表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

95/227

第095話 幸運


「これで問題事は何とかなりそう?」

「実はもう1つあります……」


 まだあるらしい。


「何?」

「評判になったのは貴族や商人だけじゃないんですよ。一般の人達もです。ですので、移住したいという要望がものすごいらしいんです」

「そうなの?」

「はい。こちらは主にダリルさんが担当していますが、相当な数の要望があるみたいですね」


 マジか……


「リンゴがあるとはいえ、辺境の開拓村だよ?」

「要望しているのは主にその開拓村の住民です。要は別の開拓村で苦労している人達がリンゴ村に移住したいと言っているらしいんですよ」

「あー……なるほど」


 便乗したいんだ……

 気持ちはわからないでもない気がする。


「いかがしますか?」


 いかがって言われてもねー。


「どう思う?」

「反対です。ダリルさんも反対していますし、村の人達もでしょう」

「だろうね。俺も反対だもん」


 良いことがない。

 軋轢が生まれるだろうし、リンゴはもちろん、スーパー肥料、農具が外に漏れる可能性も出てくる。

 単純に人手が増えるとは思うが、自分達で頑張ってきた開拓村を捨てる人達がはたして、本当に働いてくれるのだろうか?


「では、断るということでいいですか?」

「そうだね。いつかは移住民を受け入れることもあるかもしれないけど、人を選びたい」

「わかりました。では、そのように……それで相談というかお願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」


 ん?


「何?」

「門のことです」


 あー……


「確かにそういう状況なら門の整備もいるね」

「はい。後回しにしていましたが、よろしければ明日にでもお願いしたいのです。それと門だけでなく、できたら周りの結界もお願いしたいです」

「結界はモニカがやってくれているんじゃないの?」


 そのおかげで村に獣や魔物が入ってこないはずだ。

 というか、俺は魔物どころか獣も見たことがない。


「本当に申し訳ございません……私程度の結界では弱い魔物や獣は防げますが、そこそこかじった魔法使いの前には無力です……貴族や商人が間者や偵察員を送る可能性もありますし、できたらタツヤ様達の結界に代えてもらった方がよろしいかと」


 あっ……マズい。

 モニカがものすごく気にしていることだった。


「モニカはすごく役立ってるし、必要不可欠だよ」

「ありがとうございます……」


 暗い……

 魔法の話題になると、以前のモニカに戻るな……


「うん……じゃあ、明日、村に行って、門と結界の方をどうにかするよ」

「よろしくお願いします……」


 本当に暗い……

 心なしか猫背に戻っている気がする。


「……何か飲む?」

「ストゼロを……」

「あ、はい……」


 冷蔵庫に行き、ストゼロを手に取ると、モニカに持っていく。

 すると、モニカはプルタブを開け、一気に飲みだした。


「おー……」

「すごいにゃー……」


 アルコール度数が高いうえに炭酸の酎ハイを……


「上がりましたー……って、モニカさん?」


 俺とミリアムが感嘆していると、ルリがお風呂からが上がってきて、ストゼロをイッキ飲みしているモニカを呆然と見る。

 そして、モニカはストゼロを一気に飲み干した。


「ふぅ……調べ物を再開します」


 モニカは立ち上がると、平然とパソコンの方に向かう。


「な、何かあったんですか?」


 ルリがちょっと引きながら聞いてきた。


「いや、ちょっとね……明日、村の門と結界を整備することになったよ」

「わ、わかりました。あ、お風呂、どうぞ」

「うん」


 俺はお風呂に入ると、その後はいつものように過ごして就寝した。


 翌日、俺達はリンゴ村に行くと、モニカと合流し、門に行き、3メートルくらいの壁を作った。

 門自体は木製の普通の門にしようということでこれは村の人達が作ってくれるらしい。

 そして、村を囲っている結界をルリに教えてもらいながらかけ直していった。


「こんなものかなー?」


 結界を張り終えると、汗をぬぐう。


「よろしいかと思います。上級悪魔が来ない限り、村には入れません」


 ルリが頷きながら答えた。


「さすがにそこまでの敵は来ないだろうね。モニカ、王都にはいつ出発するの?」

「準備はできておりますので可能ならばすぐにでも」


 もう準備はできているか。

 本当に有能な子だ。


「ミリアム、行ける?」


 ルリが抱えているミリアムを見る。


「行けるにゃ。どうせ夕方には帰ってくるんだから準備なんかいらないにゃ。まあ、そもそも猫に準備なんかないけど」


 そりゃそうだ。


「じゃあ、悪いけど、モニカをよろしくね」

「任せるにゃ」


 ミリアムが頷いたのでルリからミリアムを受け取ると、モニカに渡した。


「気を付けてね」

「はい。では、行って参ります」


 ミリアムを抱えたモニカは軽く頭を下げると、門の方に行く。


「俺達は家で待ってようか」

「そうですね。馬車とはいえ、疲れるでしょうし、いつでもお風呂や夕食が食べられるように準備しておきます」


 ルリも気遣いができる本当にいい子だ。

 俺の最大の幸運は人に恵まれたことだろうな。


「それがいいね」


 俺とルリは家で2人を待つことにし、戻ることにした。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

【次にくるライトノベル大賞2025 エントリー】
https://x.gd/OSPb9
― 新着の感想 ―
[一言] ほんと、ルリが一番の癒やし
[一言] 更新ありがとうございます!
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] 私ではこれ以上は力及ばず…。 なんとも、掛けるべき言葉が見当たらない。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ