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第214話 俺は少年漫画の主人公じゃない


「山田、こういうのは最悪なことを想定した方が良いにゃ」

「最悪か……悪魔教団はまだ生きている?」

「ああ。悪魔教団は私達が想定していたよりもずっと大きい組織かもしれん。日本にいたのは日本支部の連中ってことだろうにゃ」


 あの港が本丸ではなかったということか。


「悪魔教団の成り立ちは協会の元メンバーだったよね?」


 キョウカとユウセイ君に確認する。


「そういうことになってますね」

「日本から異世界に浸透したと考えるより異世界から日本に浸透したって考えた方が納得できるな。宗教観が薄い日本で悪魔信仰って中々ないし」


 確かに……


「そっちの方が生贄も納得できるにゃ」

「悪魔召喚の代替ってやつ?」


 ロザリーが教えてくれたやつだ。


「ああ。どうやって生贄で悪魔を呼べるのかを知ったかを考えれば異世界から知ったと考えるのが妥当にゃ。何しろ、失敗しているんだからにゃ」


 ロザリーいわく、方法というか手順が違っていたらしい。

 だから悪魔を呼べなかった。

 じゃあ、なんで生贄で悪魔を呼べるということを知っていたのに失敗したのか……

 誰かに聞いたけど、上手く伝わっていなかったからと考えるのが妥当、か。


「タツヤ様、九分九厘、こっちの世界とあっちの世界の悪魔教団は同一でしょう」


 モニカが結論付けた。


「そうだね。そう考えて動こう…………それでなんだけど、これはどうするべき? 協会に説明できないよね?」


 協会は当然、異世界なんて知らない。


「異世界ですもんね……」

「信じてもらえないだろうな。信じさせるために転移やこの家の扉をくぐらせるという手もあるが、大問題になる」


 キョウカとユウセイ君が怪訝な表情を浮かべる。


「それはやめた方が良いと思います」

「私もそう思います。問題が悪魔教団に留まりません。最悪は侵略戦争が起きます」


 異世界という土地があるわけだからな。

 各国が喉から手が出るほど欲しい未開の土地。

 そして、それの急先鋒は次元転移が使える俺。

 絶対にごめんだ。


「それはやめたい。でも、だからこそ、協会の手が借りられない」


 俺達だけでやるのか?


「山田、無理して悪魔教団をどうにかしようと考えるのはやめるべきにゃ。あっちにはあっちの世界の兵士や魔法使いがいるし、こっちにはこっちの世界の魔法使いや警察がいる」


 それはわかるんだが……


「でも、あいつら、下手をすると、どっちかの世界に逃げられるってことだよね? 少なくとも、こっちの世界に接触した人間がいるわけだし」


 世界を跨げないから悪魔教団の討伐は難しい。


「仕事熱心なのは良いことだが、一切、報酬は出ないぞ? それにお前は正義の魔法使いになりたいわけじゃなくて、適当な金を稼ぎつつ、あの村でスローライフだろ?」

「まあ……」

「何のために魔法使いになった? 何のために貴族になり、リンゴ村を整備している? 悪魔教団なんて適当な奴らに任せておけ。お前にはお前の人生がある。目的を見失うな」


 確かに……

 悪魔教団の討伐も調査も高額な依頼があったからだ。

 実際、参加しない退魔師さんは休暇を取ったらしい。

 俺も本来ならその立場だ。


「放置?」

「協会からの依頼を待て。その依頼を見て、決めろ。日本の悪魔教団はなくなった。これが復活するかはまだわからんし、たとえそうなったとしてもお前には関係ない」


 そうするか……

 どちらにせよ、一般市民である俺は動きたいと思っても動きようがない。


「わかった。じゃあ、そうしよう。キョウカとユウセイ君もそれでいい?」

「私はタツヤさんに従います」

「俺もそれでいい。異世界のことだからどうしようもないし」


 2人が頷いた。


「そうなると、あっちの世界での貴族としての対応か……」

「タツヤ様、陛下から悪魔教団のことを聞いた後はどうなったんです?」


 モニカが聞いてくる。


「さっきも言った悪魔教団のことを軽く聞いただけだね。遅い時間だったし、王妃様も倒れちゃったからとりあえずは帰っていいってことになったんだ。また話をしたいから来てくれって言われている」

「なるほど……現場検証をしてからということですね。タツヤ様やキョウカさんが悪魔教団を知っていることは?」

「言ってないし、はぐらかしておいた。あっちの世界でもこっちの世界のことは言えないよ」


 好き勝手してる俺が言っても説得力はないけど、2つの世界は交わるべきではないのだ。


「それがよろしいかと思います。呼び出しの際には私も参りましょう」

「お願い」


 モニカがいてくれると心強い。

 武のミリアム、知のモニカ。


「私はどうしましょうか? 一緒に行った方が良いです?」


 キョウカが聞いてくる。


「陛下との悪魔教団の話はキョウカさんがいなくても大丈夫だと思います。いつ呼び出しが来るかわかりませんし、学業の方を優先してください」

「わかりましたー」

「あ、でも、マリエル様のところには行った方が良いと思いますのでその際はお願いします。心配しているでしょうし」


 俺もマリエル様やクラリス様が気になる。


「了解です。私もドレスをダメにしちゃったことをちゃんと謝りたいですしね。夕方か土日ならオッケーですので」

「わかりました。そのように進めます」


 異世界はそんなところかな?


「タツヤさん、タツヤさん」


 ルリが袖を引っ張ってくる。


「なーに?」

「悪魔教団が向こうにいるということですし、リンゴ村の結界を最大級のものにした方が良いと思います」


 なるほどな。


「リンゴ村の知名度も上がってきているし、そうしよっか」

「一緒にやるにゃ」


 ミリアムも手伝ってくれるらしい。

 なら安心だな。


「明日にでもやろう。モニカ、午前中にリンゴ村の周囲の結界を張り直すから午後から御婦人方から依頼されたネックレスを買いに行こう」

「かしこまりました。そのように」


 こんなものかな?


「ユウセイ君は明日バイトだよね?」


 明日は金曜日だ。


「そうだな。今日は退魔師の方を中止したし、バイトを休んでもいいぞ」

「いや、そこまでしなくていいよ。また月曜にやろう」

「了解」


 こんなものだな。

 結論としては保留というか、積極的に関わらず、これまで通りということだ。


 話を終えた俺達は各々が好き勝手するいつもの風景に戻り、皆で夕食を食べた。

 そして、キョウカとユウセイ君を送っていき、その後もいつものまったりタイムだった。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

山田のコミカライズが更新されておりますのでぜひとも読んで頂ければと思います。


また、来週は金曜にも更新します。


よろしくお願いします。

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悪魔教団ってショッカーのような感じがする。
ねこさんイケボでしゃべってそう・・・
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