表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/227

第068話 整えるところが多いなー


 翌日、昼前に早めの昼食を食べた俺はミリアムを連れて、村に向かう。

 村は相変わらず、畑仕事をしている人やはしゃいでいる子供達がおり、微笑ましかった。


 俺達はそのまま門の方に向かうと、門の近くには家が建っており、その家の前にはモニカが立っていた。


「モニカ」

「こんにちは。早いですね?」


 モニカが微笑みながら聞いてくる。


「まあね。それよりも何してんの? 中で待たないの?」

「エリク様を待ってます。タツヤ様は中で待っていただいて結構ですよ」


 出迎えるわけか。


「じゃあ、俺も待ってるよ。多分、予定より早く来るしね」

「そうなんですか?」

「ほら、道を整備したじゃん」


 ここまでの道が悪いことは大手の商人なら知っているだろうし、当然、それを見越して、出発しているだろう。


「あー……確かに。では、待ちましょうか。時にタツヤ様、結婚願望はおありですか?」


 ん?


「いきなり何?」

「今後のことでかなり重要な話です。リンゴの売買が上手くいき、この村が潤った時に一番、タツヤ様に取り入る方法が婚姻なのです。エリク様はもちろんのこと、他の商人や貴族も狙ってくるかもしれません。もちろん、それ相応の女性を用意してくるでしょう。いかがですか?」


 モテモテだな。

 微妙な気分だけど。


「欲ある者に爺さんの魔法やあっちの世界のことを説明しろってこと? ないでしょ」


 トラブルの匂いしかしない。


「では、そういった類のことは断るということでよろしいですね?」

「そうだね」


 それでいいだろう。


「かしこまりました。そこで提案があります」


 提案?


「何?」

「すでに結婚していると偽ってください。ルリさんは娘ということで……」


 なるほど。

 最初からそう言えば、そういう話もなくなるのか。


「一応聞くけど、この世界って一夫一妻?」

「具体的なルールはありませんが、庶民はそうです」


 貴族、王族は違うのかな?

 まあ、跡取りのこともあるし、権力者はそうか。


「ルリを娘にするのはわかったけど、奥さんはどうするの? いないよ?」

「表に出たがらないという理由でいいでしょう。病気がちでもいいですが、それは隙になります」


 そんな女より、ウチの健康的な娘をーって言われそうだからか。


「わかった。その設定でいこう」

「はい。あ、本当に結婚なさるのならそれはそれで結構ですよ。かわいらしい髪留めを持っている子がいらっしゃるみたいですしね」


 早口……

 シュシュはルリのだよー……(小声)


「そういう子じゃないよ。仕事仲間だって」

「そうですか? 普通、コタツの中に髪留めを入れますかね?」


 入れないと思う。


「まだ16歳の子供だよ」

「十分に大人です。女は10歳だろうが、女なのですよ」


 ルリを入れないで。

 ホムンクルスだから正確なあの子の歳を知らないけど。


「そんなことないと思うけどなー」

「男の家で着飾った髪をわざわざ下ろしましたよ、というアピールをするのが女です」


 浮気相手が奥さんにわざと気付かせるように痕跡を残すようなものかね?

 そういう話をネットで見たことがある。


「た、たまたまだよ」

「そうですか……まあ、それでいいでしょう」


 モニカにもあの髪の毛はわざと落としたのかって聞いてみようか……

 いや、やめとこ。


「あ、馬車が来たよ」


 モニカと話していると、道の先に豪華な馬車が見えてきた。


「おそらく、エリク様かと」

「だろうね」


 俺達がそのまま待っていると、馬車は門の前で止まった。

 ぼろい門と豪華な馬車がミスマッチすぎる。


「……門を早急に整えましょうか」


 モニカが小声で提案してくる。

 どうやらモニカも同じことを思ったようだ。


「……そうだね」


 俺達がちょっと恥ずかしいなーと思っていると、御者をしていた若い男が馬車から降りると、馬車の扉に向かった。


「旦那、着いたぜ」


 男が声をかけたが、粗暴な感じだな。


「……あれは?」

「……雇われのハンターでしょう。護衛ですね。エリク様の護衛ですからおそらく、かなりの強者かと」


 魔力を感じないところを見ると、魔法使いではないだろうが、帯剣しているところを見ると、剣士だろう。


「強いと言えば、強いが、キョウカ以下にゃ。そこまで臆することはないにゃ」


 いや、そのキョウカがめちゃくちゃ強いし、怖いんですけど……

 それ以下って言われてもねー……


 異世界って怖いなーって思っていると、馬車から初老の男性が降りてくる。

 そして、ハンターの男を連れて、俺達のもとにやってきた。


「リンゴ村の村長殿ですかな?」


 初老の男性が聞いてくる。


「はい。この村の村長を務めております山田タツヤです。こちらは秘書のモニカです。エリク様でよろしいでしょうか?」


 そう言いながら頭を下げた。


「ええ。私がオベール商会のエリクです。こちらは護衛を頼んだハンターです。基本的にいないものと考えてください。もちろん、見聞きしたものを外部に漏らすことはありません」


 エリク様がそう言うと、ハンターの男が少しだけ頭を下げる。


「さようですか。こんなところで長話をするのもなんですし、どうぞ、こちらへ」


 そう言いながら2人を応接用の家に案内した。

 家の中は対面式のソファーとテーブルがあるだけの質素な部屋だったが、十分に暖かった。

 おそらく、魔道具のおかげだろう。


「どうぞ」


 エリク様に座るように勧めると、エリク様がソファーに腰かけ、ハンターの男がその後ろに立ったまま控える。

 護衛らしいし、それが正しいのだろう。


 俺とモニカもエリク様の対面に腰かけた。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

【次にくるライトノベル大賞2025 エントリー】
https://x.gd/OSPb9
― 新着の感想 ―
[良い点] 逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ
[一言] 更新ありがとうございます!
[一言] ルリノダヨー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ