表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

56/227

第056話 リンゴを売り込む


 俺達はついにこの辺りの領主であるクロード様と対面した。

 座っているクロード様は思っていたより、若い。

 もしかしたら俺と同じくらいかもしれない。


「クロード様、山田殿です」


 クロード様を見ていると、フェリクスさんが紹介してくれる。


「はじめまして。私が南にある開拓村の村長を務めております山田タツヤです。お会いできて光栄です」

「うむ。私がクロードだ」


 クロード様が頷いた。


「先日、このモニカが報告したと思いますが、この度、開拓村の目途が立ち、国より正式に村として認められました。これもクロード様のご協力あってのことです。誠に感謝いたします」


 実は何をしてくれたのかをわかっていないが、一応、頭を下げておく。


「たいしたことはしてない。まあ、私も国に仕える者として開拓村の成功は大変喜ばしい。それで山田殿が自分で管理すると聞いたが、まことか?」

「はい。そのようにしようと思っております。幸い、このモニカも前村長だったダリルも力を貸してくれますし、皆で協力していこうと思っております」


 頑張ろう!


「そうか……まあ、わかった。とはいえ、この町から近いわけだし、何かあれば言ってほしい。できるだけの協力はしよう」


 ありがたい言葉だ。


「ありがとうございます。早速なのですが、一つ協力をお願いしたいと思っております」

「うむ。先日、モニカ殿からあらましだけは聞いている。商人を紹介してほしいとのことだったな?」

「はい。村としての目途が立った理由がリンゴという果物が生る木を発見し、それの安定供給が可能になったからです。それでリンゴを卸す商家を探しているのです」

「それについては可能だ。私も領主として商人ギルドに顔が利くし、取引のある商人を何人も知っておる。とはいえ、そのリンゴなる果物がどのようなものかを知らないと紹介はできない」


 商人ギルド……

 組合みたいなものだろう。


「もちろんです。本日、そのリンゴをお持ちしました」


 そう言うと、空間魔法からリンゴを取り出す。


「空間魔法か……タダシ殿の孫だったかな?」

「はい。祖父が先日、亡くなり、祖父の意向もあって跡を継ぎました。それであの村にやってきたのです」

「そうか……わかった」


 爺さん、有名人だったのかな?


「クロード様、これがリンゴでございます」


 クロード様がついているデスクにリンゴを置いた。

 すると、クロード様がリンゴを手に取り、じっくり見だす。


「ふーむ……結構、しっかりしているな」


 リンゴは硬いからな。


「これならそこまで傷付かずに運搬も可能かと」

「確かに。して、味は?」

「そのリンゴを実際に食してもらうのが一番かと」

「それもそうだな……フェリクス」


 クロード様が声をかけると、フェリクスさんが近づいてくる。

 そして、リンゴを受け取ると、退室していった。


「山田殿。貴殿は魔法使いということだが、どれくらいのものなのだ?」


 そう言われてもな……


「申し訳ありません。実は魔法使いになったばかりで修行中の身なのです。祖父が亡くなってから魔法使いになったもので」

「なるほど……短期間で空間魔法を習得したということか。それはさぞ有望なのだろうな」

「どうでしょう? あまり比較する者がいませんので」


 そもそもモニカ以外の魔法使いを知らない。


「ふむ……あ、そうだ。山田殿、正式に村として認められたのなら村の名前を決めてほしい」


 名前か……


「リンゴ村?」


 モニカに確認する。


「わかりやすくて良いと思います」

「じゃあ、そうしようか。クロード様、リンゴ村ということで」

「わかった」


 俺とクロード様がその後も話をしていると、フェリクスさんが皿を持って、戻ってくる。

 もちろん、皿の上にはカットしたリンゴが乗っていた。

 フェリクスさんがそのままデスクに皿を置くと、クロード様がカットされたリンゴを手に取る。


「ふむ……これがリンゴか。どれ……」


 クロード様がリンゴを一口食べた。


「なるほど……」

「いかがでしょう? 私共としてはこれを名産として売り込みたいと思っております」

「うむ。いけると思う。瑞々しいし、甘い。これは売れるだろう。それでどれだけ供給できるのだ?」

「その辺りについては私から説明いたしましょう」


 モニカが前に出る。


「ふむ」

「リンゴにつきましては月に最低でも100個以上はお約束できると思います」


 スーパー肥料があるし、もっと卸せると思うが、ここはモニカに任せよう。


「ほう? そんなにか?」

「はい。またこのリンゴは日持ちもするので王都までも供給可能です」

「王都にもか……」


 明らかにクロード様の目の色が変わった。


「はい。ですが、先日も申した通り、我らにはこのリンゴを売るすべも王都まで運ぶすべもありません。ですので、是非ともクロード様のお力添えをいただければと考えております」

「わかった。して、このリンゴをどれくらいの価格で売るつもりだ?」

「まだどれくらいまで供給できるかは未知数ですので、とりあえず、最初は卸し先に銀貨1枚くらいと考えております」


 高いような安いような……

 わからないな。


「銀貨1枚? これをか?」

「はい。最初はそれくらいと思っております。如何なる商品も知らなければ何もできません」

「……わかった。リンゴをすぐに100個、用意できるか?」


 クロード様がそう言うと、モニカが俺を見てくる。

 俺が話せということだろう。


「クロード様、本日はリンゴを100個ほど持ってきております。あ、いえ、99個でした」


 1個は食べちゃった。


「これを100個か……いや、わかった。とりあえず、その100個は私が買い取ろう。後日、商人をそちらの村に向かわせる。こちらも商人ギルドと相談しないといけないのですぐには決められないのだ」


 商人も何人もいるし、ギルドがあるならすぐには決められないわな。


「わかりました。では、リンゴをお渡しします」

「うむ。フェリクス、任せたぞ」

「かしこまりました。山田殿、モニカ殿、別室に参りましょう」


 俺達はフェリクスさんにそう言われたので部屋を出た。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

【次にくるライトノベル大賞2025 エントリー】
https://x.gd/OSPb9
― 新着の感想 ―
リンゴの実りが少ないとの意見が散見されるが、スーパー肥料を使って急成長させた代償として実りが少ないと考えれば、そこまで違和感は感じられません。
[気になる点] 植えてる本数に対して収穫数が少な過ぎて違和感しかない
[良い点] 雑な名前だなw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ