第018話 開墾
農具が使えそうなことがわかった俺はとりあえず、農具を村長さんに託し、次の作業に移ることにした。
「コーディーさん、ちょっと畑の一角を借りても良いですか?」
「まだ何も植えてないからいいけど、何をするんだ?」
「ちょっと実験です」
そう言って、例の肥料を取り出す。
「んー? 肥料か?」
「ええ。ちょっと作ったんです」
「大魔導士様は多芸だな」
大魔導士様じゃないよー。
「試しですよ」
「貸してみろ。俺がやる」
そう言われたのでプロに任せようと思い、肥料を渡す。
すると、コーディーさんが手際よく肥料と土を混ぜていった。
「上手ですね」
「そりゃな……よし、こんなもんだろう。何を植える?」
「あ、じゃあ、これで」
俺はホームセンターで買った大根の種を取り出し、埋めてみる。
「水をかけましょう」
ルリがそう言うと、手からシャワーみたいな水が飛び出してきた。
なんかかわいい。
「じゃあ、これでちょっと様子を見てみよう。次は森かな?」
「森ですか? 何かあるんです?」
村長さんが聞いてくる。
「魔法で木を切ろうかと思いましてね。私は修行中の身ですからちょっとそういう魔法を練習しようと思っているんです。ついでに畑も広がるし、一石二鳥でしょう」
「ほうほう。それはありがたいですな」
「そういうわけでやってきます。どこを切った方が良いですかね?」
「でしたら村の西の方をお願いします」
村長さんがそう言って、右の方向を指差した。
「わかりました。では、行ってきます」
「あ、私もついていっていいですかね? 大魔導士様の魔法を見てみたいです」
これまで一言も発せずにただ見ていたモニカさんが聞いてくる。
「構いませんよ」
「ありがとうございます」
俺達は村長さんが言っていた西の方に向かう。
そこはまだ畑を作っていない荒れ地のようでまだいくつかの切株も残っていた。
「切株が大変だろうね……」
「そうですね。人力でやるか馬か牛ですかね?」
「いるの?」
「見当たりませんね」
ルリがキョロキョロと周りを見渡す。
「この村に牛や馬はいませんね。中々、申請が通らなくて……」
モニカさんが申し訳なさそうに言う。
「あのー、ここって全然、期待されてなかったりします?」
「……はい。ここに限らずですが、この大森林は木が太くて強いんですよ。なのでダメで元々なんです」
やっぱりか。
「まあ、なんとかしましょう。最低でも村は維持したいし」
「よろしくお願いします」
モニカさんが頭を下げた。
「ルリ、どうすればいいの?」
ルリ先生にやり方を聞く。
「まず、魔法使いからしたら木を切ること自体は簡単です。モニカさんにもできるでしょう」
そうなんだ。
「すみません…………私、回復魔法や結界を張るくらいしか……」
………………。
「……人には得意不得意がありますね」
ルリがあからさまにしまったという顔をした。
「私に得意なことがありますかね?」
「え? えーっと…………胸が大きい?」
まあ、初めて会った時から大きいなと思っていたが、、それは得意で合ってるのか?
「魔法じゃない…………」
あ、落ちこんじゃった。
「ウチの子がすみません……」
こら! めっ!
「いえ、いいんです……」
俺からしたら結界はよくわからないが、回復魔法を使えるのは十分にすごいと思えるんだけどなー。
多分、嫌味になるから言わないけど。
だって、俺も使えるし。
「すみませんでした……」
「ルリ、続きを」
「はい……えーっと、木を切るのは攻撃魔法を使います。エアカッターなんかがその代表です」
エアカッター……
確か爺さんの本に書いてあったな。
風の刃を飛ばす魔法だ。
「それを使えばいいの?」
多分、できる。
「問題は木が倒れるのが危険なことですね」
あ、確かに。
現代でも危険と聞いたことがある。
「どうするの?」
「空間魔法と併用するのです」
ルリはそう言うと、木に触れる。
「併用ねー」
言っていることはわかる。
空間魔法では埋まっている木だけを収納することはできないから魔法で切って、すぐに収納するんだ。
「こうやります」
ルリがそう言うと、あっという間に木がなくなった。
「へー……」
ルリはエアカッターと空間魔法を同時に使っていたのだ。
これまで修行していたから俺にもわかった。
「やってみてください」
ルリにそう言われたので木に触れた。
そして、エアカッターを放つと同時に空間魔法で木を収納する。
すると、さっきと同じように一瞬で木が消えたかのように見えた。
「おー! できた!」
「さすがです」
ルリが褒めてくれる。
だが、モニカさんは信じられないものを見る目で俺達を見ていた。
「同時魔法……しかも、無詠唱…………そこまで来ると、もはや嫉妬すらわきませんね。さすがは大魔導士様」
高度なことだったみたいだ。
「タツヤさんなら当然です……では、次にこの根になります」
ルリが残っている切株を見る。
「土魔法だったっけ?」
「はい。それもありますが、こちらの方が安全です。単純に土をどければいいんですからね」
ルリがそう言うと、一瞬にして切株の周りの土がなくなった。
「空間魔法?」
「はい。こういうのもできます」
「……いや、空間魔法はそんなことできないから」
モニカさんがそうツッコみながら顔の前で手を振る。
「タツヤさんの空間魔法なら簡単でしょう」
そう言われたので俺が切った後の切株を見る。
そして、空間魔法を使うと、同じように切り株の周りの土がなくなり、根っこだけになった。
「さすがです」
「すごいですねー」
モニカさんが棒読みだ。
「では、こんな感じでどんどんやっていきましょう」
ルリにそう言われたのでエアカッターと空間魔法で木を切る、空間魔法で土を収納する、残った根も空間魔法で収納する、土を空いている穴に戻す……という作業をひたすら続けていった。
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