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第033話 悪魔「にゃー」


 あれから2週間が経った。

 その間、届いたのこぎりとやすりと丸太を村長さんに託した。

 また、ルリが翻訳したログハウスの作り方のノートも渡したので活用してくれると思う。

 その時に村を見て回ったのだが、畑では野菜がたくさん実っており、スーパー肥料は十分に使えることがわかった。

 その際、村人から感謝されまくり、本当に崇められている気がした。

 ちょっと気が引けたが、それだけ役に立っていると思うことにした。


 しかし、リンゴ農園の方はまだ作れていない。

 苗木を20本頼んだのだが、多すぎてちょっと時間がかかるらしいのだ。

 まあ、スーパー肥料があるし、そこまで急いでいるわけではないので問題ない。


 また、タイマー協会の仕事の方も橘さんと一ノ瀬君が選んだ仕事を放課後や土日にこなしていた。

 どれもそこまで危険度が高いわけではなかったし、橘さんと一ノ瀬君もちゃんとした子達なので問題も起きていない。


 問題は俺の通帳の方だ。


「すごい……」


 俺はスマホで預金を見ている。

 そこには褒賞金が振り込まれていた。

 まだ、固定給の方は振り込まれていないが、褒賞金だけで生きていける額だった。

 俺がタイマー協会に入ってから3人で仕事をした数は5。

 まだ2週間とちょっとしか経っていないのだが、すでに60万も振り込まれている。


「楽な仕事だにゃー……」


 スマホを覗き込んでいるミリアムが呆れた。


「まあねー……」


 心苦しいのはこの褒賞金が橘さんと一ノ瀬君には入らないことだ。

 一ノ瀬君なんかバイトをしているというのに……


「これで生活には困らない……にゃ? 橘にゃ?」


 スマホを見ていると、着信画面になり、橘さんの名前が表示されている。


「電話? 珍しいな……」


 いつもはメッセージアプリでやり取りをしている。

 授業の合間や夜によく他愛のないメッセージが来るのだが、今は平日の昼間だ。


「とりあえず、出るか…………もしもし?」

『こんにちはー。いきなり電話をしてすみません。お忙しかったですか?』

『こんちわっす』


 あ、一ノ瀬君もいる。


「暇してたところだけど、2人共、どうしたの? まだ学校でしょ?」

『お昼休みですねー』


 今は12時半ぐらいだし、それもそうか。

 俺達もそろそろ昼食を食べようと思い、今、ルリが用意してくれているところだ。


『なるほど。電話なんて珍しいね。何かあった?』

『はい。放課後……えーっと、4時くらいですけど、ちょっとお話しできませんか?』


 4時?

 俺はいいけど……


「大丈夫だよ。でも、今日は水曜だし、一ノ瀬君がバイトじゃない?」

『あ、そういえば……』

『忘れてた……』


 一ノ瀬君は忘れるなよ。


『休める?』

『うーん、いきなり当日はなー……』


 電話越しで相談が始まった。


『私が説明だけでもしておこうか?』

『悪い。それで』

『山田さーん、ちょっとユウセイ君がダメなんで私が話します。どこかで待ち合わせできません?』


 橘さん一人か。


「タイマー協会でいいんじゃない? あれだったらファミレスとかでもいいよ?」

『ファミレスがいいでーす』

「じゃあ、いつものところで待ってるよ」


 俺達が仕事をする際はタイマー協会の本部か2人が通っている学校近くにあるファミレスで待ち合わせるのだ。

 もちろん、ファミレスの場合は俺の奢り。

 大人だし、褒賞金のことを考えるといくらでも奢る。


『ありがとうございます! じゃあ、4時にファミレスで。よろしくお願いしまーす』

「はいはい……よろしくね」


 電話を切ると、スマホを置いた。


「何だろ?」


 ミリアムを撫でながら聞く。


「仕事とは思うけどにゃー……わかんないにゃ」

「まあ、とりあえずは聞いてみるか」


 わざわざ電話してくるくらいだし。


「できましたよー。アマトリチャーナです」


 はい?


 ルリがコタツ机に置いたのは赤いパスタだった。


「美味しそうだね」

「はい。テレビでやってましたので作ってみました!」


 この子、本当にテレビが好きだなー。

 子供なのにワイドショーとか昼ドラとか見てるし、主婦みたい……


「じゃあ、食べようか。あ、さっき橘さんから電話があって夕方にちょっと出てくるから」

「わかりました」


 俺達はアマトリチャーナとやらを食べると、夕方までのんびりと過ごす。

 そして、時間になったのでミリアムと共にタクシーを使ってファミレスまでやってきた。

 店に入り、店内を見渡すと、橘さん達と同じ制服を着た男女を数人見かけるが、その中には橘さんはいなかった。


 俺は店員にもう1人来ることを伝え、ドリンクバーを頼むと、適当な席に座る。

 そのまましばらく待っていると、店に橘さんが入ってきた。

 橘さんはキョロキョロと店内を見渡していたが、すぐに俺を見つけると、笑顔でやってくる。


「遅れてすみません」


 橘さんは謝りながら席についた。

 しかし、いつもは一ノ瀬君と共に対面に2人で座っているから橘さん一人だと違和感があるな……

 大丈夫?

 変な目で見られてないかな?


「全然だよ。同じ学校の生徒さん達もいるけど、大丈夫?」


 俺、怪しくない?


「大丈夫ですよー。山田さんは心配性ですねー」


 そら、そういう年齢だもん。

 本来なら話す機会もないし、話しただけで事案になってしまう。


「大丈夫ならいいや。何か頼む?」


 そう言って、メニューを渡す。

 すると、メニューを開いた橘さんが悩みだした。


「うーん……美味しそう……でも、カロリーが……今夜、走るか……?」


 橘さんはいつもこうである。

 一方で一ノ瀬君は即断即決で肉一択。


「好きなものを頼んでいいからね?」

「山田さんが悪魔に見えてくるなー……」


 悪魔はテーブルの上で丸まっているよ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] まぁ 「悪魔は笑顔を絶やさない」 とか 「地獄への道はきれいに舗装されている」 とか言いますから。
[一言] やはり制服だと事案臭がしますね
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