第231話 まるでバラのように綺麗
「おー! タツヤさんが浮いてます!」
「すごいですね!」
俺は1メートルくらい浮いており、キョウカとモニカが感心した表情で見上げている。
さらに上昇していき、5メートルは浮いた。
「ほら、スカートはダメ」
「確かにちょっと遠慮したいですね」
仲良く俺を見上げながら頷き合うな!
こえー! こえー!
5メートルでもこえー!
「山田、暴れるな。魔力の消費が激しくなる」
「おー! おー!? おー!!」
たけー!
もう10メートルは飛んでるぞ!
「聞いてないにゃ……」
俺達はその後も浮き続ける。
「ミリアムー。鳥になってるよー!」
もう30メートル以上は飛んだんじゃないかと思う。
もはや正確にはわからない。
だが、あれだけ高い大森林の木を超えてしまった。
「私は猫にゃ」
おー!
「虎に翼ということわざが浮かんだー!」
「わかったから落ち着くにゃ。ほれ、あそこに岩山が見えるだろ」
ミリアムが言うように先には縦に高い岩山が見えた。
「ホントだ」
「ほれ、あっちは湖だ」
ミリアムの尻尾が指す方向には確かに湖が見えた。
「ホントだ! 距離的はそこまで遠くないな」
こんな近いところに湖があったのか。
「数百メートルっていったところにゃ。釣りでもするか?」
「なんかとんでもないものが釣れそうだけどね……」
でも、ちょっと気になる。
「すごいだろ? もうちょっと高く飛んでみるか?」
「いや、ちょっと降ろして」
「情けない奴にゃ」
いや、急に空の旅に連れていかれてビビらない奴はいない。
「一回、一回降ろして」
「わかったにゃ」
俺達は徐々に降下していき、地面に降り立った。
「どうでした?」
キョウカが聞いてくる。
「なかなかエキサイティングだったね。多分、夢に出る」
今日はルリと寝よ。
いつもだけど。
「へー……岩山や湖は?」
「結構近くにあったね。モニカ、知ってる?」
モニカはこの村に2年近く住んでいるから知っているかもしれない。
「いえ……森の調査をする余裕もなかったですし、危ないですからね。結界があるから平和に見えますが、魔物だけでなく、普通に猪や熊も出ますから」
そうだ……
田舎はそういった獣に農作物を食べられる被害が多いんだった。
でも、結界があるからそういう害獣が侵入できないんだ。
「うーん、岩山もだけど、湖も気になる……結構、大きかったし」
「行ってみます?」
「うーん……いや、さすがに今日は遅いからないかな」
すでに4時半であり、辺りも暗くなり始めている。
森は暗くなるのが早いのだ。
「じゃあ、明日行きましょうよ。岩山で岩を調達した後に湖を見に行きましょう」
明日は日曜だから学校はない。
「せっかくの休みなのにいいの?」
「気になりますもん。異世界ですよ?」
まあ、確かにな。
「モニカ、大丈夫?」
「ええ。私は何もお手伝いできませんが……」
いてくれるだけでいいんだよ。
「じゃあ、明日行こうか」
「はい。ユウセイ君を働かせましょう。きっと焼肉で頷きます」
まあ、人手は多い方が良い。
帰ったら聞いてみるか。
「うん。じゃあ、帰ろうか」
俺達は研究室を抜け、リビングに戻る。
そして、ルリに今日あったことを説明すると、自分の爪を見始めた。
「やってみる?」
キョウカがそう聞くと、ルリがうんうんと頷く。
おしゃれがしたい年頃なのかもしれない。
俺はキョウカがルリの爪を磨き始めたのでスマホを取り、ユウセイ君に電話する。
『もしもーし、山田さーん?』
ユウセイ君だ。
「お疲れー。今、電話大丈夫?」
『スマホを弄ってただけだから大丈夫』
「あのさー、明日、暇?」
『明日? 暇だけど? 山田さんが異世界に行かなかったらお邪魔しようかと思ってたし』
よし、暇だ。
「焼肉奢ってあげるから手伝ってくれない?」
『何? またキョウカ関係? もう結婚しちゃえよ』
ひどい誤解だ。
「いや、それじゃなくてさ。温泉を作るために石を運びたいんだけど、手伝ってくれない? ユウセイ君も空間魔法が使えるでしょ?」
『あー、例のスローライフね。いいぞー。焼肉食いたいし』
さすがはユウセイ君。
できた男だよ。
「じゃあ、お願い。ついでに湖も見に行くから」
『は? ピクニックか? キョウカかモニカさんと行けよ』
「いやさー、リンゴ村の近くに湖があったんだよ。それを見に行こうかと思って。付き合ってよ」
『異世界かい……なんかすげーのが出そうだな。キョウカを落としてみるか? 綺麗なキョウカが手に入るかもしれないぞ』
綺麗なジャイア〇……
いや、斧か。
「俺は今のままのキョウカが好きだよ」
『あっそ』
冷たい……
「お姉ちゃん、痛い……」
キョウカがルリを抱きしめていた。
「まあ、そういうわけだから明日、ウチに来てよ」
『はいよー。わかったー』
電話を終えたのでスマホを切り、コタツに置く。
「もう! タツヤさんったらユウセイ君に何を言うんですかー?」
キョウカが照れている。
「いや、ユウセイ君に湖の話をしたらキョウカを落としてみようって言うもんだから。綺麗なキョウカが手に入るぞって……」
「私はジャイア〇か……」
あ、やっぱり知ってた。
漫画好きだもんな。
「ユウセイ君だから……とにかく、ユウセイ君も明日来るってさ」
「綺麗なユウセイ君いります?」
「落とさないで」
ユウセイ君は綺麗だよ。
あ、いや、キョウカも綺麗だけどね。
「ふーんだ。ルリちゃんもお姉ちゃんが綺麗だと思うよね?」
「んー? お姉ちゃんは美人だと思います」
ルリは知らんわな。
「そうじゃなくて、性格」
「爪、綺麗です……」
ルリが華麗にキョウカをスルーして、綺麗にしてもらった自分の爪を見る。
「ルリ、良かったね」
ルリが嬉しそうで何より。
「はい。お姉ちゃん、ありがとうございます」
「うん……いつでもしてあげるからね」
ルリは夕食の準備をしにキッチンに向かう。
キョウカはルリのサメのぬいぐるみを持ちながら首を傾げていた。
いや、俺は心も綺麗だと思ってるよ……
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
私が連載している別作品である『最強陰陽師とAIある式神の異世界無双』のコミカライズが連載開始となりました。
ぜひとも読んでいただければと思います(↓にリンク)
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