第215話 家と家族が大事
皆で悪魔教団のことを話した翌日の金曜日。
朝起きると、コタツにはすでにこちらの世界の服を着たモニカがいた。
「おはよう……」
眠い……
「おはようございます。昨日は遅かったんですか?」
「ベッドに入ってからセカンドハウスのことを考えてて、スマホを弄ってたんだよ」
最終的には隣で寝ているルリが起きちゃったので寝た。
「その辺りも考えていきたいですね」
「そうだねー」
「ふわぁ……朝ご飯を作ります……」
ルリが眠そうな感じでキッチンに向かう。
そして、ルリが作ってくれた朝食を食べ、食後のコーヒーを飲むと、準備をし、リンゴ村に行くことにした。
「あれ?」
リンゴ村に来たのだが、誰もいない。
「あー……トランプやリバーシを提供しましたよね? 大流行しており、皆さん、家でやってます」
「それか……」
まあ、楽しいわな。
たくさんの娯楽がある現代社会で生きる俺達でもやれば盛り上がるし、楽しい。
実際、キョウカやユウセイ君を交えて皆でやった時は盛り上がった。
リバーシはモニカがあれだったけど……
「特に子供達がハマってしまい、親御さん達が制限をかけたくらいです。もっとも、その親御さん達もハマってますけどね」
「モニカも村の人達とやった?」
「いえ……皆さん、私とはやってくれません。特にリバーシです」
そりゃね……
全部真っ黒にされたら心が折れるわ。
「モニカ、そういうのが強そうだよね」
「何気にパソコンのオンラインチェスとか将棋をやってたにゃ。全勝してたにゃ」
もはやそれで生きていけるでしょ……
「好きなんですよ。こちらの世界でも似たようなゲームはあります。クラリスに友達を失くすからあんたはやらない方がいいって言われましたけど」
クラリス様をボコボコにしたんだろうなー……
「まあ、楽しんでもらえているならいいや。結界を張り直そう」
俺達は門の方に向かうと村と森の境界沿いを時計回りに歩いていき、結界を強固なものに張り直していく。
もちろん、研究室やセカンドハウス建築予定地もだ。
そうやって歩いていると、リンゴ園にやってくる。
現在は冬なため、農作物の栽培はしていないが、リンゴ園だけは稼働している。
スーパー肥料は季節関係なく、実らせてくれるのだ。
「おっ、山田さんじゃないか」
リンゴ園にはコーディーさんがおり、リンゴを収穫していた。
「こんにちは。収穫ですか?」
「ああ」
えーっと……
「御一人です?」
他の人は?
「今は舗装工事があるからな。他の男共はそっちに行っているんだ。俺はここの管理があるから残った」
「女性陣は?」
リンゴの収穫は重労働ではないし、女性でも子供でもできる。
「いや、トランプで負けた」
それか……
本当に楽しんでいるな。
「博打にハマらないでくださいよ」
「わかってるよ。それよりも山田さん達は何してんだ?」
「結界の張り直しですよ。やっぱりこの前の盗賊が怖かったですしね」
悪魔教団のことを言うわけにはいかないからな。
多分、言ってはいけないことだし、村人を不安がらせる必要もない。
「ありがたいことだが、山田さんは心配性だな」
「そういう性分なんですよ」
「へー……まあ、俺達にとってはそれくらいが安心できるな。じゃあ、頑張ってくれよ」
コーディーさんが仕事に戻ったので俺も結界の張り直し作業に戻る。
そして、村を一周し、門のところまで戻ってきた。
「これでいいかな?」
「はい。問題ありません」
「完璧にゃ。上級悪魔が来ても大丈夫にゃ」
手伝ってくれたルリとミリアムが頷く。
「じゃあ、帰ろうか」
俺達は結界を張り直すと、家に戻り、コタツで冷えた身体を温める。
そして、昼食を食べると、モニカと一緒にショッピングモールに向かった。
「えーっと……グラッセ伯爵夫人は……」
モニカがメモを見ながら要望のあったネックレスを選んでいる。
俺はそれを眺めながらももう一度、モニカの誕生日に贈るネックレスを確認していた。
モニカの誕生日は3週間後になる。
これは一昨日のパーティーでクラリス様に確認したから間違いない。
「タツヤさん、ネックレスはこの4つで大丈夫だと思います」
さすがに店員がいるところではモニカも様付けでは呼ばない。
「じゃあ、それを買おう」
「はい」
俺達はネックレスを購入すると、またもや本屋に行き、本を見ていく。
そして、3時過ぎにはショッピングモールをあとにし、帰ることにした。
「モニカ、悪魔教団のことをどう思う?」
車を運転しながら助手席にいるモニカに聞く。
「危険な組織だと思います。こちらの世界の話を聞いていてもそう思いますし、ミリアムさんという例外もいますが、悪魔は危険な存在です。それを信仰し、力を得ようというのはロクなことにならないと思います」
まあ、そうだわな。
「ミリアムはああ言ってたけど、本当に放っておいていいと思う?」
「はい。まずですが、今回のパーティーでのテロは城です。つまり城に出入りできた人物が召喚の魔法陣を設置したということになります。これの意味するところは城の人間もしくは、あの場にいた貴族達の中に悪魔教団の関係者がいるということになります」
俺もそう思った。
手口が名古屋支部と同じなのだ。
「俺達では厳しい?」
「貴族の抗争に巻き込まれる可能性が出てきますのでおやめになった方がよろしいかと思います。タツヤ様はご自宅とあの村を行き来し、平穏な生活を送りたいと思っておられますし、私もそう思います、もちろん、ルリさんとミリアムさんもそうでしょう。トラブルはなるべく避けるようにするべきと具申します」
モニカもそう思うか。
まあ、そうなんだろうな。
「必要以上に村を大きくするのもやめた方が良いね」
「はい。貴族との衝突は避けるべきと改めて思いました。恨まれず、妬まれずで行きましょう。我らはたまたまリンゴという果物が当たっただけの村と森の管理人です」
大きくすると、ラヴェル侯爵も敵が増えると言っていたからな。
「そうしようか」
ミリアムもモニカもこう言っている。
ならばこれが正解なんだろう。
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