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第175話 山・ル・ミ・ユ「あと知性……」


 俺達はラヴェル侯爵とマリエル様の話が終わると、お屋敷をあとにする。

 さすがに今日はお茶会をせずに用件が済んだらすぐに帰った。

 そして、転移で家に帰ると、キョウカが着替えるために俺の部屋に入る。


「モニカ、大丈夫かな?」


 もちろん、キョウカのことだ。


「大丈夫だと思います。キョウカさんは人斬りキョウカさんにさえならなければただの明るい子ですから。それに姿勢も良いですし、最低限の礼儀作法も身に着けております。あとはマリエル様にお任せすれば問題ないでしょう」


 その人斬りキョウカさんが怖いんだけどね。

 陛下や王妃様にあれを出されると首が飛ぶんじゃないかと思う。

 いや、はたして飛ぶのはどっちだ?

 考えただけでも恐ろしい。


「モニカも付いてくれるんだよね?」

「一応は付き添うことになります。ですが、私はほぼしゃべれることはありません。商売や領地運営の話になればタツヤ様の代わりにしゃべることもあるでしょうが、お茶会では今日のように御二人の後ろに控えます。私は庶民ですからね」


 こういうことになると、妻役をモニカにすれば良かったって思うな。


「あれ? そういえばモニカはその礼儀作法とやらは大丈夫なの?」

「クラリスという貴族の友人がいますからね。それに私は元々、監査官で宮仕えでしたのでそういうのも身に着けております」


 そういや一応、魔法使いのエリートだったな。


「明日からのレッスンは俺も付き添っていいのかな?」

「いえ……女性のレッスンですから男子禁制だと思います。化粧中の女性を見るようなものです」


 昨今は電車の中でもしてるけどね。

 まあ、一部か。


「モニカ、キョウカに付いてくれる?」

「もちろんです。クラリスを加えたいつもの女子会の延長のようなものでしょう」


 女子会ねー。


「ミリアム、ミリアム」


 コタツをめくって声をかける。


「何? あ、何にゃ?」


 ミリアムが一瞬、素になったがすぐに猫になって出てくる。


「明日からちょっとの間、モニカとキョウカを王都に送ってくれない? それと念のために付いててよ」

「んー? 別にいいにゃ。モニカの膝の上で寝るだけにゃ」


 羨ま……じゃない。


「任せた。大丈夫だと思うけど、上級悪魔が出たら何とかしてね」


 ミリアムなら何が出ても大丈夫だろう。


「わかった、わかった。あれ? ルリは?」


 ミリアムがキョロキョロと見渡し、鼻をすんすんさせた。


「まだ買い物から帰ってないみたいだね」

「じゃあ、おやつのスルメはまだか……帰ったら起こすにゃ」


 ミリアムはコタツの中に引っ込んでいく。

 その後、キョウカが着替え終わったので3人でコタツに入り、休んでいると、ルリが買い物から帰ってきた。

 さらには夕方にユウセイ君も来て、漫画を読みだし、いつもの光景となる。

 そして、ルリとキョウカが夕食の準備を始め、ちょっと早いが、6時くらいには夕食となった。


「おー、これがサーロイン!」


 味付けが塩コショウだけだが、めちゃくちゃ美味い。


「美味しいですね」


 モニカが微笑む。

 モニカはもう箸も使えるくらいに馴染んでいるが、やっぱりフォークとナイフが似合う。


「柔らかいです」


 キョウカが楽しそうに肉を斬っている。

 あ、いや、切っている。


「キョウカ。お前、肉を切るのが上手いな……」


 ユウセイ君が言うようにキョウカのステーキの断面は異様に綺麗だ。


「得意だもん」

「そうか……」


 ユウセイ君が微妙な顔になったが、正直、今のはユウセイ君が悪いと思う。

 肉って言うなや。


「まあ、肉を楽しもうよ」

「そうだな。しかし、700万がもらえそうで良かったな。大金じゃん」


 ホント、ホント。


「まあね。これも君達のおかげだよ。食べて、食べて」

「ごちです」

「ルリちゃん、お姉ちゃんが切ってあげようか?」

「いえ……大丈夫です」


 まあ、楽しんでくれ。


 俺は肉を食べ続け、ちょっと脂がきついかなと思ったらワインを飲んだ。

 実に優雅だと思う。

 モニカもまた、同じように肉を食べながらワインを飲んでいるのだが、ペースがちょっと早い。

 肉を食べるのは遅いし、ワインを飲む姿は優雅なんだけどね。


「それで山田さん、キョウカは明日から貴族夫人レッスンなんだろ?」


 ユウセイ君が確認してくる。

 来た時に今日あったことを話したのだ。


「そうなるね」

「こっちの仕事はどうする?」


 それなー……


「実際、仕事を再開してもいいのかね?」

「何の指示もないならいいんじゃないか? 昨日のミリアムの話だと、悪魔教団がいなくなっても悪魔はそこら辺にいるわけだし」


 確かにね。

 そもそも悪魔教団ができたのは最近だろう。

 ユウセイ君達の家はその遥か前から悪魔を祓ってきたのだ。


「さすがにもう上級悪魔を召喚するってことはないだろうけどね。でも、ちょっと仕事は休みでもいいかな? キョウカの方を優先したい。国王陛下に王妃様だよ?」

「なんかこえーな……でもまあ、わかった。こっちは休みにしよう。まだ山田さんの昇格が決まってないしな」


 その辺の話もあるんだよな。


「ちなみにだけど、君らって昇格とかないんだよね?」

「まあ、ないだろ。俺ら、出向みたいな感じだし」


 ユウセイ君がキョウカを見る。


「だね。でも、高校を卒業して、正式に協会に入ったら実績を考慮してほしいよね」


 確かにな……


「その辺のことも桐ヶ谷さんに話してみるよ」


 チームで上級悪魔を倒したわけだし、考慮してくれるだろ。


「頼むわー」

「お願いします」


 やっぱり俺ばっかりもらってのは気が引ける。


「あ、ユウセイ君は明日からどうする? ウチに来る?」


 漫画読む?


「実はそれがあって聞いたんだ。バイト先の店長にバイトに復帰するって言ったら今週、来週と多めに入れないかって聞かれたんだ。迷惑をかけたし、俺自身もこの1ヶ月のマイナスを補充したい」


 なるほどね。


「じゃあ、そうしなよ」

「ああ。そういうわけだからキョウカ、頑張れよ」

「頑張る。まあ、大丈夫でしょ」


 心配だなぁ……


「心配だな……しかし、お前、貴族夫人レベルがガンガン上がるな」

「うーん……どっちが貴族夫人っぽい?」


 キョウカが自分と優雅にワインを飲んでいるモニカを交互に指差す。


「モニカさんかな? すまん。刀が……」


 うん、刀が……


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― 新着の感想 ―
30代にサーロインは脂がキツくなってくるからな…
桐ケ谷さんに「悪魔を斬った刀を持ってきて」と言われた事を忘れてる。
「失われた知性」とか言うとアンニュイデカダン調で貴族夫人っぽいかも 駄目ですか そうですか
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