗の証ともとれたりするし、もしかしたら黒神の呪いかも?誰かにつけられたんじゃないかなー。

 いや、ほんと、なんだろねー。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 途中でゴブジェネぶっ倒したことにしてて草。 キミたちの因縁はまだ断てて無いでショ。
[気になる点] 最後のステータスの欄に今話の前半で取得した総合重武器術 Lv.1画ありませんよー
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