表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/227

第089話 お祝い


 用件が済んだ桐ヶ谷さんが帰ると、ルリがスマホを手に持ってリビングに戻ってきた。


「タツヤさん、お姉ちゃんがもう行ってもいいかって言ってます」


 ルリにそう言われて、時計を見ると、10時を過ぎた辺りだった。


「別にいいけど、ユウセイ君は?」

「ユウセイさんも来るそうです」


 暇なのかな?


「まあ、いいんじゃない?」

「じゃあ、連絡しておきます」


 ルリはそう言うと、コタツに入り、スマホを操作しだす。


「楽しい?」

「はい。お姉ちゃんがかなり……いえ、ちょっとだけうるさいですけど」


 キョウカ……

 なんか昨日はメッセージが少ないなと思っていたが、ルリに送っていたわけだ。


「欲しいものがあったら遠慮なく言いなよ? 俺は正式に月収80万円になったから」

「おー! おめでとうございます。今日はお祝いですね」


 いい子だ。


「出前でお寿司でも取ろうよ」

「わかりました……お姉ちゃん達は?」

「2人のおかげでもあるから昼食にしようか」


 前にキョウカが寿司が良いって言ってたし。

 焼肉は今度、ユウセイ君を誘っていこう。


 俺達は昼食を決めると、そのままコタツに入って待つ。

 そのまましばらく待っていると、廊下を歩く音が聞こえてきた。

 すると、リビングの扉が開き、私服姿のキョウカとユウセイ君が入ってくる。


「こんにちはー」

「えー……チャイムぐらい鳴らせよ」


 キョウカが軽快に挨拶をし、ユウセイ君がちょっと引いていた。


「タツヤさんが鳴らさなくていいってさ。すぐに会いたいって言うから……」


 人間ってここまで曲解できるんだな。


「制服姿で外で待ってもらうのが嫌だっただけだよ。まあ、気にしなくていいからコタツにでも入りなよ。寒かったでしょ」


 そう勧めると、2人がコタツに入る。

 もちろん、いつものようにユウセイ君が対面でキョウカが隣だ。

 斜め横が空いているのに……


「もうかなり寒いわー」

「ホントだよねー。コタツが暖かい」


 キョウカはユウセイ君に同意しながらコタツの中に手を突っ込む。

 そして、ミリアムを引っ張り出すと、膝の上に乗せて、撫で始めた。


「2人共、テストの結果はどうだったの?」


 もう返却された頃だろうと思い、聞いてみる。


「いつも通りだった。特段言うことない」


 平均80点だっけ?

 ユウセイ君はバイトもしているのに優秀だな。


「私はいつもよりも良かったです。タツヤさんの誘惑にも負けずに頑張りました」


 何回かミリアムの自慢メッセージを送ったことだろう。


「お疲れ様。実は今朝、桐ヶ谷さんがウチに来たんだよ」

「そうなのか?」

「あー、ルリちゃんが言ってましたね」


 キョウカはルリとメッセージのやり取りをしていたようだ。


「そうそう。それで俺、8級になった。2人のおかげだよ。ありがとう」

「おめ。ガンガン稼いでくれ」

「そうですよ。いっぱい稼いでください」


 2人は素直に喜んでくれている。


「前から思ってたけど、思うことないの? 2人は無給だよね?」

「まあ、しゃーないことだし、高校卒業までの研修みたいなものだと思っている。それに山田さんが奢ってくれるし……あ、焼肉に連れていってくれよ」

「うん。今度行こうか。今日の昼は出前の寿司」

「マジか……さっき朝食を食べたばっかりだわ」


 君、それでも普通に食べるじゃん。


「焼肉の時は調整しなよ」

「そうするか……」


 この子、将来、太るかもな……

 いや、まあ、若い時だけか。


「キョウカは? お小遣いだよね?」

「私も特に気にしませんよ。私の成果は全部、タツヤさんが持っていってください」

「いいの? 桐ヶ谷さんも狼男を倒したのを俺ってことにすれば良かったのにって言ってたけど」

「えー……素直に報告しちゃったんですか? まあ、正直なのは良いことですけど、タツヤさんが倒したことにしておいてくださいよ。どうせ私達には入らないんですし、タツヤさんがもらってください」


 本当にいいんだろうか?


「いや、ちょっと気が引けてさ」

「気にしなくてもいいですよ。こうやってお世話になってますし、御馳走してくれるじゃないですか。それに空間魔法や回復魔法なんかも教えてくれたじゃないですか」


 まあねー。


「いや、2人が気にしないならいいんだよ」

「気にしないって」

「そうですよ。あ、でも、そんなに気になるんだったら私、行きたいところがあるんで連れていってくださいよ」


 キョウカは何か要望があるみたいだ。


「どこ?」

「ケーキバイキングです。来月末に一緒に行きましょうよー」


 何故、時期を指定するんだろ?

 来月にケーキバイキングのイベントでもあるんだろうか?


「いいよ。でも、俺、ケーキバイキングに行ったことないなー」

「大丈夫ですよー。昼に行ってー、買い物してー、夜にパーティーしましょう」


 パーティー……

 来月は12月……

 あ、そういうことか……

 あれ? 俺、ルリのためにサンタさんをするべき?

 うーん、後でキョウカに相談してみよう。


「そうだね。そうしよっか」

「やった」


 キョウカは喜ぶと、俺の腕に自分の腕を回した。


「近くない?」


 微妙に当たっているし……


「そんなことないですよー……ねー? ミリアムちゃん?」

「にゃー」


 ミリアムって、すぐに猫のフリをするよなー。

 まあ、猫なんだけど。


「どうでもいいけど、腹減ったなー……もう頼まない?」


 ユウセイ君、マイペースだなー……

 というか、さっき朝食を食べたって言ってなかった?


「じゃあ、頼もうか……せっかくだし、特上でも頼もう」


 特上なんて食べたこと…………あ、いや、爺さんの葬式で食べたわ。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

【次にくるライトノベル大賞2025 エントリー】
https://x.gd/OSPb9
― 新着の感想 ―
[一言] 目が滑るぐらいキョウカがイライラする
[一言] いや、もう無理ですわ いるとわかっているのにチャイムすら鳴らさないとか…… 他の作品で楽しませていただきます
[気になる点] キョウカちゃんそろそろ合鍵持ってそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ