第094話 癒しと誘惑の悪魔と思ってる
家に帰ると、話していた通りにコタツでアイスを食べ、今後のことを話し合うことにした。
「悪魔教団のことはとりあえず、置いておくとして、仕事はどうする?」
ユウセイ君がスマホを見ながら聞いてくる。
「そうだねー。教団は情報が入ったらまた相談しよう。他に仕事って何かある?」
「いつもの仕事かなー? 危険度の低いのが少しある程度で稼げるのはあまりないな」
危険度が低いと言っても10万円になるから十分だ。
「あるやつでいいんじゃない?」
「それでいいか……」
「キョウカはどう思う?」
ミリアムの肉球を笑顔で触っているキョウカにも聞く。
「タツヤさんにお任せします。私はバイトもありませんし、特に用事もありませんからね。仕事がなくてもどっちみち、ここに来るし」
え……?
「来るの?」
「お邪魔かな? 確かにモニカさんがいるし、邪魔か……」
あ、人斬りキョウカちゃんだ。
「邪魔じゃないし、来てもいいけど、何もないからつまんないよ?」
「そんなことない。ねー? ミリアムちゃん?」
「にゃー」
「うへへ、可愛い!」
あ、戻った。
「まあ、いいんだけどさ……ユウセイ君、月曜は?」
キョウカは好きにさせておこう。
というか、目に入るところに置いておかないと逆に不安だ。
多分、それが正解。
「俺は大丈夫」
「じゃあ、そうしようか。キョウカもいい?」
「うへへ、ぷにぷにしてるー」
キョウカはずっとミリアムの肉球を触っている。
「聞いてる?」
「大丈夫でーす」
ホントかな……
「じゃあ、放課後にいつものファミレスね。車で迎えに行くから」
「わかった」
「お願いします」
俺達は次の仕事の予定を決めると、他愛のない話をして過ごした。
夕方になり、2人が帰ると、入れ替わるようにモニカが来たのでいつものように4人で夕食を食べる。
そして、夕食を食べ終えると、モニカがお風呂に入り、次にルリがお風呂に入りにリビングを出た。
ミリアムはコタツの中だし、リビングに俺とモニカの2人きりになったのでパソコンの前で何かを調べているモニカを見る。
「モニカ、電話でキョウカと何の話をしたの? 今日は普通に話してたけど」
昨日は目すら合わせなかったのに今日は一転して普通だった。
「内容は言えませんけど、キョウカさんとちゃんと自己紹介なんかをしたんですよ」
その内容が気になるんだが、さすがに聞いたらダメか。
「仲悪いの?」
「いいえ。ちゃんと奥様をお支えしますと言いましたので問題ありません。あの子はわかりやすいですから」
そっかー……
「キョウカが奥様になっちゃった」
設定だけど、こっちの世界ではとても口には出せんな。
「いい子だと思いますよ。たまに目つきが鋭くなって、殺気を込めてきますけど」
それ、いい子か?
いや、いい子なんだけど。
「お願いだからギスギスはしないでね」
「しませんよ。キョウカさんもタツヤ様が引いていることに気付いていますしね」
そりゃ誰だって気付くわ。
ユウセイ君とルリなんか、不穏な空気を察すると、気配を消しまくってるぞ。
「ユウセイ君はどう思った?」
「ユウセイさんは素晴らしい魔法使いですね。タツヤ様ほどではないですが、魔力のコントロールがお上手です。それに若者にしては落ち着いてます」
モニカとそんなに変わらないような気がするけど……
「若者って……モニカも若いじゃん」
21歳だし。
「私は根暗なだけですよ」
そうか?
いつも堂々としているじゃん。
以前はそうでもなかったけど。
「ふーん……あ、昼に言っていた問題事って?」
「そうでしたね。その話をしないといけませんでした」
モニカは立ち上がると、対面にやってきて、コタツに入る。
「何かあったの? 商売のトラブル?」
「いえ、商売の方は順調ですし、リンゴも好評のようですぐに完売しました」
すげーな……
「それは良かった」
「ええ。ですが、それにより、リンゴ村の知名度が爆発的に広がりました」
「まあ、そうだろうね」
むしろ、それを狙ってリンゴ村という安直な名前をつけたわけだし。
「なので他の町の商人や貴族の使いなどがハリアーの町に集まってきているようですね」
「そう……やはりクロード様を頼って正解だったね」
そんなのがあの村に来られても対処できない。
「はい。貴族の方はクロード様が止めてくださりますし、商人の方もハリアーの町の商人ギルドが止めてくださいます」
「独占契約を結んだから?」
「そうですね。エリク様が止めています。向こうは何としてでも守り抜くでしょう」
独占契約を結ばなかったらもっと高く売れる可能性もあったが、小さい村だと、そういう後ろ盾が必要なんだろうな。
「それは良かった」
「商人の方はどうにかするでしょうが、しかし、怖いのはクロード様よりも力を持った貴族が介入してくることです」
面倒だなー……
「どうするの?」
「王都の貴族を頼るしかないでしょう。私の友人に見繕ってもらっていますが、急いだ方が良いかもしれません」
そうかもな……
リンゴはまだマシで農具やスーパー肥料のことがある。
「シャンプーとかだっけ?」
「はい。見繕いは済んでいますし、すぐにでも王都に行って参ります」
王都か……
「往復で20日かかるんだっけ?」
「そうですね」
「一人で行くの? 大丈夫? モニカって戦いができないでしょ?」
「エリク様に紹介してもらって護衛のハンターを付けようとは思っております」
ハンターか……
男かな?
不安だわ。
「俺も行こうか?」
「いえ。タツヤ様は仕事もありますし、状況の確認とできたら下話をする程度ですので私一人で問題ありません」
うーん、とはいえ、心配だなー……
前は何も考えずに任せたが、モニカはちょっと不安だ。
見た目も良いし、それでいて回復魔法や結界魔法は使えるけど、攻撃手段がない。
「山田、モニカには私がついてやるにゃ」
悩んでいると、コタツの中からミリアムが顔を出す。
「ミリアムが?」
「そうにゃ。護衛なんかいらないし、村の馬車で王都に向かえばいいにゃ。夕方になったら転移で帰るだけにゃ。この前と一緒」
なるほど。
それなら楽だ。
「ミリアムはいいの?」
「モニカは自分一人でいいと言ったが、本格的な話になれば、どっちみち、お前が行く必要が出てくるにゃ。その前に私が行っておけば、転移でいつでも王都に行ける状態になるにゃ」
確かに……
一度、俺かミリアムが行けば、今後も20日をかけずに王都に行けるようになる。
「モニカ、それでいい?」
「ミリアムさんがついてきてくださるならば私も安心です」
「じゃあ、ミリアム、お願いするよ」
「任せるにゃ! 使い魔の仕事にゃ!」
いやー、君の一番の仕事はこの癒しだよ。
俺はそう思いながらミリアムの素晴らしい毛並みを撫でた。
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