第225話 ちょっと懐かしい
翌日、魔道具関係の本を読みながらルリとミリアムと配線の転移について相談していた。
すると、昼前くらいにモニカがやってくる。
「こんにちは」
「やあ。今日は遅かったね」
モニカはいつも早く来て、朝食を食べるのに今日は来なかった。
「ええ。朝からちょっと報告を受けていましたので」
報告?
「何かあったの?」
「いえ、大事があったわけではありません。ハリアーとリンゴ村間の舗装工事が終わったんですよ」
おー! 終わったのか!
「それは良かったね」
「はい。その報告や書類、給金なんかをダリルさんと話し合っていました」
なるほどね。
「大丈夫? 手伝おうか?」
「いえ、私達でできますし、あらかた終わったので問題ありません。あとはダリルさんがまとめてくださいます」
モニカは当然だけど、ダリルさんも有能だからな。
安心して任せることができる。
「なら大丈夫だね」
「はい。そこでなんですが、ハリアーの町に行きませんか?」
ハリアーはクロード様が治める隣町だ。
最近は王都ばかりに行っていて、ハリアーには行ってない。
「ハリアーに?」
「はい。クロード様にこの度のお礼をした方がよろしいのではないかと思いまして」
あー、そういうことか。
確かにお金を半分も出してもらったわけだし、直接礼を言った方が良いだろう。
ラヴェル侯爵もクロード様とは仲良くしておけって言ってたし。
「じゃあ、そうしよっか。ちょっと道を見てみたいしね。昼ご飯を食べたら行こうか」
「はい。そうしましょう」
俺達はルリが作ってくれた昼食のラーメンを食べると、準備をする。
そして、研究室を抜け、村の中を通ると、門を開け、外に出た。
「おー、道だ」
「いい感じですね」
「確かにこれなら馬車もスムーズにゃ」
村から先に続く道はこれまでの土の道ではなく、石材で舗装された綺麗な道になっている。
これなら馬車の振動もないだろうし、雨が降ってぬかるむこともない。
俺達は舗装された道を歩いていき、確認していく。
「うん。バッチシだね」
「はい。皆さんも頑張ったようです」
ありがたいね。
俺達はその後も歩いていき、ある程度の道を確認すると、転移を使い、クロード様の領地との境界である道が分岐しているところまで飛んだ。
「ここも道ができてるね」
「ですね」
ここからウチの村までの道は当然ながらハリアーの町への道、王都まで繋がっているらしい道も石材で舗装がなされている。
ただ、左方向の道はがたがたの土のままだ。
「あっちは開拓村だったね」
「はい。バルトルトと共に盗賊になった開拓村があります。もっとも開拓村はすでに潰れています」
監査官も盗賊に加担した村人も死んでいるからな。
それにウチ以外は上手くいかなかったっぽい。
当然、クロード様としても舗装をする必要がないから放置のままだ。
「何とも言えないね。行こうか」
俺達は歩き始め、ハリアーの町に入る。
ハリアーの町は王都ほどではないが、相変わらず、人が多く、賑わっていた。
「変わらないねー」
騒がしくもなくて、程よい町だ。
「クロード様はできた御方と評判ですからね。この町は平和です」
そういう領地がお隣なのはすごく運が良かった。
「逆に平和じゃないところもあるわけ?」
「大きな声では言えませんがありますね。町に入るだけでお金を取ったり、重税を課したり、中には治安が悪い町もあります」
まあ、そういうところもあるか。
「王様は何も言わないの? 年に一回ほど監査官が来るんでしょ?」
年貢なんかの確認に来るらしい。
なお、ウチは100年くらい来ない。
「その程度では言いませんね。不作などの都合もありますし、貴族は貴族で力が強いですから」
重税や治安が悪いのはその程度なんだ……
やっぱりそういう世界なんだな。
「ウチはそうならないようにしようね」
「もちろんです。いらぬトラブルは避け、平和に生きましょう」
まったくだ。
俺達は街中を歩いていき、クロード様のお屋敷の前までやってきた。
「こんにちは」
「おや? 山田男爵……じゃなくて辺境伯。ごきげんよう」
門番の兵士に挨拶をすると、笑顔で挨拶を返してくれる。
「ええ。クロード様はおられますか? 舗装工事のお礼をと思って、立ち寄らせていただきました」
「かしこまりました。少々、お待ちください…………あの、失礼ですが、こちらの子は?」
門番の兵士がルリを見る。
そういえば、ルリを連れてきたのは初めてだ。
「娘のルリです」
「おー! そうでしたか! とても利発そうですし、可愛らしい子ですね」
この兵士、できるな……
「でしょう?」
「ええ。それはもう……では、ちょっと取り次いできます」
兵士が敷地内に入り、走って、お屋敷に向かう。
そのまましばらく待っていると、兵士がフェリクスさんを連れて戻ってきた。
「ご無沙汰しております、辺境伯」
フェリクスさんが姿勢よく頭を下げる。
舗装工事の提案をされた時以来だが、フェリクスさんも元気そうだ。
「こんにちは。今日は我々の方が来ましたよ」
「わざわざありがとうございます。クロード様がお会いになるそうです。どうぞ、中へ」
フェリクスさんに案内され、屋敷に入る。
そして、正面の階段を昇り、廊下を歩いていくと、奥にある扉の前で立ち止まった。
「クロード様、山田辺境伯をお連れしました」
フェリクスさんが扉をノックしながら声をかける。
『ああ、入ってもらってくれ』
中からクロード様の声が聞こえると、フェリクスさんが扉を開け、部屋に入った。
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