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第075話 セーフ……


 キョウカに事情を説明した後、ルリがキョウカにコーヒーとお菓子を用意して、ご機嫌を取ってもらった。

 キョウカは上機嫌でお菓子を食べながらミリアムを抱いている。


「タツヤさんの家はすごいですよね。私が欲しいものが全部ある」

「そう?」

「ええ。とても良い家ですね。私もこの家の子になろうと思います」

「ははは」


 冗談だよね?

 この子、たまに本気でルリとミリアムを連れ去ろうとするんだけど……


「さて、もうこんな時間ですね……帰ります」


 時刻は6時を回ったところだ。

 この時期だとすでに辺りは暗い。


「駅まで送っていくよ」


 今日はユウセイ君がいないし、送るべきだろう。


「おや? 制服姿の私と歩きます?」


 ………………。


「いや、暗いし、送るよ」

「そうですか。では、お願いします」


 キョウカは満面の笑みでコタツから出ると、立ち上がった。


「あ、ミリアムは置いていってね」

「そうでしたね」


 キョウカがミリアムを渡してきたので床に放す。

 すると、ミリアムはすぐにコタツの中に潜っていった。

 そして、コタツに入っているルリの所から出ると、ルリに何かを渡す。


「あ、あの、お姉ちゃん、これ……」


 ルリは立ち上がると、おずおずとミリアムから受け取ったシュシュをキョウカに渡す。


「おーっと、忘れるところでした。ありがとー」


 キョウカはシュシュを受け取ると、髪を結ぶ。


「ルリ、俺はキョウカを送ってくるから」

「はい。私は夕ご飯を作ってます」


 俺とキョウカは家を出ると、暗い道を歩き始める。

 すると、近所に住むおばちゃんが前から歩いてきて、ドキッとしたが、キョウカが普通にこんばんはと挨拶したらこんばんはと返してくれた。


 特に変な顔はされなかったか……


「ね? 堂々としていればいいんですよ」

「かもねー」


 確かにここが歓楽街だとアウトかもしれないが、住宅街なら普通かもしれない。

 コソコソするから怪しいんだ。


 俺はそう納得し、駅まで歩いていく。

 そして、駅前までやってくると、キョウカが数歩先に歩き、こちらを振り向いた。


「じゃあ、私は電車で帰ります。また明日、話しましょう」

「そうだね。ユウセイ君には今夜、電話しとくから」

「それが良いと思います。では、また明日」


 キョウカはそう言って手を上げると、駅に向かって歩いていく。

 俺はそんなキョウカの後ろ姿をキョウカの姿が見えなくなるまで眺め続けた。


 よし、やっぱり車を買おう!


 そう強く思うと、歩いて家に帰る。

 そして、家に帰ると、モニカがコタツに入っていた。


「あ、お邪魔してます」


 モニカがぺこりと頭を下げる。


「うん。今日はどうだった?」


 コタツに入ると、今日の報告を聞く。


「本日はハリアーの町に行き、魔道具の仕入れと共に人頭税を納めてきました。後日、王都から委任状が届くと思います」

「委任状か……俺が受け取った方が良い?」

「いえ、配達されるだけなのでこちらで受け取っておきますよ」


 郵送か。


「そんなもんなんだね。王都に呼ばれると思ってたよ」

「村長程度ならそんなものですよ。貴族になればまた変わりますけど」

「その辺がいまいちわからないんだけど、あの村は俺のものって言ってたでしょ? それって貴族じゃないの?」


 領地貴族じゃん。


「さすがにあの規模で貴族は名乗れませんよ。それに貴族は身分ですし、功績がないと任じられることはありません。具体的に言うと、ハリアーの町は領地貴族であるクロード様の直轄地でリンゴ村は王家の直轄地になりますね」


 あの村、正式には王家のものなんだ。


「それさ、取り上げられない?」


 リンゴで儲かったから危ないような……


「よほどのことがない限り大丈夫ですよ。謀反を起こしたとか、他国と繋がったとか、住民を虐殺したとかですね。そういうことをすると、解任でしょうね」

「さすがにそんなことはしないよ」


 というか、それ、死刑じゃない?


「でしょう? そういう正当な理由がないと取り上げるのは無理です。じゃないと誰も開拓をしなくなりますよ」


 頑張って開拓し、村を作り、ようやく波に乗ったら国に奪われました。

 確かにそんなことが起きたら今後、誰も開拓しなくなるな。


「なるほどね」

「まあ、念のため、王都の貴族には贈り物を送る予定にしておりますので大丈夫ですよ。例の貴族女性向けのやつです」


 シャンプーとかリンスか。


「その辺の伝手はあるの?」

「この服をくれた貴族の友人がいますのでそこから辿ります。王都の貴族女性は横の繋がりが強いので問題ありません」

「わかった。お金の管理も任せたし、モニカに任せる。こっちの商品を買う場合は言ってくれれば買うからよろしく」

「お任せください」


 俺達はその後、ルリが作ってくれた夕食を食べると、各々がいつものように過ごしていった。

 そして、モニカがお風呂に入りにリビングを出ると、9時を回っていたのでユウセイ君に電話し、この前のことを謝りつつ、ミリアムのことを説明する。


『へー……あの黒猫、悪魔なのか……だからピザを食べていたのか……』


 そこ?


「うん。そういうことなんだよ」

『確かにそういう事情なら隠す気持ちはわかる気がするな。俺ら、退魔師だからそのネームドの悪魔を祓う立場だし』

「そうそう。あ、ミリアムを通報しないでね」


 ウチの子を祓わないで。


『しねーよ。よくわかんないけど、使い魔なんだろ?』

「だね。俺もよくわかんないけど、かわいいからいいかなって」


 相談にも乗ってくれるし、魔法も教えてくれる。


『その悪魔、魅了とかを使うんじゃないか? 山田さんもキョウカも骨抜きじゃん』

「かわいいし、品がある猫だから仕方がないよ。ユウセイ君は思わないの?」

『俺、犬派』


 そうなんだ……


「異教徒にゃ」


 ミリアムが文句を言う。


『んー? 今の声がミリアムか?』

「そうそう。憤慨してる」

『悪い、悪い』


 ユウセイ君が軽く謝った。


「そういうわけだから明日、会って話そう。召喚の魔法陣が気になる」

『確かにな。わかった。明日、放課後に例のファミレスに行くから』

「うん。駐車場で待ってるからよろしく」


 そう言って、電話を切った。


「ふう……そんなに怒っている様子ではなかった」

「ユウセイはあっさりしているからにゃー……」


 まあ、今頃の若者って感じはする。


「とりあえず、明日、皆で話そう」

「それがいいにゃ。私もずっと黙っているのは疲れるし、良かったにゃ」


 そういやそうだな……

 おしゃべりな猫さんには辛かっただろう。

 ごめんね。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ヒロインズは不快だけどミリアムは癒し
キョウカちゃんいないとホッとする ジャンルホラーになりそう
[一言] 更新ありがとうございます! さり気なくシュシュ置いていくなー(笑)
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