第088話 悪魔教団
悪魔教団はタイマー協会の人間が立ち上げたらしい。
「どういうことです?」
「山田さん、今まで悪魔を見てきて、どう思いました?」
どう思った?
そう言われてもな……
「ロクなのがいない感じがしますね。私が出会った低級悪魔は人の心を惑わせますし、ネームドの2人は紳士的で理性的ではあったんですが、フィルマンは人間の子供が主食でアマドは弱い者を殺すのが趣味でした。理解し合えないと感じますね」
もちろん、ミリアムは別ね。
「なるほど……あの力を見て、何か感じることは?」
「別にないですけど……」
「まあ、あなたは魔力も高いですし、ネームドの上級悪魔を簡単に倒せるからそう思うかもしれませんね。怖くはなかったですか?」
「怖くはないですね」
キョウカの方が怖いわ。
いや、すごくいい子なんだけどね。
「そうですか……何故、私がこれを聞いたかと言うと、それが教団の成り立ちに関わっているからなんです」
「そうなんです? 怖いから崇めた感じですかね?」
「それならまだ良かったんですが、力ある退魔師はそう思わなかったのです」
そうなの?
「どういうことです?」
「これほどの力があれば、もっと別のことができるんじゃないか? 悪魔を利用すれば、もっと力を得ることができるんじゃないか? まあ、そんな感じです」
「そういえば、ロザリーが悪魔を使って世界を支配するみたいなことを言ってましたね」
世界征服か?
わかりやすい悪だな。
「そんな感じでしょう。当然ですが、我々の敵です」
「でしょうね」
というか、協会から出た錆だ。
「実を言うと、魔法陣の件から教団が関わっているのではないかという意見は協会内部でもありました。ですが、もう少し調査を進めてからということになり、保留になったんです。お知らせするのが遅れてしまい、申し訳ありません。本来ならこの仕事を受けた際に説明するべきでした。これはこちらの落ち度です」
桐ヶ谷さんが頭を下げる。
「いえいえ。別にそれは構いませんよ。それにようやく疑念が晴れました」
「疑念とは?」
桐ヶ谷さんが頭を上げて聞いてきた。
「実を言うと、私は今回、ロザリーの話を聞いてから協会を疑っていました」
「どういうことでしょう?」
「ロザリーと話をして、やけに協会のことに詳しいなって思ったんです。教団のことを協会は把握していることまで知っていましたし、一ノ瀬君と橘さんが名家の人間であることすら知っていました」
だから協会に内通者でもいるんじゃないかと思っていたが、元が協会の人間なら知っていてもおかしくない。
「なるほど……すみませんが、そこは明確に否定できないのが現状だったりします」
「えー……まさか、内通者がいるんですか?」
「いるかもしれません。何しろ、協会の職員はともかく、雇っている退魔師さんは人手不足なので多少、怪しくても目をつぶることが多いですからね」
マジかよ。
「一ノ瀬君が退魔師はロクなのがいないから接触しない方がいいって言ってたのが真実味を帯びてきましたよ」
「そうですね。人のことをとやかく言えませんが、私も一ノ瀬君の意見に賛成です」
桐ヶ谷さんもか……
「言っておきますけど、私は悪魔教団なんて知りませんからね。興味もないです」
ミリアムはいるけど、悪魔を崇めたり、利用したりしていない。
「あなたは出自がはっきりしているので問題ありませんよ。雇う際に調べてます」
調べたのか……
いや、そりゃそうか。
「普通の庶民だったでしょ?」
爺さんはあれだけど。
「普通でしたねー」
ルリは大丈夫かな?
認識阻害の魔法ってどこまで効くんだろうか?
「自分で言うのもなんですが、面白みのない人生を歩んできたので」
「今は違いますね。楽しいですか?」
「楽しいですよ。お金も入るし、一ノ瀬君と橘さんもいい子ですしね」
「そうですか……橘君が少し心配なんですけど、何かあっても私は知りませんので」
パパ活じゃないっての。
「大丈夫ですよ。それで調査はどうなりました?」
「ええ。教会の人は全員、死亡を確認。それと例の魔法陣があった部屋の借主も遺体で発見されました」
悪魔教団ってかなりヤバいな……
「手がかりはなしです?」
「一応、魔法陣の解析をし、魔法陣のありかを探せるようになりました。今後はそういう情報もアプリで確認できます」
大丈夫かね?
ミリアムが隠蔽魔法がかかった魔法陣もあるって言ってたけど。
「わかりました。留意しておきます」
「よろしくお願いします。今日、一ノ瀬君と橘君が来るなら説明をしておいてもらえます?」
「ええ。そのつもりです。そういう話もする予定でしたから」
元々の本題はそれ。
キョウカ襲来で別のことも話すことになったけど。
「これからは教団の情報も随時、お知らせします。ですので、山田さん達も何かわかればお知らせください」
「わかりました。教団は過激のようですし、情報を共有して慎重に行動しましょう」
「はい。山田さんがまともで本当に良かったですよ」
普通なんだが……
他の退魔師さんってよほどなんだろうな。
「大変ですねー」
「本当にね……まあ、私はまだ実働部隊ですから良い方ですよ。調査員などの補佐をする職員は大変みたいですよ」
そのおかげで俺の評価が高いんだろうな。
別に嬉しくはないが、80万円を喜ぼう。
よし! 今日は出前の寿司だ!
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