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第218話 家からの卒業


 桐ヶ谷さんとの電話を終えると、魔法の研究を再開する。

 そして、夕方になり、スマホのアプリで銀行の残高を見て、ニマニマした。


「ミリアム、見てごらん。これが俺の貯金だよ」


 ミリアムにスマホを見せる。


「良かったにゃ。お前が幸せそうで私も嬉しいにゃ」


 よしよし。

 可愛い子だ。


「今日の晩御飯は何が良い?」

「刺身」

「ルリ、買ってきてあげて。ルリが好きなネギトロも買っていいから」

「わかりました!」


 可愛い子達だ。


 刺身で家庭教師を頑張ってくれと思っていると、村を見に行っていたモニカが戻ってきた。


「ただいま戻りました」


 モニカが隣ではなく、斜め右のコタツに入る。

 時間的にそろそろキョウカが勉強をしに来るからだ。


「おかえり。今日の晩御飯は刺身になったけど、モニカは何が良い?」

「私は何でも好きなので皆さんが好きなので構いませんよ。しいて言うならサーモンですかね」

「わかった。ルリ、お願いね」

「わかりました」


 ルリは頷くと、キッチンに行き、冷蔵庫の中身を確認しだした。

 買い物に行くのだろう。


「モニカ、村の様子はどうだった?」

「いつも通りですね。ただ、ラヴェル侯爵から連絡があったようです。陛下が呼んでいるから来てほしいとのこと。時期の指定はありません」


 あれから2週間は経っている。

 ようやくか……


「指定がないと言っても早い方が良いよね?」

「もちろんです。さすがに今日はないですが、今週のどこかで行った方がいいでしょう」


 そうなると、やはりキョウカはないか。

 学校があるし、何よりも試験に集中してほしい。


「モニカ、明日は行ける?」

「私は問題ありません」

「ミリアムもついてきてくれるよね?」


 コタツ大好きさんには悪いが、やはりミリアムに来てもらった方が良い。


「行ってやるにゃ」

「ありがとう。モニカ、明日の昼に行くって伝えてくれる?」

「かしこまりました」


 モニカは立ち上がると、村に向かうためにリビングから出ていく。

 ルリもまた買い物に出かけていったので俺とミリアムは魔法の研究を再開した。

 そして、モニカがすぐに戻ってきて、ルリが戻ってきたタイミングでキョウカが来たので魔法の研究をやめる。


「タツヤさんもお勉強です?」


 キョウカがカバンを置き、隣に座った。


「まあね。魔法の研究」

「前に言ってた電気なんかのインフラを通す魔法ですっけ?」

「そうそう。結構難しいんだよね。ただ、延長コード通すだけだし、転移自体の仕組みはそんなに難しくないからできると言えばできるんだ。でも、魔力消費がでかいからそれを維持するのがちょっとね」


 起きてる時はできないこともないが、寝てる時や留守の時に切れてしまう。

 モニカの家に電気やネットを通してあげたいし、何とかしたいと思ってる。


「難しいんですねー」

「そうなんだよ。まあ、時間はあるし、気長にやるよ」


 まずは温泉を作って、モニカの家を作ろう。

 モニカも寝る時以外はほぼリビングにいるし、電気はその後でもいいだろう。


「へー……素人考えですけど、研究室の扉を開けっ放しにして、延長コードなりを通せばいいんじゃないですか?」


 ………………。


「ん? ま、まあ……そうだね。でも、外を通さないといけないし、扉を開けっ放しというのもね……」


 気付いていたさ!

 でも、ほら、ね。


「確かに見た目も悪いですね」

「そうそう」


 そうだよ、そうだよ。


「山田、よく考えたらあの扉は次元転移だよな?」

「そうだね。ここと村を繋いでいるわけだし」

「爺さんが死んでも起動したままだな……」


 そういやそうだ。


「魔法というよりは魔道具か……」

「多分、そうにゃ。爺さんは魔法使いでもあったが、例のスーパー肥料や薬を作れる炊飯器のように魔道具も作ってたにゃ」


 それだ。


「魔法でどうにかするんじゃなくて、魔道具作成の方に力を入れるか」

「そうするにゃ。研究室に本があると思うから取ってきて読んでおくにゃ。私はアホに勉強を教えるにゃ」

「アホでーす……ご迷惑をおかけしまーす」


 キョウカがカバンから教科書や参考書を取り出す。


「今日は?」

「数学!」

「数学……」


 ミリアムが暗くなった。

 数学はキョウカの苦手科目なのだ。


「モニカ、ちょっと研究室を漁るのを手伝ってくれる?」

「わかりました」


 俺は『頑張れ、ミリアム』と思いながらモニカとリビングを出ると、研究室の扉を開ける。


「うーん、やっぱり次元転移だよね?」

「次元転移がよくわかりませんが、この扉がここと異世界を繋いでいるのはわかりますね」


 何回か扉を開け閉めしてみる。


「普通の扉にしか見えない……」

「謎が多いですね」

「ホントにね」


 俺達は研究室に入ると、本棚を漁っていく。

 そして、魔道具関係の本を何冊か見繕うと、リビングに戻り、読むことにした。

 皆で勉強会をしていると、ルリが刺身定食を作ってくれたので食べる。


「タツヤさんが釣ったんですか?」


 おっ、挑戦状か?

 よし、新しい釣竿も注文したし、今度行こう。


「いや、ルリがスーパーで買ってきたやつだね」


 まあ、マグロもサーモンも釣れんよ。

 そもそもサーモンって養殖だし。


「へー……」

「そういや今日、桐ヶ谷さんから電話があったんだけど、君らの実績を加味するっていう件は前向きに進んでいるらしいよ」

「おー、それは良かったです」


 うんうん。


「キョウカはお金が入ったら何か買いたいものとかあるの?」

「色々ありますねー。でも、初任給が入ったら最初に家族を旅行に連れていきますね。卒業旅行です!」


 それ、卒業旅行って言うか?


「良いことだね。親御さんも喜ぶと思うよ」


 やっぱりこの子はとても良い子なんだよ。

 うんうん。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

現在、カクヨムネクストで投稿中の『その子供、伝説の剣聖につき』の無料話数が8/31までの限定で拡大となり、第1章の全40話が丸々読めます。

この機会にぜひとも読んでいただければと思います。(↓にリンクあり)


よろしくお願いします!


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その旅行に連れて行かれそう… タツヤさんは私の家族です!って
ニマニマする額の預金なら、銀行から口座を増やすとか金融商品勧められないのか?
高校を卒業したら即この家に転がり込む気だな! キョウカが妊娠中の悪魔退治の仕事をどうするかも検討しないとすぐに困る事になるな!
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