第087話 褒賞金、ゲットだぜー
翌日、この日は昼にユウセイ君とキョウカが来るということで朝からルリと一緒に掃除をしていた。
すると、着信音が聞こえてくる。
「山田ー、桐ヶ谷さんって表示されてるぞー」
コタツにいるミリアムが教えてくれる。
「桐ヶ谷さん? この前の件かな?」
コタツに向かうと、スマホを手に取り、通話ボタンを押した。
「もしもし?」
『あ、山田さん、おはようございます』
「おはようございます。どうしました?」
『この前のことの報告や教団の説明がしたいと思っていまして。今、家です?』
思ったより、早いな……
「家ですね。昼に一ノ瀬君と橘さんが来るんですよ」
『なるほど。実は別件で近くまで来ているんですけど、伺ってもよろしいですか?』
まだ9時だし、鉢合わせはないか……
なんで俺が気を使っているかはわからないけど。
「いいですよ。猫がいますけど」
『では、伺わせていただきます。少し長くなりそうなもので……』
「わかりました」
返事をすると、電話を切った。
「桐ヶ谷さんが来られるんですか?」
ルリが聞いてくる。
「そうみたい。悪いけど、部屋にいてくれる?」
「はい」
ルリは掃除を中断すると、スマホを持って、リビングから出ていった。
多分、買ったばかりのスマホを弄るんだろう。
お茶を準備して待っていると、10分ぐらいでチャイムが鳴ったので玄関に向かい、扉を開ける。
すると、スーツを着た桐ヶ谷さんが立っていた。
「早かったですねー」
「ええ。本当に近くにいたんですよ。山田さんのお家は駐車場があって良いですね。でも、車は買わないんです?」
ウチの使っていない駐車場には桐ヶ谷さんの高級車が停まっている。
「もうちょっとお金がいるかなって思ってましてね」
「なるほど……それでしたら良いお話ができると思いますよ」
桐ヶ谷さんがニヤリと笑った。
「ほ、本当ですか? あ、どうぞ、どうぞ」
桐ヶ谷さんを中に招き入れると、リビングに向かう。
そして、コーヒーを準備すると、座っている桐ヶ谷さんの前に置いた。
「ありがとうございます。コタツ、良いですねー」
「桐ヶ谷さんの家はテーブルですか?」
「そうですね。暖房で乗り切っています。ですが、昔を思い出しますし、やはり日本人はコタツが良いですよ」
俺もそう思う。
「ですよねー」
「はい……それでは本日の用件を話しましょう。まずですが、山田さんが気になっている件からです」
ドキドキ!
「おめでとうございます。本日より、山田さんは8級になりました」
「80万ですか?」
「80万です」
すげー!
何もしなくても80万円が振り込まれる生活だ!
「ありがとうございます」
「いえいえ。山田さんの功績を考えれば当然ですよ。ネームドの悪魔を2体倒し、さらにはあの2人の面倒まで見てくれるんですからね。多分、7級もすぐですよ」
7級……伝説とまで呼ばれている月収100万だ。
「頑張ります!」
「はい。無茶をしない程度に頑張ってくださいね。それとですが……」
「まだ何か?」
「ネームドの悪魔を倒したじゃないですか」
アマドか。
「い、いくらでしょうか?」
「以前と同じく200万です」
200万……
すごい!
「つまり合計400万ですか?」
「はい。以前のフィルマン、そして、今回のアマドの褒賞金はそれぞれ200万です。本日、山田さんの口座に振り込んでいると思いますので後でご確認ください。ね? 車も買えるでしょ?」
ホントだ!
さすがに400万円もあれば余裕だ。
「軽じゃなくて普通車にするか……」
「普通車が良いと思いますよ。まあ、節制をするのは良いことですけど」
釣りをしに行くと考えると、普通車が良いか……
後でネットで見てみよう。
「いやー、ありがとうございます」
「いえいえ。でも、あまり大きな声では言えないんですけど、狼男も自分が倒したって言った方が良いですよ? それでしたらもう40万ほど増えてました」
そうか……
狼男はユウセイ君とキョウカが倒したってことにしたから褒賞金が出ないんだ。
「それ、大丈夫です?」
「上もそこまで目くじらを立てませんよ。面倒を見てもらっているわけですし、証明のしようがありませんから」
じゃあ、今度からは俺の手柄にするか……
なんか搾取しているみたいで嫌だな……
焼肉で足りるか?
「わかりました。考えてみます」
「ええ。けっして、バレても私から聞いたなんて言わないでくださいよ」
「言いませんよ」
人のせいにはしない。
「お願いしますよ。では、次に悪魔教団について、お話ししましょう」
お金は嬉しいけど、本題はこっちだ。
「協会は把握していたんですか?」
「ええ。把握しております。実はこのことはもう少ししたらお話ししようかと思っていたんです。もちろん、一ノ瀬君と橘君にもね」
俺達がルーキーだからか。
「ちなみにですが、一ノ瀬君と橘さんの実家は知っているんですかね?」
「ええ。知っています。とはいえ、当主なんかの上の方だけでしょうね。実際、一ノ瀬君と橘君は知らなかったんでしょ?」
「みたいですね」
嘘をついているようには見えないし、嘘をつく必要もないだろう。
「まず教団の成り立ちから説明します。非常に言いづらいのですが、悪魔教団の設立メンバーは元々、我々と同じ退魔師です。というか、タイマー協会の人間ですね」
は?
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