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第188話 カルトだ、カルト


「行ってみるにゃ」

「ここに?」


 暗くて何も見えないんですけど?


「調査の仕事なんだから当然にゃ」

「怖くない? 悪魔教団だし、地獄の入口に見えるよ」


 前に桐ヶ谷さんが言っていた生贄というワードが脳裏をよぎる。


「300万にゃ」

「行くか……」


 魔法で光球を出し、中を照らした。


「レッツゴーにゃ」

「よし。ミリアム、先に行って、下が大丈夫か確認して。飛べるでしょ」

「わかったにゃ」


 ミリアムが頷き、穴の中に飛び込んだ。

 すごい度胸だ。


 俺は内心ビビりながら梯子に足をかけ、穴の中に入っていく。


「山田ー。下は問題ないにゃー」


 ミリアムはもう下まで行ったようだ。


「わかったー」


 声がやけに響くなと思いつつも足元を光球で照らしながら慎重に降りていく。

 すると、ミリアムが見えてきた。


「そんなに深くないのか……」


 そうつぶやきつつ、降りていき、ついに地に足をつける。

 体感では10メートルも降りてないと思う。


「床も壁もコンクリートにゃ」


 ミリアムがそう言いながら浮き上がり、目の前に来る。


「地下シェルターかなんかかな?」

「さあにゃ。あっちだにゃ」


 ミリアムが尻尾を向けた方向は通路がある。

 通路と言っても幅が1メートル、高さが俺よりちょっと高いくらいで非常に狭い。


「何かいる?」

「いや、魔力も匂いもしない。誰もいないにゃ」


 まあ、家主は捕まっているんだからそうか。

 いや、多分、もう死んでるのかもしれないな。

 家主から聞きだせばいいのにそうしないのはそういうことだろう。


「行こう」


 光球で照らしながら進んでいく。


「狭いにゃー。あと微妙に湿気ってるにゃ」

「光が当たらないからね。やっぱり怖いわ」


 どっちみち、キョウカは無理だな、これ。


「まあ、そこまで広くはないみたいだ。もう終点だぞ」


 ミリアムにそう言われたので光球を奥に飛ばす。

 すると、梯子が見えた。


「ホントだ。そんなに歩いてないよね?」

「10メートルくらいだにゃ」


 俺達はそのまま歩いていき、梯子までやってくると、上を見上げる。


「地下に何かあるわけじゃないのか」

「お前が言ってたように逃げ道なんだろ」

「一本道だったけど、隠し扉とかなかったかな?」

「あるかもな。探すか?」


 いやー……


「俺の中のキョウカがやめましょうよーって言ってる」


 へっぴり腰で涙目だ。


「まあ、その辺は協会の調査員に任せるか……上がってみるか?」

「上から気配は?」

「何も」


 やはり誰もいないのか。


「行こう」

「私が先に行ってやるにゃ」


 ミリアムが飛び上がっていったのでついていくように梯子を登っていく。


「山田ー、ついたぞー」


 どうやら先程と同様に数メートル程度のようだ。


「開けられるかな?」


 俺も天井まで来たので押してみる。

 すると、いとも簡単に押し上げることができたので梯子を登り切り、再び、地上へと戻ってきた。


「こっちも床にゃ」

「みたいだね」


 さっきとおなじように50センチ程度のフローリングの床だ。


「ここ、どこにゃ?」

「さあ?」


 部屋の中のようだが、デスクと大量のファイルが収納された本棚があり、ぱっと見は書斎に見える。

 ただ、さっきも書斎はあったが、こんな感じではなかった。


「出てみるにゃ?」


 この部屋には扉がある。


「人の気配は?」

「ないにゃ。悪魔もにゃ」

「行こう」


 俺達は扉まで行くと、慎重にドアノブをひねり、ゆっくりと開けた。


「廊下にゃ?」

「普通の家みたいだね」


 先程いたところとは違い、随分と質素だ。

 というか、高級住宅街だというのに俺の家とあまり変わらない。


 俺達は廊下を歩き、リビングらしき場所に来た。

 対面式のキッチンがあったので覗き込んでみるが、冷蔵庫どころか皿などもない。


「生活はしてないみたいだね」

「まあ、生活はあっちだろ。ここって別の家じゃないか?」

「そう思う」


 キッチンを出ると、窓の方に行き、カーテンを開けた。

 すると、目の前には高い塀が見え、何も見えなかったので窓を開け、左右を見る。


「わからない……」


 左右も塀しか見えず、ここがどこかわからない。

 ただ、さっきまでいた家とは違う家だというのはわかる。


「あれ? 山田さん?」

「ん?」


 上から女性の声が聞こえたので見上げてみる。

 すると、窓から上半身を出し、タバコを吸っている加賀美さんがいた。


「1階の調査をしてるんじゃないの? なんで裏の家にいるのよ?」


 裏……ここは裏にある家なのか。


「タバコ休憩です?」

「ええ。何もないんで一服」


 2階はなしか。


「1階の寝室に地下に降りる梯子があったんですよ。それでまた梯子を登ったらここです。来てもらえます?」

「わかった」


 加賀美さんが頷く。


「………………」


 タバコを吸っている……


「……何?」

「あ、いえ、吸い終わってからでいいですんで」


 窓を閉め、ミリアムを見た。


「自由にゃ」

「ね?」


 俺達は書斎に戻り、加賀美さんが来るのを待つことにした。


「タバコ待ちか……」

「まあまあ。元喫煙者としては何も言えないんだよ」


 気持ちはわからないでも……いや、わからんわ。

 待ってる人がいるなら吸うのをやめる。


「お前はタバコをやめて正解にゃ。長生きするにゃ」

「だといいね。ルリに臭いって言われたら死んじゃうよ」


 もし、吸い続けていたらあんなにも甘えてくれなかっただろう。


「そういう意味じゃないんだけどにゃ……」

「わかってるよ。健康には気を付ける。ルリも贅沢する時以外は健康に気を付けた料理を作ってくれるしね」


 とっても良い子だ。

 もはや俺の娘と言っても過言ではないだろう。

 娘は誰にもやらんっていう気持ちがよくわかるし。


「んー?」


 暇だったのでふと、本棚にあるファイルを手に取ってみる。


「成果?」


 ファイルの表紙には無機質なフォントでそれだけが書かれていた。

 何だろうと思いながらファイルを開き、中を見てみる。


「っ!」


 すぐにファイルを閉じた。


「ん? どうしたにゃ?」

「生贄、ね……」


 何の成果だよ……


「山田、何があったんだ?」


 ミリアムが再度、聞いてくる。


「写真が貼ってあった……」

「何の?」

「バラバラ死体……」


 想像以上にヤバい組織だったわ。

 潰れて良かった……


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
 もしかしたらバラバラ死体に見えるだけの組み立て前のマネキンかもしれない、家主はマネキンを着飾る趣味があったんだ!
「異世界と現実のいいとこどりライフ」のはずが最近悪いとこばかり見えてません?
バラバラ死体は本物を見たら ……吐きます
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