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第054話 斬りませんよー


 俺は時折り来るキョウカの【勉強楽しくなーい】【つらーい】といったメッセージに励ましの返信をしながら本を読んでいる。

 そうやって過ごしていると、時刻は夜の9時を回った。


「モニカ、帰らなくていいの?」

「もう少しだけお願いします」


 大丈夫かね?


「今さらだけど、嫁入り前の娘さんがこんな時間に男の家に来てもいいもんなの?」

「貴族はマズいでしょうね。でも、私は庶民なんで……それに私はタツヤ様にお仕えする身ですから問題ありません」


 そんなもんかねー?


「お風呂にでも入りますか? 結構、歩きましたし、お疲れでしょう?」


 モニカの横に座っているルリが提案する。


「お風呂……この世界のですか……」

「別にいいよ。ルリ、教えてあげて。俺はもう少し、ミリアムと魔法の勉強をするから」

「わかりました。モニカさん、少し休憩しましょう」

「そうしますか……」


 2人は立ち上がると、リビングを出ていった。


「山田、山田。お前、モニカとキョウカのどっちが良いにゃ?」


 ミリアムと2人きりになると、ミリアムが興味津々に聞いてくる。


「んー? どういう意味? どっちもいい子だとは思うけど……」

「いや、女として」


 あー、そっちか。


「どっちも美人だし、かわいい子だとは思うよ。スタイルもいいし、すごいよね」

「なんでそんなに他人行儀なんだ?」

「関係ないことだからね。俺はもうそういうのを諦めている」


 中学生の時に高校に入れば彼女ができると思っていた。

 高校生の時に大学生になれば彼女ができると思っていた。

 大学生の時に社会人になれば彼女ができると思っていた。

 そして、社会人になった時にそのうち、彼女ができると思っていた。

 その結果が今だ。

 30代になった時に諦めた。


「枯れてるにゃー……まだ十分に若いのに」

「まあ、そうかもね。でも、今は十分に楽しいし、ルリやミリアムがいてくれるから別にいいかな」


 2人共、かわいいし。


「山田……撫でるにゃ」


 ミリアムがそう言って膝の上に乗ってきたので背中を撫でる。

 素晴らしい毛並みだ。

 キョウカに【ミリアムを撫でると幸せになれるね】と送った。

 返信は【涙】だった。


「寂しくないのはわかったけど、彼女は別じゃないかにゃ?」

「頑張って動くほど欲しくないって感じ。今は他にやることがあるし」

「じゃあ、例えばだけど、向こうが告白してきたらどうするにゃ?」


 モニカとキョウカか?


「ないない」

「例えばの話にゃ。修学旅行でする恋バナにゃ」


 俗っぽい上級悪魔猫だなー。


「わかんない。年が離れすぎてるし」

「キョウカはともかく、モニカは普通にゃ」

「そうなの?」

「あっちの世界的にはそこまで差が開いてはないにゃ」


 へー……

 だからまだ若いって言ってくれたのかね?


「どっちみち、わかんないわ。もちろん、2人共、いい子だし、不満があるわけじゃないけどね」


 というか、そんなことが言える身分ではないし、不満を言ったら石を投げられそうだ。


「そうかー……」

「何かあるの?」

「いや、私はあっちの世界の猫だからにゃ。あっちの世界では結婚するのが普通にゃ」

「こっちの世界ではそうでもなくなってきてるからねー」


 昨今は未婚率もかなり上がった。

 昔は結婚してないと、周りがどうのこうの言ったり、勧めたりしたそうだが、今はそういうことは一切ない。

 俺自身も係長だった時、部下にそういう話題を絶対に振らないように心掛けていた。

 上司に聞かれて嫌だったことは俺も部下にしないようにしていたのだ。


「ふーん、そっかー。まあ、なるようになるかにゃ……山田、斬られるのを防ぐ魔法を教えてやるにゃ」

「会話の流れがおかしくない?」

「実はそんなにおかしくないんだにゃー。いいから教えてやるから覚えておけ。回復魔法があっても首を斬られたら意味ないにゃ」


 なんで首?

 人斬りキョウカちゃんに斬られるわけじゃあるまいし。


 それでもなんとなくミリアムに防御魔法を教えてもらっていると、ルリが一人で戻ってきた。


「遅かったね?」


 使い方が難しかったのだろうか?


「モニカさんの家に行って着替えを取りに戻ってたんですよ。どうせなんでモニカさんの分も洗濯しようと思って」


 あ、そういうことか。


「ふーん……モニカが上がったらルリも入っていいからね。俺は今、忙しい」

「何をしているんです?」

「よくわからないけど、ミリアムが斬られるのを防ぐ魔法を教えてくれている」

「あー……良いと思います。そんなことをする人ではないですけど、すぐに刀を抜く人っぽいですしね」


 何故か、ルリも同じ人間を想像しているようだ。


「だ、大丈夫かな……?」


 怖くなったのでキョウカにメッセージを送ってみることにした。


 山 田 :キョウカって人を斬らないよね? 人を斬るのが好きじゃないよね?

 キョウカ:何度も言いますけど、あの刀は人を斬れませんよー


 ちょっとホッとしたが、人を斬るのが好きという言葉には言及していないのが気になった。


 そのままミリアムに魔法を教わっていると、モニカが風呂から上がり、代わりにルリが風呂に向かった。

 モニカはすぐにパソコンの前に行くと、画面を見続ける。


「お風呂はどうだったー?」

「すごく良かったです。ボディーソープとシャンプー、リンスなんかは素晴らしいですね」

「売れる?」

「売れます。大流行するでしょう。ですが、それを売ると、スローライフと離れる可能性がありますね」


 それもそうか……


「じゃあ、やめとくか」

「売るのはやめて、献上品にするべきですね」

「献上品?」

「一言で言えば、賄賂です。貴族の婦人なんかに献上すれば、後ろ盾を得ることができるかもしれません」


 賄賂か……

 きな臭い気もするが、所詮はシャンプー……


「いける?」

「お任せを」


 その後、ルリが上がったので俺も風呂に入る。

 そして、11時くらいになると、モニカがパソコンを消した。


「夜分遅くまで申し訳ありません」

「全然いいよ。この世界のことがわかった?」

「いえ、まだまだといったところです」


 そりゃそうか。

 そんな短時間ではわからないだろう。


「まあ、いつでも来てもいいから」

「ありがとうございます。明日も早いので私はこれで失礼します。色々とありがとうございました」

「ん。おやすみ。また明日ね」

「はい。おやすみなさい」


 モニカはそう言って頭を下げると、帰っていった。


「俺達も寝るか」

「おやすみにゃ」


 ミリアムは寝床の段ボールに入っていく。


「ルリもおやすみ」

「はい、おやすみなさい」


 ルリも自室に戻っていったので俺も自分の部屋に戻り、就寝した。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
シャンプーとか化学物質だけど浄水どうすんの? 汚染されるよ?
[一言] 良く解らないけど、何でモニカはパソコンの字を読めたの?
[良い点] ミリアムに癒される! [一言] 夜なんだし、モニカを送ってあげないと!
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