表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/228

第083話 事情説明


 上級悪魔のアマドは灰になって消えていった。

 よく見ると、狼男も消えている。


「やけにあっさりしてたね」


 死ぬっていうのに。


「長く生きた悪魔はそんなものにゃ。人とは価値観が違う」

「ミリアムも?」

「まあ、別に死ぬことに特別な思いはないにゃ。いや、死ぬ気はないけど……」


 そんなものなのか……


 俺は宙に浮いているミリアムを抱きかかえると、撫でる。


「しかし、灰になっちゃったね。また証明が難しい」


 危険度がわからない。


「自分の死体を残したくなかったんだろうにゃ」

「こだわりかね? まあ、倒したのはユウセイ君か……」


 ユウセイ君をチラッと見る。


「いや、ほとんど山田さんじゃん。というか、俺が倒しても褒賞金は出ないし、山田さんが倒したことにしてよ。それで焼肉を奢ってくれ」


 そういえば、テスト終わったら奢るって言ってたわ。


「そうしようか。ユウセイ君、悪いけど、協会に電話してくれる? 俺はちょっと奥を見てくる」

「わかった」


 この場をユウセイ君に任せると、奥にある扉に向かう。

 すると、キョウカもついてきた。


「見ない方が良いよ?」

「私は別に気にしませんから」


 怖いなー……


 俺はまあいいかと思いながらキョウカとミリアムを連れて、奥に向かう。

 そして、扉を開けた。


 中には数人の男女の死体が転がっていた。


「ロザリーじゃなくて、教団の連中って言ってたよね?」

「そうですね。タツヤさん、壁を見てください」


 キョウカにそう言われたので壁を見ると、あちこちに小さな穴が開いていた。


「あれは?」

「銃痕ですね」


 銃かよ……


「もういいや。あとは協会に任せよう」


 ごめんよ、調査員の皆。


 俺達は扉を閉じると、ユウセイ君のもとに戻る。


「山田さん、電話したぞ。桐ヶ谷さんも来るって」


 桐ヶ谷さんか……


「ありがとう。君ら、どうする? もう11時になるけど」

「あー、マズいな。条例がある」


 だよねー。


「勝手にやる分には良いというか、グレーゾーンなんですけど、調査員の方が来る場合はちょっと……」


 グレーかね?

 いや、黒じゃない?

 まあ、親御さんには許可を得ているかもしれないし、一応、俺が保護者か……


「タクシーを呼んであげるから先に帰りなよ。明日はユウセイ君がバイトだし、土曜日にでもまた話そう」

「そうするか」

「まあ、仕方がないよね。じゃあ、土曜日に伺いますんで」


 ウチか……


「わかった」


 俺は返事をすると、タクシー会社に電話をする。

 そして、しばらく待っていると、タクシーがやってきたのでお金を先に払い、2人を送ってもらった。


「さて、待つか」


 死体のある教会で待つのは嫌だが、仕方がない。


「ねえ、ミリアム。あのロザリーって悪魔はそんなに強いの?」

「強いにゃ。あれはフィルマンやさっきのアマドとは格が違うにゃ」

「そんなに? 戦闘能力に乏しいって言ってたけど」


 確かに戦いができそうには見えなかった。


「争いが好きじゃないだけで実際は恐ろしく強いにゃ。少なくとも山田では勝てないレベルにゃ」


 マジか……


「同じネームドの上級悪魔じゃないの?」

「そんなもんはしょせんランク付けにゃ。ロザリーの魔力は私と同等程度はあると思うにゃ。間違いなく、厄災や魔王と呼ばれるレベルの悪魔にゃ」


 あのー……それってミリアムさんも厄災や魔王と呼ばれるレベルの悪魔ってことでは?

 猫なのに?

 こんなに可愛いのに?


「そんなに強いのになんで見逃してくれなんて言ったんだろう?」

「そっちの方が楽しいからに決まってるにゃ。お前を誘惑してたのもキョウカを煽っていただけにゃ」


 迷惑な悪魔だな……


「そんなのを呼び出した悪魔教団か……」


 ロクな組織とは思えんが、どんな組織なんだろうか?


 俺がそのまま考えながら待っていると、扉が開き、桐ヶ谷さんと調査員の人達が入ってきた。


「あれ? 須藤さんじゃないですか。学校の調査は?」


 調査員の中には須藤君もいた。


「そっちは終わりましたよ。何も出てきませんでした。ようやく帰れると思ったら呼び出しですよ」

「すみませんね」

「いいですよ。これが仕事です」


 調査員も大変だな。


「山田さん、一ノ瀬君と橘君は?」


 桐ヶ谷さんが聞いてくる。


「11時を超えそうだったんでタクシーで帰らせましたよ。さすがに明日も学校ですし」

「ならよかったです」

「桐ヶ谷さんも帰ってたんじゃないんです?」

「家で夕食を食べていたら連絡が来ましてね。呼び出しです」


 やっぱりか。


「すみませんね」

「いいですよ。こういうことも想定して晩酌はしていませんでしたからね。それに……」


 桐ヶ谷さんが教会内を見渡し、3つの魔法陣を見た。


「経緯を説明しましょう」

「お願いします」

「まずですが、学校の屋上で魔法陣を見つけましてね。その魔法陣から魔力の残滓を感じたので追うことにしたんです」

「ええ。それは聞いています」


 須藤君に報告したからね。


「それでここに来たんですけど、中に入ったら修道服を着た女性がいました」

「シスターですか?」

「いえ、悪魔でした。恐ろしく魅力的な女性でしたよ。サキュバスみたいなものって自分で言ってましたね。ロザリーという名前らしいです」

「ネームド……上級悪魔ですね。それにサキュバスですか……」


 桐ヶ谷さんが悩む。


「ものすごい魔力でしたし、色んな意味ですごかったですよ。腕が痛くなかったら危なかったです」


 すごい惹きつけられるものがあった。


「橘君がいて良かったですねー。それでその悪魔は?」

「見逃がしてくれって言われました」

「え? 見逃がしたんですか?」


 桐ヶ谷さんや調査員がこいつマジかって顔をする。


「あ、いや、見逃がしたかったわけではないんですが、代わりに情報をくれるって言われましてね。それにとんでもない悪魔でとてもではないですが、私が敵うような悪魔じゃなかったです。この前のフィルマンよりずっと格上です」

「なるほど。それで情報を得た方が良いと判断したわけですね?」

「ええ。私だけでなく、一ノ瀬君と橘さんもいましたしね」

「そうですか」


 実際、そうだ。

 2人がいる時点で無理はできない。

 まあ、それとは関係なく、無理をする気は皆無だけど。


「それで情報とは?」

「まずですが、学校に魔法陣を描いたのはそのロザリーという悪魔みたいです。フィルマンを呼び出したのもロザリーでしょう」

「上級悪魔だったから上級悪魔を呼びだせた感じですか……」

「だと思います。それでロザリーを呼び出したのは悪魔教団とかいう組織のようです」


 俺が悪魔教団の名前を出すと、桐ヶ谷さんが眉を潜める。

 すると、須藤君を始めとする調査員も俺のことをガン見し始めた。


 こりゃ、本当に把握してるわ……


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【販売中】
~書籍~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます!
[良い点] ロザリーそんなに強いのか いつかキョウカちゃんの使い魔にならないかしらw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ