第078話 夜の学校を捜索
俺達は校舎に入ると、電気をつけた。
「ミリアム、悪魔の気配はするか?」
ユウセイ君がミリアムに聞く。
「しないにゃ」
「そうか……俺もしない。山田さんは?」
「え? あ、しないね」
ちょっとそれどころじゃなかった。
いや、今は仕事に集中するべきだ。
「あのパパ活コンビは放っておくにゃ」
パパ活言うな。
「うーん……まあ、仕方がないか。じゃあ、魔法陣を探すかな。どこだろう?」
「ユウセイ君やキョウカの方が学校に詳しいでしょ。昼間にそういう気配はなかった?」
とりあえず、腕にしがみついているキョウカのことは考えないようにし、ユウセイ君に聞く。
「いや、特に何もない。この前のネームドの時はなんとなくわかったんだが……うーん、キョウカは?」
「私も何も感じてないし、感じていたら山田さんに報告している。私はそういうのをちゃんとするからね」
チクっと来るな……
「とりあえず、この前の多目的ホールに行ってみない?」
「それもそうだな……行くか」
俺達はフィルマンがいた2階の多目的ホールに向かうために階段を昇っていく。
「キョウカ、階段は危ないよ」
「大丈夫。私、運動神経良いから」
俺はあまり良くないよ……
「手を繋ごうよ」
まさか俺が女子高生にこんなことを言う日が来るとは……
「手か……離すなよ」
キョウカはそう言うと、俺の手を取り、握った。
そして、離れていく。
「パパ活なのは変わらないにゃ」
ミリアムが宙に浮いて、目の前に来る。
「せめて、親子か兄妹にしてよ」
「親子というには歳が近いにゃ。兄妹にしては離れてるにゃ」
微妙なのかー……
「恋人に見えない?」
キョウカが聞いてくるが、恋人に見えたらマズいんだよ。
「せめて、私服だったらね。スーツの男と高校の制服を着た女子の組み合わせの印象は最悪でしょ」
「確かにそれはマズいね……でも、無理だよ。だって怖いもん。今だって、後ろを振り向けない。振り向いたら絶対に何かいる」
いないよ……
「退魔師じゃないの?」
「斬れるものは怖くない。でも、おばけは斬れない」
キョウカなら斬れると思うよ……
俺達はなんとか階段を登り終えると、奥にある多目的ホールに向かった。
多目的ホールに着くと、電気を付け、部屋を見渡す。
当然、ミリアムが直したから焼け焦げた跡はなかった。
「ミリアム、何か感じる?」
何も感じないのでミリアムに聞いてみる。
「いや、何も……別のところじゃないかにゃ?」
別か……
「キョウカ、ユウセイ君、心当たりはある?」
今度は2人に聞く。
「私達が行くところには何もないと思うね」
「俺もそう思う……となると、普段、行かないところか……」
まあ、そうなるか……
「じゃあ、そこら辺を重点的に探してみようか。教室なんかにはまずないだろうしね」
俺達は多目的ホールを出ると、捜索を開始する。
2人が行かないところで思いつくところを隈なく捜索してみた。
職員室、職員用のトイレ、校長室、準備室……
2人が行きそうにないところを探しているのだが、まったく魔法陣は見つからないし、魔力も感じない。
「うーん、ないなー……」
俺達はあらかたを調べ、最後によくわからない準備室を出た。
「あのさ、よく考えたら魔法陣って普通の人にも見えるよな?」
ユウセイ君が思いついたように聞いてくる。
「そうなの?」
「多分……協会の人に聞いたんだけど、赤い線で描かれていたんだろ? 目立つし、俺達生徒だけじゃなくて、先生にも見つかったらマズいと思うんだ」
確かに普通の人にも見えるならそうだろう。
「ミリアム、魔法陣って魔法使いじゃなくても見えるの?」
「どっちもあるにゃ。でも、確かにあのアパートの部屋にあった魔法陣はそういう隠蔽魔法はかかってなかったにゃ。そうなると、人が立ち寄らないところにある可能性も十分にあるにゃ」
人が立ち寄らない場所か……
どこだろう?
「そういうところある?」
ユウセイ君とキョウカに聞くと、2人が顔を見合わせた。
「キョウカ、あるか?」
「まあ、校舎も広いからね。でも、開かずの教室とかってあったかな?」
「聞いたことないな。うーん、屋根裏とかのスペースにあったら俺達では探せないよな」
それは無理だわ。
業者を呼ばないと…………いや、待てよ。
屋根裏か……
「ねえ、この学校って屋上ある?」
思いついたので2人に確認する。
「あるにはある。行ったことないけど」
「当たり前だけど、立入禁止だし、鍵がかかって出られないからね。でも、そうか……屋上には私達生徒はもちろん、先生達も行かないね」
ありえる気がする。
「屋上って外でしょ。空を飛ぶ魔法があるかはわからないけど、もし、空を飛んだら簡単に侵入できない?」
わざわざ校舎の中を通らなくてもいい。
誰が魔法陣を設置したかはわからないが、校舎の中を通らないなら見つかるリスクがグッと下がるだろう。
「確かに……実際、飛んでるしな」
ユウセイ君が宙に浮いているミリアムを見て、納得した。
「行ってみるかい? でも、確か鍵がかかっている……鍵ってどこにあるんだろう? ユウセイ君、知ってる?」
キョウカがユウセイ君に聞く。
「職員室か?」
「さあ?」
2人が顔を見合わせながら同時に首を傾げた。
「ミリアム、開けられるよね?」
この前のアパートの部屋の鍵も開けてたし。
「余裕にゃ」
さすがは上級猫。
「行ってみよう。階段を昇ればいいんだよね?」
「そうだね……前に友達と屋上に行こうとしたことがあるし」
キョウカもか……
実は昔、俺もやった。
「行ってみよう」
俺達は階段まで行くと、3階に昇り、さらにその上の階に昇っていった。
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