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第200話 山田辺境伯爆誕!


 中庭まで戻ると、馬車に乗り込んだ。

 当然、ラヴェル侯爵が待っていたのでキョウカと共に対面に腰かける。


「おー、男爵。どうだった?」


 ラヴェル侯爵が聞いてくると、馬車が動き出した。


「これからは辺境伯とお呼びください」


 山田辺境伯。

 なんか田舎臭が増した気がする。


「ほう! それはめでたいな。いずれはなるだろうと思っていたが、随分と早い」

「大森林をすべて任せてくれるそうです」

「あー……そういうことか」


 ラヴェル侯爵は意図がわかったらしい。


「何かあったんです?」

「いや、たいしたことじゃない。あの大森林を開拓するのはやっぱり無理じゃないかという意見が強くなったんだ。大魔導士である貴殿だからできたことで他は散々な結果に終わりそうだからな」


 難しいだろうね。

 あの木は魔法じゃないと無理だし、リンゴだって日本から持ち込んだものだ。


「つまり本当にいらなくなったからお前にやるってことですかね?」

「そういうことだな。喜べ。この国最大の領地貴族になったぞ」


 9割9分森ですがな。


「領民が30人程度ですけどね」

「まあ、そういうこともある。何にせよ、辺境伯になったことで箔が付いたのと発言権が強くなっただけでこれまでと何も変わらん」


 それならいいか。

 あの森が正式に俺のものになっただけでそれをどうこうしろって言われているわけではないのだから。


「辺境伯って上の方なんです?」

「上も上だ。見方によっては独立国とも呼べる」


 山田王国(森)か。

 ……テーマパークみたいで楽しそうだわ。


「ほどほどに頑張ります」

「それで良かろう。破格な出世だが、陛下もそなたに野心がないとわかってのことだろうしな」

「わかるんですかね?」


 確かに野心なんて皆無だが……


「せっかく開拓村が成功し、さらにはリンゴの栽培まで成功した。そして、貴族になったというのに住民がまったく増えていないからだ。私なら移民を募集し、住民をもっと増やす。そして、開拓を一気に広げる。他の貴族もそうするだろう。だが、貴殿は維持しか頭にない」


 目的が違うからね。


「私は魔法の研究が主なんですよ」


 あとゴロゴロ。


「わかっておるし、それが正解だ。領地を大きくすれば敵を増やす。アドバイスだが、クロードを敵に回さないようにすることだ。あれはまだ若いが、やり手の貴族だ」


 大貴族のラヴェル侯爵がそう言うならそうなんだろうな。


「わかってます。クロード様には良くして頂いておりますし、敵対はありえません」

「結構」


 俺達はそのまま馬車に揺られて、ラヴェル侯爵のお屋敷に戻る。

 そして、この前も泊まった客室に案内されたのだが、向かい合ってソファーに腰かけるルリとモニカがいた。

 すると、キョウカがルリを抱えて座ったので俺はモニカの隣に座る。


「おかえりなさい。どうでした?」


 ルリはもう諦めたのか表情を変えずに聞いてきた。


「辺境伯になったよ。山田辺境伯」

「私が辺境伯夫人、ルリちゃんが辺境伯令嬢ですね」


 キョウカがそう言って、ルリの頭を撫でる。


「おめでとうございます。一気に上がりましたね」

「ホントねー」


 肩書だけで村長なのは変わらんな。


「タツヤ様、なんでそんなに上がったんですか? 私は子爵だと思っていました」


 モニカが首を傾げた。


「ラヴェル侯爵から聞いたんだけど、開拓事業がウチ以外は失敗になっているらしく、やっぱりあの大森林の開拓なんて無理だろっていう話になっているんだって。あの大森林は俺のものになったよ」

「なるほど……それで辺境伯ですか。地味に監査官のままだったらこの段階で私はクビでしたね」


 俺がいなかったら開拓村は全部失敗だったからな。

 でも、さすがに他の部署に行くだけでクビってことはないだろうけどね。


「たらればだよ。モニカはウチの人間なんだから」

「それもそうですね。しかしそうなると、開拓事業はいかがしましょう? リンゴ村は維持するとしても他の場所で事業を引き継ぐことも可能ですよ? それらも含めて自由にできます。タツヤ様の領地ですからね」


 それもありといえばあり。

 だが……


「成功すると思う?」

「可能性はかなり低いです。上手くいったら良いな程度の投資です。スタンス的にはこれまでの国と一緒ですね」


 うーん……


「どうしてもバルトルトと一緒にウチを襲った連中が頭に浮かぶね」


 悪魔のせいとはいえ、ウチを妬んでいた気持ちは確実にあっただろう。


「ありえますね。辺境伯の直轄地だけ潤い、それ以外は以前のウチのような極貧生活です」


 もちろん、援助はする。

 でも、差は大きいだろうな。


「やめておこう。メリットよりデメリットが大きい。これまでと一緒でリンゴ村を程よく発展させて、ほのぼのと生きようよ」

「わかりました。では、森は森のままということで」


 自然破壊は良くないしね。


「うん、そんな感じで。ラヴェル侯爵いわく箔が付いただけ」

「それはとても重要ですね。防御力が上がりました」


 確かにそうだろうな。


「それとラヴェル侯爵にクロード様と敵対するなと言われたよ。ラヴェル侯爵も一目置いているっぽいね」

「優秀な方ですしね。定期的に交流した方が良さそうです」

「そうだね。クロード様も良くしてくださっているし」


 良い人。


「クロード様って会ったことないですけど、貴族なんですよね? タツヤさんより偉いんですか?」


 キョウカが聞いてくる。


「確か伯爵だったかな? どっちが偉いんだろ?」


 わからん。


「位としては一概に比べられませんが、一般的には辺境伯の方が上ですね」


 マジ?


「え? クロード様を抜いちゃった?」


 マズくない?


「いえ……辺境伯といっても色々ありますから。重要な地を任されているところは影響力もすさまじいですが、あの大森林は……」


 どうでもいい場所なわけね。


「森の管理人か」

「だと思います。多分、伯爵どころかその辺の男爵、子爵も下に見ると思いますよ。いわゆる名誉職です」

「まあ、別に舐められてもいいけどね」


 クロード様はクロード様だし。

 尊敬を忘れずに。


「他所の貴族とはそこまで交流もないですしね。ただ、婦人会があったとしても奥様が舐められることはないでしょう」


 無理無理。

 常時、剣を持っている上級悪魔を倒したハンターだもん。

 普通に怖いわ。


いよいよ明日が本作の2巻の発売日となります。

もう書店で並んでいるかもしれませんが、本屋に立ち寄った際は本作と隣にあるであろう『左遷錬金術師の辺境暮らし』の1巻を手に取っていただけると幸いです。

また、電子の方は明日の0時から読めます。


よろしくお願いいたします。

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王様にリンゴ酒の生産ラインを整えるような話をしてるから、醸造所と瓶製造とそれを運ぶ為にサスペンションを取り入れた荷馬車を自領かクロード領かで揃えないといけないのでは?
辺境伯っていうと史実ではハンガリーへの抑えだったオーストリアとか、スラブ系への抑えだったブランデンブルクとかに置かれた領ですよね。 中世以前の日本で言うと、蝦夷への抑えになっていた奥州藤原氏あたりの位…
本来辺境伯は関係性の悪い隣国、自然や魔物などの脅威が大きな国境付近を守護、開拓するために大きな兵力を持つことを許された爵位ですからね 合っているのは開拓の部分だけですが、兵力を持つ気がない以上は確かに…
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