第032話 やっぱりかわいい
「では、あっちのことはモニカに任せるとして、私達も動きましょうか」
「そうですな。外に農具と肥料を出しておいてください。私が村の者を集めてきます」
「わかりました」
俺達は家を出ると、村長さんが村人を呼びにいったのでその間に空間魔法に収納していた農具一式と肥料を取り出し、待つことにした。
そのまましばらく待っていると、村の人達が続々と集まってくる。
そして、村長さんが最後の夫婦を連れて戻ってきた。
「皆、タツヤ殿が農具を提供してくださった。また、特別な肥料も提供してくださったぞ」
村長さんが村の皆にそう言うと、おーっという声があがった。
「コーディー、頼むぞ」
「わかった。皆、農具と肥料を持ってくれ。畑に行く」
村長さんが肥料のことを知っているコーディーさんに頼むと、コーディーさんが皆を指揮する。
すると、皆が俺に礼を言いながら農具や肥料を手に取り、コーディーさんと共に畑の方に向かっていった。
「タツヤ殿、畑の方はコーディーに任せましょう」
「そうですね。では、私達はリンゴ農園を作ります。木を植える場所はどこがいいですかね?」
「そうですなー……この前、タツヤ殿が広げてくださったところは農地にしたいですし、逆に東の方が良いかもしれませんな」
村長さんが考えながら提案してきた。
「わかりました。では、そっちの方も広げましょう」
「よろしくお願いします」
俺達は村長さんと別れると、村の東の方に行ってみる。
すると、やはり木が生い茂っていた。
「ここってどれだけ深い森なんだろう?」
一本の木に触れながら聞いてみる。
「実はわかっていません。そのくらいに深い森であり、調査も進んでいないんです」
「そんなところをいきなり開拓か……」
本当にダメで元々なんだな。
「逆に言うと、完全に手付かずなんですよ。開拓しただけ自分の領地です」
「山田王国にゃ」
ダサい……
いや、俺の名前なんだけども。
「国はいいかなー……それにそんなに大きくしても管理できないよ。適度な大きさでスローライフが一番」
「それもそうですね。それでリンゴの木をどれくらい植えましょうか?」
ルリが本題に戻した。
「そうだねー……取引が未定だし、広げようと思ったらいつでもできるわけだからまずは20本くらいでいいかな? 増やしすぎても村の人が30人しかいないわけだし」
「確かに労働力の問題もありますね。近い将来には人を集めることも考えないといけないでしょう」
人ねー……
発展すれば自然と人が増えるだろうし、それを待つか積極的に集めるかだな。
まあ、その辺は村長さんとモニカと相談しよう。
「よし、とりあえず、木を切っていこう」
俺は前回と同じように魔法で木を切っていった。
またもや、スーツだが、まあ、慣れた。
「空間魔法の中にどんどんと木が貯まっていくなー……空間魔法の容量ってどれくらいなの?」
伐採作業を続けながら聞く。
「術者の魔力に依存します。タツヤさんは魔力が非常に高いですから余裕でしょう」
「ふーん……でもさ、木ばっかりになっていくよ?」
「木も木材になりますから村人が使うと思います。冬になれば薪も必要ですし」
ストーブなんかないだろうし、そっちかー。
もしかしたらそういう魔道具があるのかもしれないが、まだ買えない。
「提供しようか」
「それが良いと思います。それに村人達の家もどうにかした方が良いかと」
確かに……
「プレハブでも買う?」
いくらするんだろ?
「プレハブは目立ちますし、高いと思います。のこぎりと丸太があれば村人達が勝手に作るんじゃないですかね?」
のこぎり良いな。
加工には便利だ。
「のこぎりとやすりを買うかなー。高いものじゃないし」
「良いと思います。タツヤさん、切った木を出してください。私が枝を落としておきましょう」
「私も暇だから手伝うにゃ」
ミリアムも手伝ってくれるらしい。
「じゃあ、お願い」
2人に任せることにし、前回の分の木を出すと、ルリが枝を落とし、できた丸太と枝をミリアムが回収していった。
俺も再び、伐採作業に戻り、木を切っていく。
そのまましばらく木を切っていると、リンゴの木が20本くらいは植えられるスペースができた。
「こんなもんかなー?」
「こちらも終わりました」
「にゃ」
2人も終わったようで周囲を見渡してみると、さっきまで森だった場所がきれいな耕地に変わっていた。
「魔法って本当にすごいな」
現代でもこんなに早く伐採はできないだろう。
「すごいのはタツヤさんですよ」
「そうにゃ、そうにゃ。早くリンゴの木を植えるにゃ」
猫さんは欲望に忠実だな。
「植えるにしても苗木を買わないと」
あと、のこぎりとやすりと肥料。
「よし、戻って買うにゃ」
「じゃあ、今日は帰るか」
俺達は村長さんに挨拶をすると、家に戻った。
そして、早速、リンゴの苗木を20本、のこぎりとやすりを10セット、さらには肥料を注文すると、一息つく。
「タツヤさん、このログハウスの作り方っていう本を買っても良いですか?」
リビングでまったり過ごしていると、タブレットを見ていたルリが顔を上げた。
「本? いいけど、村の人達は読めなくない?」
文字の読み書きができるのはモニカと村長さんだけだ。
もっと言うと、こっちの世界の文字だから読めるのは魔法使いであるモニカだけ。
「私が図解してわかりやすいようにします」
「大変じゃない?」
「大丈夫です。他にやることはないですし、私、絵を描くのが得意なんです」
趣味なのかな?
「じゃあ、お願い。本はそんなに高くないだろうし、好きに買っても良いよ」
「ありがとうございます」
ルリは礼を言うと、タブレットをタップし、ノートを取り出した。
そして、タブレットを見ながら何かを描き始める。
「あ、電子書籍か。便利だねー。色鉛筆でも買ってこようか?」
文房具屋に売ってるだろ。
「いいんですか?」
「色があった方がわかりやすいでしょ」
白黒はちょっとね……
「じゃあ、買いに行ってきます。夕飯の食材も買いたいですし」
「一緒に行こうか?」
「はい」
ルリは嬉しそうだ。
非常にかわいい。
「私も行くにゃ!」
ミリアムが段ボールから出てくる。
この子も非常にかわいい。
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