表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/227

第022話 仕事始め


 モニカさんを雇った後は家に戻り、通販で農具や肥料を注文した。

 最近は翌日に届くことが多いが、少し時間がかかるようだった。

 それでも今週中には届くみたいなのでまた来週にでも異世界の村に行ってみようと思う。


「さて、モニカの勧誘は上手くいったね」


 注文を終えると、ルリが淹れてくれたコーヒーを飲む。


「お見事です。くすぶっている人の心をくすぐる良い勧誘だと思います」

「そりゃそうにゃ……」


 まあ、桐ヶ谷さんに言われて嬉しかった言葉を言っただけだからなー……


「モニカが名産品って言ってたよね?」

「そうですね。やはりこちらの世界のものが良いんじゃないですかね?」

「機械や工芸品はやめて、この前、ルリが言った通り、農産物が良いと思うにゃ。森に生えてたから育てたと言い切ればいいにゃ」


 確かになー。

 それにモニカが言っていたように農具みたいなのを売って、その技術で武器を作れって王様とかに命令されても無理だしなー。

 単純に嫌だし。

 やはり農産物だろう。


「例の肥料があるし、選択肢が増えるな……果物の木でも良いわけだし」


 最初は収穫の早い野菜かなと思っていたが、例の肥料のおかげで何年もかかる木でも十分に可能だ。


「そちらの方が自然かもしれません。森なわけですし」

「リンゴが良いと思うにゃ」


 ん?


「なんでリンゴ?」

「あっちの世界にリンゴはないにゃ。だから物珍しさと美味しさで人気になるにゃ。あと、私が好きにゃ」


 自分の好みかい……

 まあ、俺も嫌いじゃないし、別にいいけど。


 俺はネットでリンゴの栽培について調べてみる。


「あ、普通に苗木を売ってるし……」


 これすらもネットで買える時代か……


「とりあえず、2本くらい買ってみるにゃ。実験して、良ければリンゴ農園を作るにゃ。それが良いにゃ」


 猫さんの圧が……


「じゃあ、頼んでみるか……これは明日、届くらしい。すごいな……」

「よしよしにゃ。残っている肥料をスーパー肥料に変えて、育ててみるにゃ」


 スーパー肥料……


「わかったよ」


 俺は計画を決めると、この日は爺さんの本を読むことにした。


 翌日、今日は月曜であり、いつもの俺なら死んだ目で起きていたことだろう。

 だが、あら不思議。

 今日は目が輝いている自覚があるくらいに快調だ。


 俺は朝食を食べ終えた後、優雅な気分でコーヒーを飲んでいる。

 ルリはテレビのワイドショーで芸能人の不倫報道を真剣に見ており、ミリアムは俺の膝の上で丸くなっている。


「学生時代の夏休みの初日を思い出すね。実に気分が…………ん?」


 優雅にコーヒーを飲んでいると、スマホの着信音が鳴る。

 スマホを手に取り、画面を見ていると、桐ヶ谷さんの名前が表示されていた。


「桐ヶ谷さん? 何だろう?」


 こんな朝からと思ったが、普通に出勤している時間と思い、通話ボタンを押す。


「もしもし?」

『山田さんですか?』

「ええ。おはようございます、桐ヶ谷さん」


 軽快に挨拶をした。


『おはようございます。今、電話大丈夫でした?』

「もちろんですよ。どうかしましたかね?」

『山田さんは今日から正式にウチの人間になりましたから挨拶ですね』


 そうか……

 俺は今日からタイマー協会の人間か。

 しかし、入ってみると、やはり名前のセンスが気になってしまう。


「わざわざありがとうございます。無理をしない程度に頑張りたいと思います」

『良い心がけです。実は最初に無茶をする方もいらっしゃるんですが、その点、山田さんは安心ですね』


 そんな歳でもないしな。


「小さい子がいますしね」

『良いことです。それとなんですが、お渡しするものや今後のことでお話がありますのでお時間が空いた時で構わないので協会に来ていただけますか?』


 あそこか……

 事情聴取後も説明を受けに何回か行っている。


「わかりました。ちょうど時間が空いていますのでこれから伺おうかと思います」

『そうですか。では、お待ちしています』


 通話を切ると、スマホをコタツ机に置く。


「ルリ、ちょっと協会の方に顔を出してくるよ」

「わかりました」


 ルリはこちらを見て、頷いたが、すぐにテレビでやっている不倫の謝罪会見に視線を移す。

 そんなに面白いんだろうか?


「ミリアム、来る?」

「行くにゃ」

「わかった。じゃあ、着替えてくる」


 膝に乗っているミリアムをどかして立ち上がると、自室に行き、スーツに着替える。

 そして、リビングに戻ると、ミリアムを抱えた。


「ルリ、リンゴの苗木が届くと思うから受け取っておいてくれる?」

「わかりました。いってらっしゃいませ」


 俺とミリアムはルリに留守を任せると、家を出て、電車まで向かう。


「電車かー……」


 ミリアムは嫌そうだ。


「もうこの時間だとあそこまでは混んでないよ」

「そうにゃ? それは良かったにゃ。でも、これから金持ちになるんだから車を買っても良いと思うにゃ。この前の桐ヶ谷の車はすごかったにゃ」


 確かにすごかった。

 しかも、後から聞いたのだが、あれは自家用車らしい。


「免許は持ってるけど、仕事で社用車に乗っていたくらいであまり乗ってないからねー。まあ、車を買うのはいいかもしれない。実は俺、釣りが好きなんだけど、車がないと厳しいんだよ」


 遠いもん。


「それが良いにゃ。お前が痴漢で捕まるところなんか見たくないにゃ」


 捕まらないよって言い切れないのが怖い。

 通勤時もそれだけは注意していた。

 もちろん、冤罪でって意味ね。


 俺達は駅に着くと、電車に乗り込み、タイマー協会の本部に向かった。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【販売中】
~書籍~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

― 新着の感想 ―
[一言] リンゴの流れが自然すぎた……
[良い点] ルリちゃんはワイドショーから何を学ぶのか
[一言] 道具運べるからいい車買うのがいいよね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ