第205話 平日の昼間におでかけ
ラヴェル侯爵のお屋敷に到着すると、馬車から降りる。
「山田さん、キョウカさん、明日はお時間がありますか?」
明日は月曜だから仕事がある。
「すみませんが、明日はちょっと無理ですね」
「そうですか。では、その翌日は? パーティーともなれば、それ用のドレスや紳士服がいります。あなた達、持ってないでしょう?」
うん、持ってない。
「すみませんが、明後日にお願いできますか?」
「構いません。パーティーのこともその時に説明しましょう」
「お願いします」
俺達はマリエル様と別れ、借家に向かう。
そして、家に戻ると、コタツに入って一息ついた。
「パーティーだって。キョウカ、平日だけど本当に大丈夫?」
「大丈夫ですよ。それに楽しそうじゃないですか」
ポジティブな子だなー。
「モニカは参加できるのかな?」
モニカを見る。
「さすがに無理だと思います。ですので、その日はルリさんとお留守番しています」
俺とキョウカだけか。
不安だ。
「まあ、仕方がないか。モニカ、明日の昼にでも王妃様のネックレスを買いに行こう」
誕生パーティーまでには間に合わせないといけない。
「かしこまりました」
ついでにリサーチしよ。
「山田、山田、お腹空いたにゃ」
膝の上のミリアムが急かしてくる。
「それもそうだね。じゃあ、出前を取るよ」
前も頼んだ寿司屋に電話をし、出前を取る。
そして、皆で寿司を食べると、少し休み、キョウカを送っていった。
翌日、朝からモニカがやってきたので一緒に朝食を食べる。
もちろん、食べているのは卵かけご飯だ。
「この世界というか、この国は生食がお好きですよね。いや、美味しいんですけど」
どうやらモニカは卵かけご飯も普通に食べられるらしい。
「大丈夫? 外国の人は嫌がる人も多いけど」
「まあ、人によると思いますね。私は好き嫌いがあまりないですし、この国の料理は好きですから」
この子は馴染んだなー……
箸の持ち方がすごく綺麗だし、こっちの服を着て、コタツで卵かけご飯を食べている姿は異世界人と思えない。
「焼き鮭美味いにゃ」
今日は和食ということでルリが鮭も焼いてくれたのだが、ミリアムが美味しそうに食べている。
こっちも異世界の悪魔とは思えない。
「タツヤさん、朝から出かけるんですか?」
モニカと同じく、上手に箸を使っているルリが聞いてくる。
「そうだね。ルリも行く?」
「いえ、やめておきます。ちょっと疲れたんで今日は家にいます」
ルリは寒がりなこともあるが、基本的にテレビ大好きっ子のインドアだからな。
「ミリアムは?」
「買い物は行かないにゃ。猫はコタツで丸くなるにゃ」
この子もコタツが好きだなー。
「じゃあ、2人で行こうか」
「はい」
俺達は朝食を食べ終えると、準備をし、車に乗り込んだ。
そして、いつものショッピングモールに向かう。
「モニカ、王妃様のことを覚えている?」
「もちろんですよ。まあ、タツヤ様が言いたいこともわかりますけど……」
「お美しい方だったし、高貴って感じなのにね」
王妃様として、異を唱えるところがなかった。
「マリエル様がおっしゃっていた通り、控えめな方なんだと思います。あと、表情がずっとにこやかで変わりませんでしたからね。ああいう人なのか処世術なのかはわかりませんが、極端に印象が残らない方なんでしょう」
「服装も高そうなのは高そうなんだけどシンプルだったね」
「ええ。だからこそ、豪華な装飾品ではない控えめのネックレスが似合うでしょう」
そういうのを選べばいいわけね。
「任せる。それと料金を取る?」
「どうしましょうか……最初はそう考えていたのですが、誕生パーティーですよね」
出席しない場合でも手紙や物は贈るらしい。
俺達は参加するし、リンゴも提供しているが……
「そう思うとがめつくお金を得るところではない気がするね。心証を良くした方が良さそう」
「では、そのようにしましょう」
「実際のところ、ウチの村の資金は大丈夫? クロード様は半分出してくれるって言ってるけど、道の舗装工事も安くないでしょ」
結構な距離があるし。
「資金については大丈夫です。リンゴが高価で売れていますし、定期的に収入が入っています。それでいて、出費が極端に少ないですからね。今のところ、村の人達から税金も取っていません」
リンゴ様様なわけだ。
「まあ、無理に使わないでもいいけど、還元してあげてよ」
「はい。道の整備が終わったら馬車をもう1台買い、さらに家畜でも買おうかと思っています」
家畜か。
良いかもな。
「いっそ牧場でも作る? 魔法で木を切ればいくらでも土地ができるよ? 何しろ、正式にウチの領地になったからね。リンゴ牛なるブランド牛を作ってもいい」
リンゴ食わせる。
「良いかもしれませんね」
「まあ、仕事が増えちゃうし、その辺も入れて考えてみてよ」
「かしこまりました」
その後もリンゴ村のことを話し合いながら車を走らせていくと、ショッピングモールに到着した。
俺達は最初にジュエリーショップに向かい、王妃様に贈るネックレスを選ぶ。
「モニカも金髪だよね? 前にクラリス様が言ってた感じで選ぶ?」
「そうですね。正直、私よりクラリスの方が選ぶ能力があるのですが、さすがにクラリスを連れてくるわけにはいきません」
さすがにね。
「モニカがもし、買うならどんなのにする?」
リサーチを加味した質問をする。
「そうですねー……私はあまり派手なものは好みませんから控えめなこの辺りにします」
理由がわからないが、控えめな感じのやつの方が高いんだな……
まあ、気にしないでいいくらいの収入はあるから問題ないけど。
「王妃様もそんな感じだったし、派手なクラリス様よりモニカの感性で選んだ方がいい気がするよ」
「なるほど……では、そうします」
その後もアドバイスや話を聞きながら選んでいく。
もちろん、その間もモニカの好みなんかも聞きだし、今度来た時に買う用のネックレスも王妃様に贈るものとは別に選別していた。
「これが良いと思うんですけど、どうでしょう?」
モニカは最後に2つに絞っていたが、決めたようで1つのネックレスを指差す。
「良いと思うよ」
「では、これにしましょう」
王妃様に贈るネックレスを決めたので店員さんを呼んで購入した。
時間を見ると、昼前だったのでレストランに行き、昼食を食べる。
「時間がかかってしまってすみません」
1時間近くは悩んでいたと思う。
でも、そのおかげでモニカの誕生日に贈るネックレスも決まった。
「大事なことだからね。俺だったらセンスのないものを贈ってしまうし、モニカがいて助かったよ。いつもありがとうね」
「いえ……こちらこそ、ありがとうございます」
モニカがちょっと頬を染める。
「午後からどうする? せっかくだし、本屋に行く?」
モニカは本が好きなのだ。
「よろしいのですか? 夕方からお仕事では?」
「4時前に帰ればいいから時間はあるよ」
「では、ちょっと寄らせてください」
俺達は昼食を食べ終えると、本屋に行き、本を見て回り、いくつかの本を購入する。
そして、ちょっとドライブし、気分転換すると、家に帰ることにした。
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