表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/227

第037話 上級悪魔


「一つ聞いてもいいかな?」

「何かな?」

「何だ?」


 2人はまったく姿勢も態度も変わらない。


「俺が行かないと言ったら帰るの?」

「もちろんだよ。あなたがリーダーだ。そして、私達はそれを認めている。だから当然、その決定に従う」

「まあ、そうだな」


 2人は当然のように頷く。

 そこに嘘は見えない。


「でも、君ら、一度、帰ってもまた来るでしょ?」


 多分、そうだ。


「へー……」


 一ノ瀬君が感心する。


「よくわかるね?」


 橘さんは笑みを浮かべたままだ。


「まあ、そんな気がするだけ。リーダーの決定に従うんじゃないの?」

「従うとも。だからチームとしては動かない。後は個人の話だね。騙すような形になるのは承知しているし、悪いとも思う。でも、私の家もユウセイ君の家もメンツというものがあることを理解してほしい。危ないから引き返して他の人に任せますというのはちょっとね……桐ヶ谷さんに何を聞いているかは知らないけど、協会と私達の家はあまり良い関係ではないんだよ」


 やっぱり不仲か。

 それにメンツ……

 歴史ある家と新興の協会では当然、考え方も違うだろう。


「じゃあ、選択肢はないじゃないか」

「いや、私はあなたがそれでも行くなと言うならそれにも従うよ。ユウセイ君は行くだろうけどね」

「なんで橘さんは行かないの?」

「あなたがそう言うからだよ」


 橘さんはまたしてもにやーっと笑う。


「意味がちょっと……」

「まあ、わからなくてもいい。でも、そうなるってことだよ。それで? どうするの? 私はどっちでも構わない。ユウセイ君もだろう」

「まあなー」


 答えは決まっている。


「一ノ瀬君一人に任せるわけにはいかないでしょ」

「かーっこいい。さすがはリーダー」

「あー、言ってみたい……やっぱり俺がリーダーをやるべきだった」


 なんか恥ずかしい。


「やるなら3人が揃ってる時でしょ」

「そうだね。うん、そうだ」

「じゃあ、行くか」


 2人が自席から立ち上がった。

 そして、教室を出ると、奥の多目的ホールに向かう。


「橘さん、大丈夫?」


 前を普通に歩いている橘さんに声をかけた。


「ああ、もう大丈夫だよ。かなり強い暗示をかけたからね。多分、解けたら気絶すると思うけど」

「大丈夫なの、それ?」

「怖いよりマシ。実際、私は中学校の修学旅行で行った遊園地のおばけ屋敷で気絶したことがあるからね」


 えー……


「あれは笑った」


 一ノ瀬君がははっと笑う。


「まあ、怖いからね。そういうのも青春だよ」


 精一杯、フォローする。


「青春か? 青春はもうちょっと甘い方がいいな。本当にそう思うよ……」


 橘さんが立ち止まって多目的ホールの扉を見る。


「キョウカ、どうした?」

「どうしたの?」


 橘さんはじーっと扉を見ていた。


「さて、運が良かったか、悪かったか……」

「運って?」

「運が良かったのはユウセイ君が死ななかったこと。悪かったのは私達全員が死ぬ可能性があること」


 橘さんがそう言った瞬間、扉の向こうからとてつもない魔力を感じた。


「危険度Bか、Aか……私やユウセイ君では歯が立たないね。でも、まあ、向こうも私達に気付いている。逃がしてはくれないね。どうしよっか?」


 橘さんはニヤニヤと笑ったままだ。


「なんで笑ってるの?」

「どうしようもないからだな。そういう時は笑う。やるか、やられるか。ただそれだけ」


 かっこいいんだけど、さっきまでへっぴり腰で泣いていたのは君だよね?


「じゃあ、行くよ」

「まあ、そうなるね」

「逃げられないっぽいしな」


 俺は前に出て、扉を開けた。

 すると、真っ暗で何も見えなかったので灯りをつける。


 多目的ホールはかなり広く、さっきの教室3部屋分の広さがある気がする。

 そんな部屋の真ん中には真っ黒な服を着た男が座っていた。


「こんばんは」


 男が俺達を見ながら挨拶をする。


「こんばんは。悪魔さんですか?」

「ええ。そうです。フィルマンと申します」


 紳士的だな。


「ネームド、か」

「なんでまた……」


 ネームド?


「名前があるとマズいの?」

「上級悪魔だよ」

「滅多にというか、普通は現れない」


 そうなんだ……

 つまりウチのミリアムさんもネームドなわけだ。


「なんで学校にいるんですか?」


 再び、フィルマンとかいう悪魔に聞く。


「なんで? 私にもよくわかりません。誰かから呼ばれたと思ったんですけど、誰もいないんですよ」


 呼ばれた?


「どういうことです?」

「さあ? まあ、わからないのでここで待機することにしました。上等なエサがいっぱいありましたので」

「エサ?」

「人間の子供です。私は人を食べる悪魔なんですよ」


 悪い悪魔だ。

 とんでもないな。


「それはやめてほしいです」

「私に死ねと? 食べないと死んじゃいますよ」


 あー……まあ、そうなるな。


「いや、ちょっとマズいんですよね」

「もちろん承知しています。ですが、恨むならそんな私を呼んだ者を恨みなさい。では、食事をします」


 フィルマンはそう言うと、立ち上がった。

 すると、次の瞬間、橘さんと一ノ瀬君が左右から襲い掛かる。


「ほう……魔法使いですか。なるほど、なるほど」


 フィルマンは感心してるだけで動こうとしない。

 そして、そんなフィルマンに2人が攻撃をした。


お読みいただきありがとうございます。

本日もローファンタジー部門の日間1位になれました。

皆様の応援のおかげです。


そういうわけでお祝いに今日は21時頃にもう1話投稿します。

引き続きよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

― 新着の感想 ―
[良い点] テンポがサクサクなのにおもしろい [一言] いいよいいよー
[一言] さて 1 光魔法などで撃滅 2 神聖魔法などで撃退 3 契約魔法などで使い魔化 4 逃げる(悪魔か主人公達どちらかあるいは両方) 5 それらの混合派生 6 悪魔が豹変して友好的に  どの…
[良い点] 上級悪魔さん、ミリアムに気付いてないのか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ