表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/227

第048話 実った!


 俺達は家を出ると、村の中を歩きつつ、東のリンゴ園を目指す。

 すると、数人の畑仕事をしている人や追いかけっこをしている子供達と会い、挨拶を受けた。


「なんか皆、元気だね」

「食料が安定しましたし、村としての目途が立ったからです。皆、健康になってきましたし、やる気に満ちています」

「責任重大だねー……」


 もうここまで来たら見捨てることはできない。

 最後まで責任を取らないと。


「その辺りはこの私とダリルさんにお任せを。今はダリルさんが村の皆から要望を集めているところです」


 モニカとダリルさんがいなかったら絶対に運営できないな。

 給料は弾もう。

 まあ、まだ村としての収入がないんだけど。


「統治はどうするの? 税金? 年貢?」

「いずれはそのようになります。ですが、細かいところは後ですね。まずは村の方向性を決めないといけません。タツヤ様は何かありますか?」

「正直に言うと、大きくなりすぎると運営していく自信がない。そこそこでいいと思ってる」


 目的はスローライフだし。


「まあ、タツヤ様の本業は大魔導士様ですからね。わかりました。その辺も踏まえて計画を練ります。あ、あれがリンゴ園ですね」


 モニカが指差した方向には確かに俺達がリンゴの苗木を植えた場所だった。

 だが、苗木は立派な木に成長しているし、赤い実を実らせている。


「りんごにゃ!」

「すごいですねー」

「本当にね」


 スーパー肥料、すごいわ。


「私も帰ってすぐに見ましたが、素晴らしいと思いました」


 モニカが絶賛してくれると、リンゴの木を見ていたコーディーさんが俺達に気付き、近づいてきた。


「やあ、山田さん……じゃない、村長」


 俺達のもとにやってきたコーディーさんが言い直す。


「別に山田でいいですよ」

「そうですよ。タツヤ様はすぐに村長ではなく、閣下と呼ばれるんですから」


 呼ばれないよ。


「名称が変わるのはめんどくさいから山田さんでいいや。それで、山田さん。見ての通り、リンゴが見事に実ったぞ」

「大変じゃなかったですか?」

「いや、指示はもらってたし、そんなに大変でもない」


 ルリが描いた絵付きのノートか。


「それは良かった。コーディーさんがやってたんです?」

「管理者が俺ってだけで皆でやったぜ」


 コーディーさんが管理者になったのか。


「コーディーさん、タツヤ様に報告を」


 モニカがコーディーさんに指示をする。


「モニカ。お前、人が変わりすぎてびっくりだよ……えーっと、このリンゴ園と畑の収穫から例の肥料、スーパー肥料だっけ? あれの効果の検証をしてみた」


 命名がスーパー肥料になっちゃった。

 まあ、外に出すわけじゃないからいいか。


「どんな感じです?」

「まずだけど、畑の方。収穫までの時間が大幅に短縮できるのはわかっていたことだが、収穫してすぐに種を植えても芽は出てこなかった。だが、10日くらい日を空けたらどんどんと成長していくことからある程度のインターバルが必要なんだと思う」


 なるほどね。


「わかりました。それを踏まえて野菜やリンゴを収穫してください」

「ああ。リンゴは150個くらいは収穫できると思う」


 一度に150個もか。

 すごいな。


「1人1個は自分達で食べてくれて結構ですから。皆で育てたリンゴですのでね」


 せっかくのリンゴ園なんだから皆も飽きるくらいには食べるべきだろう。


「そうか? 実は皆、気になっていたんだよ。悪いな」

「いえいえ。それで食の方は問題ないですか?」

「一つあるな。野菜は十分だが、主食となる小麦のことがある。小麦はこの森では育たない。実際、試してみたが、スーパー肥料でもダメだった。だから小麦だけは町から買ってこないといけないだろう。今までは援助でどうにかなったが、正式に村として運営するならそこが大事になる。まあ、詳しくはダリルさんに聞いてくれ。そういう陳情や意見を集めてたし」


 モニカもそう言ってたな。


「わかりました。ダリルさんのところに行って話してきます。リンゴの収穫の方をお願いします。町に行って卸先を探してきますので」

「わかった。じゃあ、人を集めてくるわ」


 コーディーさんはそう言うと、村の方に走っていった。


「俺達もダリルさんのところに行こうか」

「はい。こちらです」


 場所は知っているのだが、モニカが秘書らしく案内してくれる。


「そういえば、家は新しくなってた?」


 急いで作ってたけど……


「ええ。びっくりしましたね。あのボロ屋がきれいになってましたから。しかも、何故か魔道具付きです。なんで私の家だけ?」


 あっ……

 村の皆の罪悪感が見える。

 急いで用意したんだろうな。


「モニカさんはタツヤさんの秘書でナンバー2ですから」


 ルリがフォローする。


「ダリルさんもだと思うんですけど……」


 まあね。


「お年を召した男性と若い女性が一緒なわけないじゃないですか」

「うーん……まあ、そうですかね? 早く皆の分も用意したいところです。気が引けますし」


 皆も気が引けているんだよ……

 モニカのことを忘れてたから。


「リンゴで儲けたらまずはその辺りを整備することだろうね」

「そうですね。頑張りましょう」


 俺達が話をしながら歩いていると、ダリルさんの家に到着した。

 

お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

― 新着の感想 ―
りんごの木20本から150個しか取れない・・・? 現代の植物を使うなら収穫量なんかは調べておくべきではないかと。 もしくは一本の木からの数が取れない理由をつけて、 説明があった方が良いところですね。
[一言] 林檎の木はググればすぐ出ると思うけど木の大きさや種類で異なるけど大きい物だと70から80は取れるらしいですよ 少なくても40から50は収穫できるぽいので150個だと2本から4本しか植えてない…
[良い点] この世界のアルコール事情次第では、リンゴをシードルやブランデーにしようものなら貴族たちが黙ってませんねこれは… なんならリンゴジュースだけで成り上がれそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ