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第172話 悪魔とは


「わかったにゃ。そもそも悪魔とはお前ら生物とは異なっているにゃ。はっきり言えば生物と呼べるかも微妙なレベルにゃ」


 え?


「こんなに可愛い猫さんなのに?」


 ミリアムを撫でる。


「ありがとうにゃ。でも、人に憑りつくタイプもいるだろ? あれって生物と呼べるか?」


 確かに……

 そもそも実体がない。


「そういえばそうだね」

「お前ら生物は交配により増えるだろ?」


 動物も植物も基本的にはそうだ。


「悪魔は違うの?」

「違うにゃ。私には親猫も親悪魔もいないにゃ」


 いないのか……


「え? じゃあ、どうやって誕生したわけ?」

「悪魔は人の心が作り出す悪意から生まれるにゃ」


 悪意……


「残虐、強欲……」


 上級悪魔共がそう名乗っていた。


「それにゃ。あいつらはそういう悪意から生まれてきた悪魔にゃ」


 あの二つ名みたいなのはそういう意味があったのか。


「愛を司る悪魔は?」


 もちろん、ロザリーのことだ。

 パッと聞いた感じでは悪意に聞こえない。

 だが、奴は絶対に悪意そのものだ。

 しかも、うざいタイプの……


「あれは絶対に自称にゃ。多分、色欲の悪魔にゃ」


 なるほど。

 それっぽいな。


「ミリアムは?」

「私はそんなものがないって言ったじゃないか。そもそも猫にゃ」

「悪意はどこ?」

「黒猫なんて不幸の象徴じゃないか」


 え? それだけ?


「なんかかっこいいのないの?」

「だから猫に何を期待するんだにゃ? じゃあ、怠惰でいいにゃ」


 あ、いつもコタツの中で丸くなってる!


「でも、ミリアムちゃん、人の悪意からどうやって悪魔が生まれてくるの?」


 キョウカが首を傾げる。


「それは知らないにゃ。お前らだって、どうやって生まれてきたか知らないだろ」

「え? し、知ってるけど?」


 キョウカが頬を染めた。

 まあ、ルリはわからないけど、皆、知ってるだろう。


「誰も子供の作り方なんて言ってないにゃ。単純に人はどこから来たのかという崇高なことにゃ」


 確かにわからんな。

 宗教的にはなんか始まりがあった気がするが……


「えーっと、アダムとイブ?」


 俺もそれが浮かんだ。


「ほら、知らないにゃ」


 確かに知らんな。


「ミリアム、つまり悪魔はどこにでも現れるってこと?」


 わからないので話を戻す。


「そこに人がいればにゃ。だからこっちの世界で生まれた悪魔もいるし、向こうの世界からこっちに来る悪魔もいるにゃ」

「なるほど……じゃあ、実はこっちの世界にも結構、上級悪魔がいるかもしれないわけか」

「多分にゃ。でも、上級悪魔はほとんど動かないにゃ」


 ロザリーさんなんて動きまくってるけど……


「なんで?」

「そもそも悪魔というのは喜怒哀楽の感情がそこまで強くないにゃ。下級悪魔は存在を維持するために人を襲って魔力や生命力を奪うけど、上級悪魔はそんなことをしなくても何十年も生きられるにゃ。だから基本的にはじっとして動かないにゃ」

「そういやバルトルトはともかく、皆、落ち着いていたな……」


 会話はできなかったが、対話はできていたし、戦闘が始まる前までは紳士的な感じすらした。


「そんなものにゃ。長年生きているからさらに感情が薄くなり、ただ生きているだけの存在になるにゃ。だから皆、死ぬ時もあっさりなんだにゃ。そもそもお前らのように生まれたわけでもないから生死に関する感情が特に薄いんだにゃ」


 確かに簡単に諦めたり、ほとんど恨み事も言わずに死んでいった。


「ミリアムは死んだらダメだよ」

「安心するにゃ。私には食欲という欲があるにゃ」


 食いしん坊さんだもんな。

 しかし、そうなると流れ的に暴食の悪魔なような気がしてきたな……

 あ、いや、それはユウセイ君か。


「うーん、長年退魔師をやっていたが、そういうことだったんだな」

「皆、知らないだろうね」


 ユウセイ君とキョウカが顔を見合わせる。


「なんかお前から人斬りと嫉妬の悪魔が生まれそうだな」

「失礼な。そんなもんはその辺に溢れているでしょ」


 キョウカさん……

 嫉妬はそうだろうけど、多分、人斬りは溢れてない……


「まあ、ディオンの件はわかったよ。しかし、これ、協会にどう報告しようか?」

「あー、異世界で仕留めたしな。もったいないにゃ」


 700万……


「適当にその辺で仕留めたということでよくないですか?」


 キョウカが名案を思い付いたって感じで拳をポンっと手に乗せた。


「お前な……調査員にバレるだろ」


 確かにユウセイ君の言う通り、魔力の残滓のことがある。


「私の刀に残滓がついてるよ」

「じゃあ、お前が仕留めたってバレるだろ。700万が出ない」


 そこなんだよなー。


「そんなもんはどうとでもなるでしょ。私とタツヤさんがデートをしていたらいきなりディオンに襲われ、刀を落としてしまった。そんなピンチな私をタツヤさんが刀を拾って救ってくれたんです!」


 というシナリオね。


「いけるか、それで? 俺が協会の人なら絶対に信じんぞ」


 俺も信じない。


「言ってみればいいじゃん。どちらにせよ。ディオンという名古屋支部を壊滅させた憎き仇を倒したことは報告しないと」


 確かになー……

 絶対に仕留めてほしいって言ってたし。


「ちょっと明日にでもそういう方向で桐ヶ谷さんに話してみるよ。成功報酬が出ないなら出ないで諦める」

「ダメで元々か」


 まあ、こればっかりは仕方がない。

 700万円は惜しいが、異世界のことはさすがに言えない。


「じゃあ、話は以上ね。モニカ、悪いけど、電話みたいなやつとやらで明日、訪ねる旨を伝えてくれる?」

「承知しました」


 モニカは頷くと、部屋を出ていき、リンゴ村に向かった。


「君らはどうする?」


 キョウカとユウセイ君に聞く。

 時刻はまだ4時前だ。


「もうちょっといるわ」

「晩御飯を手伝ってから帰ります」


 食べてから帰るわけね。


「わかった……でも、キョウカ、その前に着替えてきなよ」


 キョウカは異世界の服だ。


「あ、そうでしたね。ちょっとお部屋をお借りします」


 キョウカが立ち上がり、隣接する俺の部屋に向かう。

 その後はいつも通り、部屋でゴロゴロし、夕食を皆で食べると、2人を送っていった。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ふとした拍子に生まれる仕組みができたと言われたら、 それで納得するしか無いよなぁ。 夢が広がる。
日本では、黒猫は幸運の象徴らしいです。 海外の魔女圏では、不幸の象徴らしいですよ。
猫と和解せよ
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