第071話 軽でいいから車、買おうかなー……
エリクさんとのリンゴの交渉を終えた俺はミリアムと共に家に帰った。
「どうでした?」
家に帰り、リビングに戻ると、ルリが聞いてくる。
「上手くいったよ。モニカはすごいね。ほぼあの子が事前に言っていた通りになった」
専売契約やリンゴの値段、それに結婚の話までほとんど合ってた。
「さすがですね。でも、上手くいったなら良かったです。あ、コーヒーを淹れますね」
「ありがとー」
頭を撫でると、ルリが嬉しそうにキッチンに向かったのでミリアムを抱えながらコタツに入る。
「温かいね」
「まあにゃー。お前の心拍数も落ち着いてきたにゃ」
この子はすぐに人の心拍数を探るな……
「緊張だよ、緊張。ハリアーの町のギルド長だし、要は社長さんでしょ」
「まあ、確かに少しエリクに会った時も心拍数が上がってたにゃ。でも、お前の心拍数が急激に上がったのはモニカが隣に座った時にゃ」
「それこそ仕方がないでしょ」
近すぎ。
もう少し若かったら勘違いしそうだったわ。
「さっきの話、お前、結婚とかしないのかにゃ?」
「前にも言ったでしょ。そういうのは諦めている」
「前はそうだったかもしれないけど、今は縁ができてるにゃ」
縁ねー……
「一応、聞くけど、誰?」
「決まってるにゃ。キョウカとモニカ」
「どうしろと? 16歳と異世界の子じゃん」
「どうとでもなるにゃ。キョウカは数年後には自立するし、異世界だろうと関係ないにゃ」
まあ、そうだけども……
「うーん、あの2人ってさー……やっぱいいや」
「情けない35歳だにゃー。聞けよー。即答してやるから」
ミリアムが尻尾でぺちぺちと腕を叩いてきた。
「どうしましたー?」
ルリがコーヒーを持って戻ってくると、机に置きながら聞いてくる。
「なんでもないよ」
「そうですか? ところで、結婚されるんですか?」
聞いてんじゃん。
いや、すぐそこにいたわけだから聞こえているとは思うけど。
「しないよ」
「あのー、結婚されるのでしたら私はここにいても良いのでしょうか? あれだったらあっちの研究室に戻りますけど……」
「大丈夫だよ」
俺はルリの腕を引っ張ると抱えるように座らせ、頭を撫でた。
「パパ?」
ルリが見上げながら聞いてくる。
「パパじゃないって……今日はリンゴが売れたし、お祝いにしようか」
「良いと思います。モニカさんは来られますかね?」
「報告がてらごちそうになりに来るって言ってたよ。どうする? 何か作る? それともどこかに行きたいとかある?」
「ファミレスに行きたいです」
御馳走がファミレスかー。
でも、子供だしなー。
こっちで仕事をする際は俺達がいつもそこで会ってるから気になっているのかもしれない。
「じゃあ、そこに行こうか」
「はい」
俺達は午後から魔法の勉強をしつつ、ゆっくりと過ごし、時間を潰していく。
そして、7時くらいになると、モニカがやってきた。
「お邪魔します」
「いらっしゃい……」
そう言いつつ、モニカをじーっと見る。
モニカはいつもの青と白を基調とした上等な布のローブだ。
「いかがしました?」
しまった。
女性を不躾に見るのはいけない。
事案とは言わないけど、不快だろう。
「モニカ、結局、こっちの服は買ったの?」
「ええ。以前、ルリさんと買いに行きましたよ」
もう買ったか……
さすがに女性は早いな。
「実はさ、リンゴが売れたお祝いに外食に行くんだ。モニカも良かったらどうかなって……ルリの希望でファミレスなんだけど」
「誘っていただきありがとうございます。私も行ってみたいです」
「じゃあ、着替えておいでよ。着替えは家?」
「あ、いえ。ルリさんの部屋に置かせてもらってます」
そうなんだ。
まあ、こっちで着る服だろうし、それがいいだろうね。
「ルリ、お願い」
「わかりました。モニカさん、こっちです」
ルリはモニカを連れて、自室に向かう。
そして、俺とミリアムがリビングで待っていると、2人が戻ってきた。
ルリはいつものお出かけ用の服であり、見たことがある。
モニカはロングスカートに白のニットを着ており、いつもローブだったから新鮮だ。
しかも、長い金髪をまとめており、印象がかなり変わっている。
あと、なんかすごい。
「モニカ、似合ってるね」
これが大人のマナー。
まあ、実際、似合っているし、かわいいと思う。
「ありがとうございます」
モニカはいつも涼しい顔でお辞儀する。
「ルリもかわいいね」
そう言いながらルリの頭を触る。
ルリがいつもと違うのは髪をシュシュでまとめているところだ。
キョウカリスペクトかもしれない。
もしくは、コタツの中にあったあれは自分のだよっていうアピールをしてくれている。
まあ、どっちみち、かわいいからいいや。
「ありがとうございます」
「うん。じゃあ、行こうか」
そう言うと、ミリアムがよじ登ってきて、俺の肩に乗った。
「私には何かないかにゃ?」
「いつも通り、素晴らしい毛並みだね」
なでなで。
めっちゃ触り心地が良い。
「そうか、そうか。じゃあ、ハンバーグを食べに行くにゃ」
ミリアムはハンバーグが好きなのだ。
猫に玉ねぎはダメな気がするが、ミリアムは上級なので問題ないらしい。
まあ、悪魔だしね。
俺達はタクシーを呼ぶと、ファミレスまでタクシーで行くことにした。
俺もまた、ファミレスに行くためにタクシーを使うくらいに上級になったのだ。
まあ、雨が降りそうな天気だったからだけど……
やっぱり車買うかなー?
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!