表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

181/229

第181話 どうだろ?

あけましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。


 この1週間、昼間はモニカやルリ、ミリアムとリンゴ村に行き、セカンドハウスや温泉について話し合い、夕方になると、キョウカがやってきて、モニカとミリアムと共にマリエル様のところにレッスンに行っていた。

 そして、土曜日になると、この日は朝からレッスンに行ってしまったため、俺とルリは2人でゆっくりとテレビを見ながら過ごしていた。

 すると、午後になると、ユウセイ君がやってくる。


「ちーっす」

「いらっしゃい。バイトはどう?」

「忙しいわ。でも、儲かるから良し」


 学生は大変だな。


「卒業後に正式な協会の退魔師になってたら結構なお金が入ってくると思うけど、散財はやめときなよ。ちゃんと貯金とかしないと」

「大丈夫、大丈夫」


 まあ、この子はしっかりしてるか。


「来週もバイトだっけ?」

「そうそう。キョウカは例のレッスンか? あいつがどうにかなるのかね? あいつって良くも悪くもアクティブでおしゃべりだろ」


 さすがは幼なじみ。

 よくわかっている。


「なんか暗示で貴族令嬢っぽくなってたよ」


 偽令嬢キョウカさん。


「何それ? そんなので変われるの?」

「みたいだね。上品で物静かな令嬢だってさ」

「誰だよ、それ」


 ユウセイ君が笑う。


「いや、本当に上品な感じになってるんだよ。きっとあれがキョウカの素だと思う」


 うん、きっとそう。

 普段はバカを演じているんだろう。


「現実逃避……しかし、上品で物静かねー……でも、中身はあれなわけだろ? サイコパス感がより増すな」


 この子、本当に遠慮なくはっきり言うなー……

 その通りなんだけど。


 その後もユウセイ君やルリと話をしていると、夕方になり、キョウカ、モニカ、ミリアムが戻ってきた。


「おや? ユウセイさんではないですか。いらっしゃったんですね」


 キョウカが微笑みながらユウセイ君を見る。


「おー……胡散臭さがやべー」

「あっ……」

「クラリスと同じことを言ってるにゃ」


 ユウセイ君もクラリス様もはっきり言うからなー……


「胡散臭さとは心外ですね。でもまあ、私の普段の言動のせいでしょう。これは反省しなくてはいけません」


 優雅だ。

 それに余裕を感じられる。


「どうでもいいけど、戻ってこいよ」

「そうする。着替えてこよーっと」


 キョウカが元に戻り、俺の部屋に向かう。

 そして、ミリアムがコタツの中に潜っていき、モニカもコタツに入った。


「どうだった?」


 モニカに聞いてみる。


「キョウカさんは見事ですね。完璧に演じ切って見せました」


 もう演じるって言ってるわ。


「そんなに?」

「元々、姿勢も良いですし、堂々としています。それにやろうと思えば言葉遣いもできるようですし、マリエル様も合格点を出されました」

『なんか褒めてなーい』


 隣の部屋からキョウカの文句が聞こえてくる。

 まあ、放っておこう。


「クラリス様も胡散臭いって言ってたんだって?」

「はい。マリエル様もはっきりと『そのあなたは好きになれませんね……』って言ってました」

『ひどいですよねー』


 またもやキョウカの声が聞こえてくる。


「いいから着替えなー」

『はーい……あれ? スカートどこ?』


 実況はいらん。


「でも、合格点はもらえたわけでしょ?」

「はい。これで陛下との謁見もできるかと」

「しかし、本当に謁見ってあるのかな? 確かに上級悪魔を倒したのはすごいけど、褒美をもらうだけで済まない?」


 適当に金貨をくれるだけでいいんだけど。


「それが……本日、ラヴェル侯爵がいらっしゃいまして、陛下が来週には王都に戻ってくるという話を聞きました。また、すでに上級悪魔のことは陛下の耳にも入っているようでして、かなり褒めていたようです。以前にもタツヤ様が上級悪魔を仕留め、さらにはその夫人であるキョウカさんも上級悪魔を仕留めたことはかなりの貢献と見ているようですね」

「あー、俺の時と同じで謁見コースっぽいね」

「はい。というよりも、すでに決まっているようです。王妃様から誘いがあり、今度の日曜日に都合が良ければ来てほしいそうです。そして、できたら前日である土曜日も空いているか確認してほしいとも……」


 あー、なるほどね。


「ちなみに聞くけど、それって断れるの?」

「もちろん断れます。我々の領地は遠い地にありますし、来いと言われて簡単に行ける距離ではありませんからね。ただ、断らない方が良いと思います」


 俺もそう思う。

 良いことをしたわけだから別に怒られたり、咎められることはないだろうが、しょっちゅうマリエル様の自宅へ遊びに行ってるのに断るのはマズい。


「王家の覚えは良くしておいた方がいいよね?」

「はい。間違いなく、マリエル様経由でシャンプーなどの整髪料、ネックレス、リンゴの加工品等は王妃様に伝わっております。ここは恩を売る機会と考えましょう。我々はラヴェル侯爵の傘下であり、クロード様とも良くしてもらっていますが、それでも弱小勢力であることに変わりませんし、スローライフが目的なタツヤ様の意向から考えてもこれから大きくなることもありません」


 確かにそうだな。

 俺は大貴族になりたいわけでも権力者になりたいわけでもない。

 これが高校生くらいなら増長することもあるかもしれないが、俺はもう35歳であり、保守的になっている。


「弱小勢力には弱小勢力なりの戦い方というか、守り方をするわけだね?」

「はい。それが政治です。この国最大の権力を持つ者のお気に入りになりましょう。そうすれば、他の貴族も簡単には手出しができません。しかも、弱小勢力がゆえに嫉妬されることもありません。他の貴族からしたら30人程度の開拓村の領主にすぎませんから」


 王家やラヴェル侯爵、クロード様を敵に回してまで相手にせんわな。


「わかった。キョウカー、頼むよー」


 俺の部屋に向かって声をかける。

 すると、勢いよくふすまが開き、キョウカが戻ってくる。


「お任せください! タツヤさんの妻として恥ずかしくない振る舞いをしましょう!」


 なんか逆に俺が不安になってきたな……

 俺って、その辺が大丈夫なんだろうか?


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【予約受付中】
~漫画~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

【販売中】
~書籍~
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(1)
35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~(2)

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

― 新着の感想 ―
自己暗示で人格を作り出してるw おバカなキョウカちゃん、人斬りキョウカさん、男爵夫人キョウカ様ですね
政治を考えてくれるモニカの頼もしさは凄い
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ