第202話 寝坊したにゃー! あれ?
翌日、朝食をご馳走になった俺達はラヴェル侯爵のお屋敷を出る。
すると、門のところでモニカが待っていた。
「あれ? 迎えに行こうと思ってたんだけど」
モニカは昨日、お隣のクラリス様の家に泊まっている。
「クラリスが全然起きないので先に来ちゃいました」
ああ……想像がつく。
「クラリス様らしいね」
「昔からですね。魔道具を見に行くんですよね? 案内しましょう」
モニカは王都出身だから詳しいのだろう。
「そういえばだけど、家には帰らないでいいの?」
「昨日、ちょっと顔は出しましたよ。兄夫婦がいますので長居はしませんでした」
なるほど。
確かにちょっと気まずいかもしれない。
だから以前もクラリス様のところに泊まったんだ。
まあ、クラリス様と仲が良いっていうのもあるだろう。
「お兄さんがいるんだ」
「あと姉もいますね。すでに嫁いでますけど」
何気にモニカの家族構成を初めて聞いたな。
キョウカやユウセイ君もだけど、皆、兄弟姉妹がいる。
一人っ子の俺にはちょっと羨ましく感じる。
「お兄ちゃん?」
ルリが気を使ってそう呼んでくる。
そういえば、最初の呼び方候補にあったな。
「うーん、ルリに妹感はないなー」
年齢もかなり離れてるし。
「お兄ちゃん?」
何故かキョウカも呼んできた。
「キョウカはもっとないよ……大丈夫だって。以前は寂しいなーとも思ってたけど、今は君らがいるからさ」
「それもそうですねー」
キョウカが満面の笑みで俺の腕を取る。
そして、ルリがもう片方の俺の手を取った。
「行こうか」
「ええ、参りましょう」
俺達はモニカの案内で王都の商業街に向かった。
商業街は店舗が連なり、露店では飲食を中心とした屋台も並んでいる。
多くの人が賑わっており、これまでも王都は人が多いなと思っていたが、ここに来て、俺が行き来していた借家とラヴェル侯爵のお屋敷は閑静な住宅街だったんだなと気付いた。
「賑わってるね」
「この国中のものが王都に集まりますし、外国からの輸入品もあると思います。多分、どこかの店にはウチのリンゴもあるんじゃないですかね?」
リンゴって王都だといくらで売られているんだろう?
ちょっと気になるな。
「魔道具を見るんだっけ? 気になるなら他の店に行っても良いよ」
キョウカに確認する。
「服を見たいなと思いますけど、それはマリエル様と行きます。ですので、今日は魔道具です」
マリエル様が服を買ってくれるって言ってたらしいしな。
センスゼロの俺よりマリエル様の方が……あれ? そういえば、あの人もセンスが……あ、いや、クラリス様がいるから大丈夫か。
「モニカ、魔道具の店ってどこ?」
「向こうに専門店がありますので参りましょう」
専門店なんてあるんだ。
俺、村の皆の魔道具も任せたからそういう店に行ったことがない。
ちょっとわくわくしながらモニカについていき、キョロキョロと周りを見渡しながら歩く。
「おー! 剣とか鎧も売ってますよ!」
キョウカが興奮して窓越しに店の中を見たので俺も覗いてみると、全身鎧や剣、さらには盾や槍なんかも売っていた。
「すごいね。でも、あんな鎧を着たら動けなさそう」
何キロあるんだろ?
「私もですよ。でも、日本ではまず見ない光景ですからちょっと興奮しますね」
「ホントにね。買っても飾っとくだけになりそう」
「お金持ちっぽいですね」
そんな気はする。
「あ、お隣は杖を売ってる」
「おー! これこそファンタジーですね」
確かに!
「でも、杖を持った魔法使いはあまり見ないよね?」
「確かにそうですね」
言ってて気付いたが、キョウカ、絶対にモニカを見ないでー。
俺の念が通じたのかはわからないが、キョウカもモニカの方を見なかった。
「タツヤさん、お姉ちゃん、異世界が楽しいのはわかりますが、今日は午前中しか動けません。また来ればいいですし、目的の魔道具のお店に行きましょう」
空気が読めるルリが促してくれる。
「それもそうだね」
「今日は魔道具でしたね」
俺達はその後も色んな店を眺めながらも歩いていき、3階建てのビルの前までやってきた。
「ここが魔道具のお店ですね。目的のものは雑貨になりますので1階です」
「入ってみようか」
俺達はビルの中に入る。
店の中は確かに雑貨屋のようで至るところに商品が並んでおり、見たことがあるような商品から用途がまったくわからない商品までたくさんあった。
「お風呂グッズだっけ?」
「そうなりますね。主に向こうの電化製品の代替品です」
「どういうの?」
「ドライヤーとかですね」
あー、確かにそれはいるかも。
俺は普通だけど、女性陣3人は皆、髪が長い。
家に戻る前に乾かしたいだろうし、必須だろう。
「お金は気にしなくていいから使えそうなものは買っていいよ。俺はどうもその辺が弱いから」
「かしこまりました。キョウカさん、ドライヤーはあちらになります」
「見てみよー」
モニカとキョウカだけでなく、ルリもドライヤーらしき魔道具のコーナーに歩いていったのでついていく。
3人はドライヤーらしき魔道具を見ながらそれぞれの意見を言いながら相談している。
俺は何も言わずにただ笑顔でそれを見ているだけだ。
その後も3人がじっくりと魔道具を見ていったのでただただ温かい目で見守っていった。
ところで、何か忘れている気がするんだが、何だろう?
書籍を購入してくださった方、ありがとうございます。
まだの方は是非ともご購入頂けると幸いです。
2巻をご購入頂いた方は帯を見て、気付いたかもしれませんが、本作はコミカライズします。
『異世界ゆるっとサバイバル生活』という人気作を描かれている西尾洋一先生が担当してくださいます。
連載が開始されましたらこちらでもご報告いたしますのでぜひとも読んでいただければと思います。
もちろん、これからも本作を更新していきますので引き続き、よろしくお願いいたします。