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第166話 残虐の悪魔


 ディオンはニヤリと笑うと、俺、ユウセイ君、キョウカの順番に見てくる。


「さて、どなたから来ます? 3人まとめてでも構いませんが、ここは正々堂々とタイマンをしましょう」


 ディオンがそう言うので一歩前に出た。


「タツヤさん、私がやろう」


 キョウカが俺の腕を掴む。


「いや、俺がやる」

「あれは動きでわかるが、接近戦タイプだよ? 私の方が良い。ああいうのは私の方が相性は良いんだ」


 接近戦タイプ……

 俺が苦手というか、ビビってしまったバルトルトと同じタイプか。


「俺がやるよ。キョウカは下がってて」

「そう……」


 キョウカは腕を離すと、後ろに下がった。


「最初はあなたですか?」


 ディオンが聞いてくる。


「最初で最後な」

「まあ、そうかもしれませんね。良いですか? 行きますよ? あまり時間もなさそうなのでね」

「どうぞ」


 許可を出すと、ディオンがニヤリと笑った。

 すると、ディオンの姿がぶれる。


「右にゃ」


 肩にいるミリアムにそう言われたので右に拳を振る。

 すると、そこにはディオンがおり、驚いたような顔をして、慌てて下がった、


「猫? いつの間に……いや、悪魔か……」

「ウチの使い魔さんなんだ」

「へー……物好きな悪魔がいるもんですね。使い魔なんて数百年ぶりに見ましたよ」


 他の使い魔を全然見ないなと思っていたが、相当レアだったらしい。

 そんなレアな使い魔が超かわいいウルトラレアだったのはものすごい幸運だろう。


「来い!」

「まあ、上級悪魔を使役するあなたを見て、微妙に帰りたくなりましたが、もう少し遊びましょうか」


 ディオンはそう言うと、姿が見えなくなる。


「下にゃ」


 ミリアムに言われて下を見ると、ものすごい低い姿勢になっているディオンが拳を振り上げてきていた。


「くっ!」


 慌ててバックステップをし、躱す。


「ふむ……おっさんだと思っていましたが、そこそこ動けますね」

「それ、絶対にこっちのセリフ」


 小太りのおっさんの動きじゃないわ。


「まあ、私は悪魔なのでね」


 ディオンはそう言うと、今度はまっすぐ突っ込んできた。

 そして、拳を握らずにまっすぐ指を立てて、俺の胸を貫こうとする。


「速っ」


 今度は躱せないっ!?


 ディオンの指が俺の胸に当たり、その衝撃で数歩、下がった。


「痛っ!」


 指が当たった胸にはかなりの衝撃が走った。

 その証拠にスーツが少し破けてしまっている。


「ん? 心臓をえぐり取ろうとしたんですが……」


 スーツとシャツが破け、ディオンの指が当たった肌が見えるが、傷はないし、もちろん、心臓もえぐり取られてはいなかった。

 これはこの一週間で覚えた魔法だ。

 まあ、魔法というか、魔力を一点に集中させ、防御力を上げただけだが……


「山田、落ち着いて動け。確かに強敵だが、お前が勝てない相手ではないにゃ」


 ミリアムが耳元で助言してくる。


「ふむ……確かにかなりの魔法使いのようですね。私の攻撃を受けてノーダメージとは……」


 いや、結構痛かったわ。


「タツヤさん、ミリアムちゃんが言う通り、タツヤさんが負けるような相手じゃない。冷静に動いて」


 後ろにいるキョウカも助言してきた。


「生意気な娘ですね……あなたからやってあげましょうか?」


 キョウカの言葉にイラッとしたようでディオンがキョウカを睨む。


「魔力だけの雑魚が何をほざく? 良いだろう……刀の錆にしてくれる」


 キョウカが刀を抜いた。


「キョウカ、下がって」

「…………ふんだ」


 キョウカは大人しく刀をしまい、後ろに下がった。


「次はあの娘を殺しましょう。その前にあなたです。死ね!」


 ディオンはまたもやまっすぐ突っ込んでくる。

 俺はそれを冷静な気持ちで見ることができた。


 なるほど……

 確かに速いが、ディオンの動きは直線的だ。

 フェイントもなく、ただ速いだけ……


 俺は突っ込んでくるディオンの顔に向かってタイミングを合わせて蹴りあげた。


「チッ!」


 ディオンは蹴りを躱したが、動きが止まっている。


「アイスソード!」


 俺は止まっている隙に魔法で氷の剣を作り、ディオンに向かって振った。

 すると、ディオンは腕で顔を庇い、アイスソードを受ける。


「ん? 何だこれ!?」


 腕に当たったアイスソードはディオンの腕を切ることには成功したが、血が少し出ただけだった。

 だが、その血が徐々に凍っていく。

 そして、完全に血を凍らせると、ディオンの左腕をどんどんと凍らせていく。

 これもミリアムに教えてもらって新しく覚えた魔法だ。


「くっ! 厄介な!」


 ディオンは氷が胴体に達する前に右腕を振り、左腕を切り落とした。


「良い判断にゃ。放っておくと、氷が胴体に達し、心臓を凍らせるにゃ」

「チッ! 嫌な魔法を使うな……」


 左腕を失ったディオンはバックステップで俺達から距離を取る。


「どうする? 片腕がなくなったぞ」

「厄介ですねー。想像以上に強いし、強力な魔法を使う……腕を再生するのは時間がかかるんですよ? それにかなり人を食べないと」


 再生するのかよ……

 しかも、人を食べて……


「山田、仕留めるにゃ。700万円にゃ」

「わかってる」


 頷くと、手を掲げる。


「ふむ……多勢に無勢……これは回復しないと無理だな。失礼します」


 ディオンの身体がぶれ始めた。


「炎よ!」


 俺の手から炎が飛び出し、ディオンに向かっていく。

 そして、ディオンに当たると一気に燃え上がっていった。


「ふむふむ……恐ろしい魔法使いもいたもんですね。さようなら」


 ディオンの声が聞こえるが、正面からではなく、上から聞こえる。

 しかし、上を見てみるが、星空が見えるだけで何もいない。


「ディオンは?」

「逃げたにゃ。魔力が消えている」

「どうやって?」

「おそらく転移にゃ」


 転移……

 そうか……悪魔も使えるのか。


「追える?」

「難しいにゃ」


 ミリアムでも無理か。


「どうするんだ?」


 ユウセイ君が聞いてくる。


「仕方がない。車で待機してよう。桐ヶ谷さんに電話する」

「まあ、仕方がないか……」


 俺達は車に戻ると、一息つく。


「タツヤさん、大丈夫ですか?」


 いつものキョウカに戻ったキョウカが助手席から心配そうに顔を覗き込んできた。


「大丈夫。この前みたいな感じじゃないよ」


 慣れたわけではないが、この前みたいにビビっていない。


「ならいいですけど……」

「とにかく、桐ヶ谷さんに電話するよ」


 俺は内ポケットからスマホを取り出す。


「あー……スーツも買わないとなー」


 そうつぶやきながら電話をかけた。


『もしもし? 山田さんですか?』


 桐ヶ谷さんの声だ。


「ええ。先ほど、残虐の悪魔ディオンに遭遇し、戦闘になりました」

『やはりいましたか……それでどうなりました?』

「すみません。左腕を落としたんですが、転移魔法を使われ、逃げられました」

『転移……それは厄介ですね』


 自分でも使っているが、敵に使われると本当にそうだ。


「ええ、すみません」

『いえ、こればっかりは仕方がないです。あとはこちらでやりますので一応、そこで待機しておいてください』

「そういえば、数人ほど悪魔教団の人間らしき男達が車に乗って逃げましたよ」

『ええ。把握しています。そちらの方も別動隊が追っていますので問題ありません』


 さすがだ。


「わかりました。では、ここで待機しています」

『はい。えーっと、11時まで待機してもらえますか? 11時になったら帰ってもらって結構ですので』


 車の時計を見ると、今は10時だから1時間ほど待機になる。


「了解です」

『それとですが、明日、協会に来られませんか? 詳しい話を聞きたいのとこちらも説明をしたいんですけど……』


 明日は……予定はないな。


「大丈夫です。午後からでもいいですか?」

『ええ。お願いします』

「わかりました。では、明日」

『はい。まだ1時間ありますが、お疲れさまでした』


 桐ヶ谷さんはそう言って電話を切った。


お読み頂き、ありがとうございます。

いよいよ明日発売となります。(東京の方では今日入荷という書店さんも多いかと思いますが…)

電子の方が明日の0時から読めます。

また、各書店では特典の方も付きます。


どうぞよろしくお願いします!

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