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第045話 どうするか


 ウチに橘さんと一ノ瀬君がやってきた。


「山田さん、まずは俺達とチームを組んでくれてありがとう」


 意外にも一ノ瀬君が礼を言ってくる。


「いや、いいよ。俺も勉強になるしね。一ノ瀬君も橘さんも俺とは違う魔法というか術を使うみたいだし」


 もっとも、猫大好き人斬り娘は一切、参考にはならないし、参考にしてはいけないけど。


「どうも。それでちょっと気になることを言ってもいいか?」

「なーに? 俺の魔法がなんか変?」


 そう聞くと、一ノ瀬君が口を開けたまま真顔で止まった。


「ん? どうしたの?」

「あ、いや……そういうことじゃなくて、もっと単純なこと。山田さんって俺のことを苗字で呼ぶよな?」

「そりゃね。君らもじゃないか」


 社会人だもん。

 名前で呼ぶことなんてない。


「あ、まあ、そうだけどさ。山田さんは知らないかもしれないけど、俺の家って結構、古いんだよ」

「深くは知らないけど、そういうことも聞いたね」

「それでさ、ウチは古い家で一族も多いから苗字で呼ぶのはやめてほしい。違和感があるんだ」


 そうなの?


「そんなもんなの?」

「そんなもんなんだよ」


 へー……


「ユウセイ君って呼べばいいわけ?」

「そんな感じ」


 慣れ慣れしい気もするが、織田信長だって、信長と呼ぶことはあっても織田とは呼ばないし、そんなものかもしれない。


「まあ、ユウセイ君がそれでいいならいいよ。あ、俺は山田でいいからね」

「わかった」


 まあ、そういうことあるか。


「あ、あのー……私も」


 橘さんがおずおずと手を上げた。


「あー……橘さんのところも似たような感じなわけ?」

「そうですね。同じです」


 歴史がある家ってそうなんだろうか?

 じゃあ、桐ヶ谷さんも下の名で呼んだ方が良いのかな?


「えーっと、キョウカさんでいいの?」

「キョウカ。呼び捨てにしろ」


 橘さんが人斬りキョウカちゃんになった。


「あれ? 橘さん、暗示は? 今日は刀を持ってないようだけど……」

「………………」


 すげー。

 目が合っているのにガン無視だ。


「呼び捨て?」

「呼び捨て」


 このこだわりは何だ?


「じゃあ、キョウカと呼ぶよ」

「ぜひ、そうしてください、タツヤさん」


 この子のことで考えるのはやめた方がいいかもしれない。

 世代差じゃないレベルでよくわからない。


「まあいいや。それじゃあ、例の件を話し合おうか」

「そうだな」

「はい!」


 橘さん……じゃない、キョウカはミリアムを抱いたまま話をするんだろうか?


「協会から報告の催促が来たんだって?」

「ああ。今日、キョウカと一緒に病院での診察結果を報告して、細かい手続きなんかをしてきたんだ。あ、山田さんも病院に行く時は協会指定の病院に行かないといけないからな」


 そうなんだ……

 でも、確かに切り傷なんかがあって、普通の病院に行ったら根掘り葉掘り聞かれて最悪は警察を呼ばれてしまう可能性もあるか。

 まあ、俺には回復魔法があるから大丈夫だとは思うけど。


「わかった。それでその時に学校の悪魔の報告をしろって言われたわけ?」

「そうなるな。あの日、軽く説明はしたけど、詳細は後ってことにしてあったんだ。ほら、キョウカが気絶してたし」

「それもそうだね」


 まあ、気絶したのはおばけが怖かったからだけど。


「そういうわけでこの前の悪魔のことを報告しようと思うんだけど、どうする? 主に危険度をどうするかってことだな。ネームドだったし、あの呼ばれたって言葉が気になる」


 そんなところだろうね。


「報告はすべきだね。危険度はCってことで良いと思うよ。ただネームドだったことと誰かに呼ばれたってことは報告しよう」

「確認だが、Cでいいか? 俺が見た限り、最低でもBだったし、Aも十分にあり得る」

「そのことも伝えていいよ。というか、曖昧だったってことで。魔力は高かったけど、そんなに強くなかったし」


 ユウセイ君とキョウカを吹き飛ばした魔法はすごかったけど、それ以外は遅かったし、そこまでって感じだった。


「……十分に強かった気もするが、わかった。じゃあ、そんな感じで報告しておく。キョウカもそれでいいか?」

「え? あ、うん」


 聞いてなかったな……

 キョウカはずっとミリアムを見てるか、キョロキョロと部屋を見渡していた。


「ハァ……まあいいや。それと今後のことだけど、山田さんの都合はどんな感じ?」


 ユウセイ君は何かを諦めたようだ。

 俺も何かを考えるのをやめた。


「俺はいつでもいいよ。君らに合わせる。今でも十分に儲かってるしね。来週には給料が入るし」


 ようやく固定給50万円が入る。


「羨ましいな」

「本当です」


 2人は一切、お金が入らない。


「バイト扱いじゃなかったっけ?」

「親が管理だよ」

「私、テストの平均点でお小遣いが決まります……」


 学生さんはそうかもなー。

 しっかりとした親御さんだと思うが、やはり俺だけもらうのは気が引ける。


「親御さんの意向もあるからさすがにお金を分けるわけにはいかないけど、奢ってあげることはできるから昼ご飯でも食べに行こうか。好きなもんを頼みなよ。出前でもいいし」

「じゃあ、ピザ」


 早い……

 ユウセイ君は本当に即決だなー……


「ピザね。キョウカもそれでいい?」

「えへへ。それでいいです」


 キョウカが照れながら同意する。

 何がそんなに嬉しいんだろう?

 この子の感情が本当にわからない。


「ちょっと待ってね」


 立ち上がると、リビングを出て、ルリの部屋に向かった。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
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