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第209話 パーティー


 俺達は辺りが暗くなった夜道を馬車で進みながらお城へとやってくる。

 馬車から降りると、すぐ近くにある会場に通された。

 会場は広く、50メートル四方はあると思う。

 そんな会場に様々な料理が置かれた丸テーブルが所々に置かれ、そのそばでは俺達みたいな燕尾服やドレスを着た男女が集まり会話をしていた。


「ふむ。まだ陛下も王妃様もおらんか」


 確かに見渡す限り、2人の姿はない。


「侯爵、非常にマズいことを聞きますけど、王子様やお姫様はおられないのですか?」


 今さらながらまったく王家のことを知らないことに気付いた。


「うむ。確かに非常にマズいな。陛下には2人の男子と3人の女子がおる。内男子1人と女子1人は王妃様が産んだ子だ。他は側室だな」


 な、なるほどー。


「今日は来られないんです?」

「来ないな。来るとしたら王太子だが、殿下は北の地におられるから誕生パーティーには来ないだろう」


 ほ、ほう……?

 よくわかりませんな。


「なるほど」

「まあ、貴殿に関係のない話だ」

「あのー、このパーティーで私達はどうすれば? 侯爵にくっついておけと言われたんですけど」

「基本はそれでいいぞ。貴殿の領地は遠いし、交流を求める者もそうはおらん。リンゴのことや夫人が上級悪魔を討伐した件を聞きたい者達が来るくらいだろう。貴殿が娘を連れてきていたらまた話は別だろうがな」


 そう言われて会場を再度見てみると、まだ若い男女もおり、中にはルリとそう変わらない年齢の子もいる。


「なるほど。では、侯爵の腰巾着でいます」

「クラリス嬢がよく言うやつだな。まあ、それで良いと思う。クラリス嬢で思い出したが、コーラル伯爵には挨拶した方が良いのではないか?」


 コーラル伯爵……どこかで聞いたような……

 あ、クラリス様の苗字だ。

 つまりクラリス様の父親か。


「それもそうですね……えーっと」

「あなた、あそこです」


 キョウカが指差した先には確かに何か食べているクラリス様がいた。


「侯爵、挨拶に行って参ります」

「あ、いや、我らも行こう。昔からの仲だからな」


 お隣さんだもんね。


 俺達は4人でクラリス様一家がいる席に向かう。


「コーラル伯爵」


 ラヴェル侯爵がコーラル伯爵に声をかけた。


「ん? おー、ラヴェル侯爵、妙なところで会いますな」

「ほぼ毎朝、顔を合わせているとそう思うな」


 冗談だろうが、2人が笑い合う。


「ところで、侯爵、そちらは?」


 コーラル伯爵が俺を見てくる。


「先日、辺境伯に陞爵した山田殿だ」

「おー! リンゴの! 美味しかったですぞ!」


 コーラル伯爵は笑顔で手を握ってきた。


「こちらも喜んでもらえて嬉しいです。それとクラリス嬢にはいつも妻がお世話になっております」


 そう言って、クラリス様を見る。


「これは食べておきなさい。滅多に食べられないから」

「生ハムですね」

「知ってんの? 意外と舌が肥えてるのね……ってバカ! リンゴなんて取ってどうするのよ!? あんたのところのものでしょうが!」


 クラリス様とキョウカは料理を取りながら盛り上がっていた。


「いやー……おてんばで申し訳ない」


 まあ……


「そんなことありませんよ。妻と仲良くして頂いておりますし、モニカが学生時代からの友人でしょう?」

「そうですな。モニカ殿は賢い子だとは思っていましたが、あの子に目を付けるとは慧眼ですな」


 モニカを勧誘したことはリンゴ村における俺の最大の功績だと思っている。


「ありがとうございます。リンゴならいつでも提供させていただきます」

「それはありがたいですな」


 俺達はその後も他愛のない話を続ける。

 そうやって話をしていると、会場に陛下と王妃様が現れた。

 すると、一人、また一人と貴族達が奥さんや子供を連れて、2人に挨拶をする。

 そして、ラヴェル侯爵夫妻とコーラル伯爵一家も挨拶をし終えて戻ってきたので今度は俺とキョウカが2人のもとに向かった。


「王妃様、誕生日おめでとうございます」

「おめでとうございます」


 キョウカと共に一礼する。


「おー、山田か。見る限り、リンゴが売れておるぞ。お前に頼んで正解だった」


 陛下が言うように丸テーブルに切っただけのリンゴも並んでいたが、すでにほぼなくなっている。


「こちらとしても嬉しい限りです。良い営業になりますよ」

「それを見越してのことだ。感謝しろよ」


 嘘つけ。

 あんたが食べたいだけだろ。

 何個も取っていたのを見てたからな。


「王妃様、大変お似合いですよ」


 キョウカはキョウカで王妃様と話をしている。

 内容はやはりネックレスのことだ。


「ありがとうございます。辺境伯、これは本当にいただいてもよろしいのですか?」


 王妃様がネックレスに触れ、聞いてくる。


「もちろんです」

「感謝します」


 その後も王妃様と軽く話をし、挨拶を終えたのでラヴェル侯爵のもとに戻る。


「何話したっけ?」

「えーっと、アップルパイが美味しかったって言ってましたね」


 あー、そうだ、そうだ。

 いやー、本当に印象に残らない。

 多分、声質も関係しているな。

 鈴を転がすような良い声なんだけど、心地よすぎて内容が入ってこない。


 俺達はその後も飲み食いをしながら他愛のない話を続けていたのだが、次々と出席者の貴族の方に声をかけられた。

 内容はリンゴを融通してほしいとか王都に出た上級悪魔のことだ。

 他にも夫人の方からもネックレスやキョウカの髪についても聞かれたので営業を行っていく。

 そして、あらかたの挨拶を終えたのだが、最後に一人の金髪の男性がやってきた。

 その男性は長身であり、姿勢も良い。

 さらには顔立ちも整っており、品もあった。


「ごきげんよう、辺境伯。私は西部の地を治めるラウレンツ・ポートリエと申します」


 ほう?

 …………誰?


「……伯爵だ」


 ラヴェル侯爵が小声で教えてくれる。


「山田タツヤと申します。こちらは妻のキョウカ」


 キョウカと共に一礼した。


「どうも。リンゴなるものを頂きました。非常に美味しかったです」

「ありがとうございます」

「それと辺境伯は南部の大森林を治めているんですよね?」


 森の管理人でーす。


「そうですね。ちょっと広すぎて実感がわきません」

「ははは。そうかもしれませんね。ところで、クロードをご存じでは? 実は彼とは学生時代の同期なんですよ」


 あー、確かにクロード様と同じくらいの年齢に見えるな。


「そうだったんですね。ベシャール伯爵にはいつもお世話になってますよ」


 クロード様のことね。

 クロード・ベシャール。


「あいつは真面目な奴でしたからね。まあ、何にせよ、今後とも良しなに」


 ポートリエ伯爵はそう言って一礼し、去っていった。


「うーん、優雅だ。いかにも貴族って感じ」

「私は好きになれそうになれませんね。表情が嘘すぎます。仮面を被っている感じがしました」

「まあ、貴族だしね」


 というか、それを今日はずっと仮面を被っているキョウカが言う?


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

来週は金曜にも更新します。


よろしくお願いします!

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多分笑顔を作ってるのが問題なんじゃなくて作った結果胡散臭い印象になってるのが駄目なんだと見た
いつものキョウカが好きだよとか今日のキョウカも好きとか言え!!
王妃様の印象に残らないのは、もしかするとスキルか何かかな? 暗殺者としては垂涎のスキルだが王族としては致命的・・・
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