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35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~  作者: 出雲大吉
第6章

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第230話 飛ぶ


 お茶会という名の美容講座が終わり、ラヴェル侯爵のお屋敷をあとにすると、借家に戻り、リンゴ村の研究室の前に転移した。


「タツヤさん、長くなってすみませんでした」


 キョウカが謝ってくる。


「いや、いいよ。おかげさまでクラリス様も承諾してくれたから」


 これで俺達はクラリス様にものを渡すだけでいい。


「クラリスもマリエル様もああいうのが好きなんですよ」


 モニカが苦笑いを浮かべた。

 そういうモニカの爪は普通だ。

 モニカは最低限のことはするが、あまり派手にはやらない子なのだ。


「まあ、そういう人達だからこそシャンプーなんかを売ったわけだしね」

「ですね。キョウカさんはおしゃれですし、美意識が高いですから助かります」


 そういえば、よくルリに教えているわ。

 さすがは華のJK。


「キョウカ、あのヤスリみたいなもののお金も出すから選んでくれる?」


 2人からくれという要望があったのだ。


「わかりましたー。それで何をするんですか? 帰らないんです?」


 あ、そういえば、キョウカはミリアムと遊ぶのに夢中で話を聞いてなかったわ。


「ほら、温泉を作る話を進めようかと思ってね。あと、モニカの家」

「モニカさんの家ですか? この辺に作るんです?」


 キョウカが木を切って平地となっている空間を見る。


「そうそう。モニカの家って遠いじゃん。せっかくお風呂から上がったのに帰るまでに冷めちゃう」

「まあ、そうですね…………タツヤさんが転移で送ればいいのでは?」


 この子って本当にバカなのかな?

 賢くない?

 いや、俺が気遣いができないんだ……


「ま、まあ、そうだね……でもほら、モニカは朝から来ることもあるしさ」


 最近はルリもゆっくり起きるため、俺達が起きる前にモニカが来ていることも多い。


「うーん、確かにそうですね。それでどの辺りに作るんです?」

「えーっとね、棒で地面に描いたんだよ。まず、キョウカの案を採用して、この研究室から通りというか廊下を作る」


 地面には研究室の出入口からずーっと2本の線が伸びており、途中で曲がって平地に伸びていた。


「確かに描いてありますね。研究室とモニカさんの家というか部屋を繋ぐわけですね?」

「そうそう。あとはまだ作れないけど、セカンドハウスとこれから作る温泉も繋げる」

「なるほど。温泉は良いですよね。入りたいです」


 キョウカも温泉は好きらしいからな。

 そのためにモニカやルリと色々と揃えていた。


「うん。それでね、この村とハリアーの村の舗装工事が終わって、村人達の手も空きそうだから通りとモニカの家、あと温泉は作りたいなって思っているんだ」

「ほうほう。例の魔法は?」

「完成したらやる。モニカの部屋にもパソコンを置いてあげたいからね」


 よく見てるし。


「研究室はどうするんです? あれって見えないんじゃなかったですっけ?」

「一時的に結界を解く。その後にまとめて結界を張る予定。村の人達を信用してないわけではないけど、さすがにね」


 爺さんの本があるし、異世界はマズい。


「なるほどー。では、今日はその確認ですか?」

「うん。まあ、時間もないし、温泉だね」


 俺達は廊下ができる予定の2本線の間を歩いていき、穴が開いている温泉予定地までやってきた。

 自然を重視して、ちょうど森との境界辺りだ。

 ちゃんと結界は張るので野生の動物や魔物、他にもいないと思うけど、覗き魔は入れないし、覗けない。


「この穴ですか……どうやるんです?」

「この前の温泉を参考にして、石とセメントでどうにかする」

「できます? 難しいような?」


 まあ、素人だし、専用の機械もないしな。


「調べてみるとそこまで難しくなさそうなんだよ。魔法があるからね」

「あ、確かにそうですね。タツヤさんは色々な魔法が使えますし」

「ミリアムとルリのおかげだね」


 あと爺さんが残してくれた本。


「でも、セメントと石って用意できるんです?」

「セメントはネットでもホームセンターでも売ってるから大丈夫。問題は石だね。森の中にあるんだけど、結構な量が必要そうなんだよ」

「あー、確かにそんな感じはしますね。セメントばかりだと無機質ですし」


 ホントにね。


「そうそう。だからそれが大変なんだよね」

「手分けします? ユウセイ君も空間魔法は使えますし、皆で手分けするんです」


 それも考えたんだが、森はなー……

 危険だし、迷子の可能性もある。

 あと、多分、さすがにモニカがへこむ。

 モニカ、空間魔法を使えないし……


「山田、石材ならあっちにいっぱいあるぞ」


 肩で大人しくしていたミリアムが尻尾で西の方を指す。


「いっぱいって?」

「あっちに岩山がある。そこから採取すればいいだろ」

「え? そんなのがあるの? ここって森じゃないの?」


 大森林って言うくらいだから木しかないのかと思っていた。


「いや、森だけど岩山もあるぞ。もっと言えば、南に湖もあるぞ」


 え? マジ?


「全然、知らない……ミリアム、よく知ってるね」

「そりゃ飛べば見えるからにゃ」


 ミリアムが肩から離れ、目の前に浮く。


「あ、そっか。ミリアムは飛べるもんね」


 それでも肩にいてくれるのは俺のため。

 可愛くて良い子なのがウチのミリアムさんなのだ。


「そうそう。だから飛べばわかるぞ。お前も飛ぶか?」


 ん?


「飛べるの?」

「そりゃ魔法だからにゃ。そんなに難しくないにゃ」


 マジ?


「ルリも飛べる?」

「さあ? 飛べるんじゃないか? でも、飛ばないだろうな」


 ん?


「なんで?」

「キョウカ、お前でもできると思うが、飛びたいと思うか」

「いやー、ちょっと……」


 キョウカがもじもじしながら下半身を抑えた。

 あー、スカートだと見えちゃうのか。


「ジーパンとか穿けば?」


 パンツスタイルなら大丈夫。


「私は穿きません。絶対にスカートです」


 こだわりかな?


「そっか……しかし、空を飛ぶってなんか怖いな」


 今もやっているけど、竹とんぼみたいな道具で飛んでいるアニメを子供の頃に見ていた。

 あの頃から思っていたが、絶対に怖いだろ。


「落ちてもお前の防御魔法なら問題ないにゃ」

「それはそうなんだけどねー……」


 わかっていても怖いものは怖い。

 バンジージャンプと一緒。


「仕方がないにゃー。ちょっと試してみるにゃ」


 ミリアムが肩に戻った。


「試しって……あれ!?」


 なんか足が……うわっ!

 浮いてるし!


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

コミカライズが更新されておりますのでぜひとも読んで頂ければと思います。(↓にリンク)


よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
ルリがスカートで飛んでいるのを下から←通報されました とりあえず竹とんぼは単行本第一話でいきなり落下しているからなあわ
>キョウカの案を採用して、この研究室から通りというか廊下を作る それ、どう見てもお妾さんをが暮らす「はなれ」じゃん・・・
Sのロゴ入ったぴちぴちの青いシャツ着て? 中の方かな 赤いマントはつけてね
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